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許嫁が出来たと思ったら、その許嫁が学校で有名な『悪役令嬢』だったんだけど、どうすればいい?  作者: 疎陀 陽
えくすとら!

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えくすとら! その六十六 やりすぎアカネー


「……黙って聞いてれば……誰が魔王だ、こらぁ? つうか、私言ったよね? 産まれて来たこと後悔させてあげるって。うん、そんなに後悔させて欲しいんだ? 分かった、それじゃお望み通り、後悔させてあげるよ?」

「いたいいたいいたいっ!! ちょ、なんやねん、自分!! 何してくれてんねん!!」

 ガッチリとアイアンクローでギリギリと北大路のこめかみを掴む茜。って、おい!

「茜! 辞めろ、お前!! 何してんだよ!!」

 ここ、ファミレス! そんな狂犬ムーブいらんから!!

「茜、此処でそれはまずい!! 落ち着け!! ハウス!!」

「私は犬か、秀明? 華の女子高生に言う言葉じゃなくない?」

「狂犬じゃねーか! お前、何処の世界にいきなりファミレスで相手のこめかみ握りつぶす勢いかます女子高生が居るんだよ!!」

「此処に居るじゃん? そもそも、最初に喧嘩売って来たのコイツじゃん? しかも陰口って最悪じゃない?」

「……昔の話だろ? 水に流せよ、お前も」

「そんなに簡単に水に流す性格してると思う、幼馴染?」

「……思わないけど。普段は割合さっぱりしてるくせに、こと、浩之さん絡みになるとしつこいもんな、お前」

「よくご存じで。流石、幼馴染」

「まあ、長い付き合いだしな」

「ちょ、お前ら、なに悠長に会話してんねん!? これ、絶対おかしい絵面やん!? お前、マジでええ加減にせーよ!!」

「あん? いいよ、オラ? 反撃して来いよ? 一応言っておくけど私、殴り返される覚悟もなく殴りに行くことはしないから。女に手を挙げた~みたいなズルいこと言うつもりも無いからさ?」

「いたたたたたっ!! 力入れんな!! つうか、仮にお前がそうやったとしても絵面が悪すぎやろ! そないなこと、出来へんわ!!」

「人の目なんか気にせずしたい事すればいいのに。無いの、したい事?」

「取り敢えず今はこの手を放して欲しいかな~っ!!」

 ジタバタともがく北大路と、笑顔のままでこめかみを圧迫し続ける茜、おろおろする彩音、ため息を吐く秀明。もう、カオスな図である。

「……茜」

「止めないで、おにい。こいつ殺せない」

「いや、殺すな!! つうか目立つから、とにかく放せ」

「……っち。おにいに免じて放してやる。有難く思えよ?」

 不満たらたら、北大路のこめかみから手を放す茜。と、同時、立ち上がった北大路が俺の後ろに来て体を隠すようにしながら茜を指差した。

「なんや、お前!? ありえへんくないですか、東九条さん!? なんなんですか、あいつ!!」

「……あー……その……非常に申し訳ないんだが……俺の妹で……お前がさっきから言っていた、『魔王』だな」

「ほな、あいつが俺をずっとイビッてたヤツや言う事ですか!? え? あいつ、女やったんですか!?」

「……どういう意味だ、おい。自分で言うのもなんだけど、私は小さいころからそこそこ可愛らしい女の子だったハズだぞ?」

 ……まあ、うん。一応、茜は小さいころから『可愛い、可愛い』と言われてはいたからな。同じ親から産まれた兄妹のはずなのに、なんでこんなに顔面の造詣が違うのかと問いたい所だが……

「お前の顔なんか覚えてへんわ! ただ、あんだけ口が悪くて態度が悪い奴が女やと思うわけないやろうっ!! バスケだって俺より出来たし!!」

「それはアンタが下手くそだっただけでしょ? そんなんで私を男だと思ってたの? プププ~。バッカじゃないの~?」

 煽るように……っていうか、完全に煽ってるんだが、そう言いながらクスクスと笑う茜。実の兄から見ても、その、なんだ……こう、非常に悲しくなる。

「ぐぅ……つうか、お前! なんやねん、あのアイアンクロー! めっちゃ痛かったんやけど!? 握力なんぼあんねん!!」

「は? 私のアイアンクローが痛い? か弱い女子高生のアイアンクローが痛いなんて、私の握力のせいじゃなくて、アンタが軟弱なだけで――」

「……確かこないだ、五十五超えたって言ってたよな、茜」

「――秀明。アンタも喰らいたいの?」

 茜のジト目に両手を挙げて降参の意を示す秀明。

「ご、五十五? な、なにそれ……? 強すぎない?」

「……あんまり知らないからあれだけど……ちなみに彩音はいくつ?」

「こ、細かくは覚えてないけど……二十幾つとかだった気がするわ」

「……」

 ……単純に彩音の倍以上ってことか。つうか茜、それってか弱い女子高生って言うか……


「ご、五十五!? なんや、それ! 女子の数値ちゃうわ!! ゴリラやん!!」


「……よし。表出ろ、お前。ギッタンギッタンにしてやんよ?」

 ポキポキと指を鳴らしながら笑顔で立ち上がり、くいっと親指で入り口を指す茜。うん、北大路。俺も一瞬『ゴリラ』って思ったけど、それは悪手だ。後、茜? リアルで『ギッタンギッタンにしてやる』って言った人、初めて見たよお兄ちゃん。それが実の妹なんて、なんだか凄く悲しいんだけど?

「ぼ、暴力反対!! 喧嘩はあかんって!!」

「だいじょーぶ。喧嘩にならないよ? これから起こるのは、一方的な制裁だから」

「もっと悪いやん!?」

「あ、勿論、反撃して来てくれたら良いから? さっきも言ったけど、殴られる覚悟が無いのに殴りに行くようなダサいことはしないからさ? まあ……最も、バスケ馬鹿だろうアンタが、私に一発入れる事が出来たら、だけど?」

 そう言ってニヤリと笑う茜。おい。それ、完全に悪役の笑顔なんだけど?

「え? え? なにこれ? 此処、令和の日本の京都ですよね!? 俺だけ別の世界に来てるとかちゃいますよね!?」

「……相手が悪かったとしか」

「東九条さん!?」

 いや、まあ流石にぎゃくさ――じゃなかった、喧嘩は不味いな。茜の言葉を借りるなら制裁らしいが……あんまり良くないな。

「……そうよ。お互いスポーツマンだし――」

「あ、そうじゃなくて」

「――喧嘩は……え?」

「……茜、合気道の有段者なんだよ。小さい頃は空手もやってたし」

 正直、北大路がどれだけ喧嘩慣れしているか知らんが……さっきのナンパ男の例もあるし、おそらく文字通りギッタンギッタンにされる未来しか見えん。

「……とんでもないじゃない」

「東九条家の最終(リーサル)兵器(ウェポン)ですからね、茜は」

「そう言ってるのはお前と瑞穂くらいだろうが」

「智美さんと涼子さんは『東九条家のラスボス』って呼んでますから、認識は一緒の様なものかと」

 そう言って肩を竦め、秀明は北大路に――顔面蒼白にしている北大路に視線を向ける。

「おい、北大路。お前、さっき浩之さんとバスケしたいって言ってたよな? ボールは?」

「も、持ってるけど……」

「どっかの公園にフープぐらい、あんだろ? 元々、バスケで始まってバスケで拗れた関係だろ? なら――」


 バスケで決着、付ければ? と。


「そっちのが平和的だろ? 幾ら茜がゴリラだといっても……まあ、女子だし。ハンデ戦で」

 物凄く平和的な提案が秀明から飛び出した。まあ……『秀明、後で裏な?』とかゴリラ呼びされて青筋立ててる茜がちょっとだけ怖くて、秀明が不憫ではあるが。


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― 新着の感想 ―
[一言] 以前、秀明に言ってましたね・・・『優良物件』って。マジですか?(笑)
[良い点] すまん北大路くん。前回 >北大路くんの何処とは言わないけど握り潰されたり蹴り上げ潰されたりされない事を期待している            a go と煽り今回「何処?勿論『顎』に決まって…
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