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許嫁が出来たと思ったら、その許嫁が学校で有名な『悪役令嬢』だったんだけど、どうすればいい?  作者: 疎陀 陽
えくすとら!

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えくすとら! その百七十九 お泊りって言ったらやっぱり男子会だよね?


「さて……それじゃ、何する?」

 明美の自爆によってなし崩し的に解散となった食事会の後、俺ら男子四人組は俺と桐生の家に帰ってきた。時間は九時ちょっと過ぎ、寝るには若干早い時間帯ではある。あるが。

「寝るか?」

「いや、浩之? 流石に九時過ぎじゃ寝れねーぞ、俺?」

「そうは言ってもな? 秀明と北大路は明日、試合だろ? 早く寝た方が良いんじゃね?」

 特に北大路。忘れがちだけどコイツ、今日京都から来てバスケして、その後に遊び歩いている訳だし……疲れてね? そんな俺の視線に気付いた北大路が苦笑を浮かべて手を左右に振って見せた。

「いや、俺は大丈夫です。お気遣いありがとうございます。何かするんやったらお付き合いしますけど……秀明はええんか? お前、疲れてへんの?」

「京都から来た北大路が疲れて無いのに、俺が疲れてるとかいえねーだろ。俺は大丈夫だよ。何かしますか、藤田先輩?」

 そう言って視線を藤田に向ける秀明。その問いを受け、藤田は手を組んで見せた。

「んー……ゲーム……と、言いたいところだけど……流石に『あの』後にゲームはなんかな~」

 華麗な明美の自爆芸見たしな。なんか憑かれてそうで嫌だよ、うん。

「そうっすね。明美さんのあの立派な自爆芸見た後だと、なんか呪われそうですし」

「せやな。っていうか、ハンパないな、明美さん。まさかあそこであの展開引くとか、神引き過ぎひん? いや~、流石、東九条ですね! 歴史と伝統に裏打ちされた自爆芸ですわ!」

「……流石にあれはビビったな。つうか、やっぱ情が深いのかね、東九条って。東九条さんもだし、浩之の妹もだし……浩之だって情が浅い方じゃねーしな」

「……言わんとしている事は分からんでもないが、流石にお前ら、俺の又従姉妹をイジリ過ぎだ」

 ちょっと哀れになってきたぞ、明美が。

「というか……浩之? お前、自分の妹のこと『狂犬』とか言って無かったか?」

「……言ってたが?」

 俺の言葉に藤田が呆れた様にため息を吐く。なんだよ?

「……お前な? そら、妹ってのは兄貴からしたら評価は身内割が聞いて厳しくなるもんだけどよ? 流石に言いすぎだろ、狂犬は」

「……なんだよ、身内割って。初めて聞いたんだけど」

「身内だったら割引してくれること、あるだろ? お店とかで。それの評価版だ。身内に対して知ってる分、他の人よりお値打ち価格に評価が下がるって意味だよ」

「……聞いたこと無い言葉なんだけど」

「俺が作ったからな。ともかく! 身内には評価が厳しくなるのは分かるけど、狂犬はないわ~。お前の妹ちゃん、マジで秀明の事大好きなのな? 今日なんてもう完全に秀明に懐きっぱなしだったじゃん」

「……身内の『そういう』話はあんまりしたくないが……まあな」

 なんかもにょっとしない? 身内の恋愛話って。

「……いや、藤田先輩? その……浩之さんと秀明の前で言い難いんですけど……浩之さんの評価、あながち間違ってへんというか……」

 言い難そうにそう言う北大路に、藤田がポカンとした表情を浮かべて見せる。

「は? 何言ってんだよ、北大路? 妹ちゃん、可愛かったじゃんか。ああ、秀明? 勘違いするなよ? 可愛いってのは……いや、まあ可愛いは可愛いけど、そういう男女の意味じゃねーぞ? あんだけ秀明を気に掛けている姿が微笑ましい意味での『可愛い』だ」

「あ、それは勘違いしてませんよ。藤田先輩には素敵な彼女がいるわけですし……貴方の事だから浮気とかそういう事はしない人だと思いますし。なのでまあ、それは心配して無いんですが……その……」

「……なんだよ?」

「いえ……その、浩之さんと北大路の言う通りというか……その、まあ……『狂犬』は『狂犬』なんですよ、茜って」

「……は?」

 藤田、再びぽかん。そんな藤田の隣で北大路が声を上げる。

「せやで! 俺、今日マジでビビってんねんけど! だって『あの』魔王がやで? お前の隣でごろにゃんしてんねんで! なんやねん、アレ! こないだの京都はなんやってん!? 秀明、どんな魔法を使ってあの狂犬をあんな従順な子犬に変えてん!? なんや!? お前、実はトップブリーダーかいな!?」

「……違うと否定したいところだけど……なんだろう、あんまり否定できない気がする。いや、別に躾けた訳じゃーぞ! ただ……まあ、うん」

「……何言ってんだよ、秀明」

 ひでー会話だな、うん。

「……まあともかく、だ。藤田の前で見せた茜は擬態……って訳じゃねーんだが、普段の茜とは違う姿なの。あ、いや、最近の茜の姿は見ていないから何とも言えんが……」

 ……どうしよう。あいつ、学校でもポヤポヤモードだったら。同級生とか余りのギャップに脳をやられるんじゃないだろうか? 実際、明美も言ってたしな。『脳が腐る』って。

「学校では普通らしいですよ? 『バスケ忙しすぎて、秀明の事なんて考えてる暇ない!』って言ってましたし」

 俺の懸念を見透かしたのか、秀明がそう言って見せる。なるほど、他に考える事があるから色恋までは頭が回らんか。まあ、それはある意味平和な話だが……

「……お前は良いのか、秀明? こう……なんか蔑ろにされてねーか? 言いたいことがあるんだったら、俺から茜に言ってやるぞ?」

「馬鹿! 浩之、お前何言ってんだよ!!」

 俺の言葉に藤田が慌てた様に声を被せる。いや、でもな? こいつらの成り行きを見守った身からすれば、何時までも仲良くして貰いたい訳で、その為には多少の労は――


「あー……その、大丈夫っす。茜も『でも……秀明の事考えたら顔がニヨニヨして戻らなくなるから……こっちの方がイイカモ』って言ってましたので……その、蔑ろにされては……いないと思っています……ハイ」


 そう言って照れ笑いを浮かべる秀明。幸せそうな惚気なそれを聞いて。


「……だから言っただろうが。お前、今日の妹ちゃんの態度見てわかんねーのか? 蔑ろにする訳ねーじゃん、あの子。絶対、こんな惚気聞かされるに決まってんだろ? 本当に……女心のわかんねーやつだな、浩之は」


 ……全面的に同意するけど……なんか、藤田に言われるのは釈然としねー!



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