「街の灯」~乙女の恋と浮浪者の献身愛
※ 映画「街の灯」のネタバレをしております。
どうか未見の方はご注意ください。
※ 2025/9/28 修正済み。
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皆さんはチャールズ・チャップリンをご存じでしょうか。
チャップリンといえば、トレードマークのちょび髭と山高帽、ダボダボのズボン、大きなドタ靴を履いて、腰をフリフリしながら、ステッキを回す浮浪者紳士。
多分この恰好と名前だけは知っている人は多いでしょう。
ネットのAIアシスタントで検索かけると
「チャールズ・チャップリンは、イギリス出身の世界的映画俳優であり監督、脚本家、プロデューサー、作曲家です。彼は「喜劇王」として多くの人に知られ、20世紀の映画史において非常に重要な人物云々……」と出てくる。
そうです、チャップリンは偉大なる喜劇王と言われた天才俳優です。
チャップリンはサイレント映画の巨匠といわれ『キッド』『黄金狂時代』『街の灯』などの代表的な作品を数多く残しました。
彼の生まれた年は1889年。明治22年。映画が産声をあげた年が1895年。
当時映画はまだ音の無いサイレント映画(無声映画)の時代でした。
今回私がチャップリンの映画で一番好きな『街の灯』をご紹介します。
(原題:City Lights 1931年米国映画)
◇ ◇
『街の灯』はユーモアとペーソスが織りなすコメディ映画です。
でも私にはロマンチックで悲哀系の映画に思えてなりません。
主人公は冒頭で紹介した浮浪者紳士チャーリー。
ちなみにチャップリンは自分で監督・脚本・製作・主演をする映画が沢山あります。この作品もそのひとつです。
※ ここからは映画のネタバレをしますので、「街の灯」を未見で観たい方はご覧にならないようご注意くださいね。<(_ _)>
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『街の灯』のあらすじ
ある日、浮浪者のチャーリーは街角で花を売る盲目の貧しい娘に一目惚れをする。
やがてチャーリーは娘の目を治す為に、ボクシングの試合に出て金を稼ごうとしたが敗れてしまう。
チャーリーが途方に暮れてると、以前、偶然出会って意気投合した泥酔の富豪と遭遇する。
チャーリーは富豪に盲目娘の気の毒な事情を話して、手術費用を工面したいと頼んだ。
泥酔の富豪は気前よく大金を渡してくれた。
だがその時、突然富豪の家に強盗が入り込んで富豪は彼等に頭を強打されて気を失う。
チャーリーは慌てて警察を呼ぶが、強盗は逃亡した後だった──。
警察は大金を所持しているチャーリーを犯人と勘違いする。
富豪は意識を取り戻してはくれたが、泥酔していた為、チャーリーに金を渡したやり取りをまったく覚えていない。
チャーリーはたまらず警官から逃げる。
そのまま花売り娘の家へ行き大金を渡して立ち去るが、結局は警官に逮捕されてしまった。
◇ ◇
と、ここまではなんともまあチャップリンの十八番ともいうべきスラップスティック・コメディ(ドタバタ喜劇)で面白いです。
チャップリンはサイレント映画らしく体を張った演技だけで、観客を笑わせる表現方法です。大昔の作品ですが今見ても楽しませてくれます。
彼のパントマイムや運動神経の素早さと、リズム感、タイミングの間などは唸るくらい見事です。
私は終始笑いながらスイスイとテンポよく見ていました。
けれど、この作品の凄さはそれだけではないのです。ラスト数分が本番でした。
人間の悲哀というか真実を知った人間の切なさ、やるせなさ、落胆等、総て包みこむチャーリーの献身愛。
チャップリンのヒューマニズムが見事に昇華されてたと思います。
私は映画の冒頭から笑っていた顔が無くなり、チャーリーが刑務所から出所した後、花売り娘と再会したラストシーンまで1カット1カット真顔になって釘付けで魅入ってしまいました。
チャップリンと花売り娘の表情の一瞬一瞬を見てると、睫毛の揺れ具合まで演技をしている。心が打ち震えてくるような繊細な演技がとても印象的です。
今、思い浮かべただけでも切なくなる。
もうこの数分間は、何といったらいいのでしょうか。
花売り娘を見つめるチャップリンのリアクションの、言葉では言い表せないあの刹那さ。
サイレントだから、
音がないから、
台詞の声を発しないから
短い字幕のワンカットだけだから。
現在あるトーキー映画のセリフで分からせる手法とは違う。
サイレント映画ならではの表現方法。
やはりサイレント映画と切ない恋愛映画はフィットします。
あ、ちょっと脱線しました(笑)
興奮して『街の灯』の最後のあらすじまだ記していませんでしたね。(~_~;)
◇ ◇
最終章──。
花売り娘はチャーリーが渡した大金のおかげで、手術は成功して視力を取り戻せました。
目が視えるようになった娘は、命の恩人の顔を知らないチャーリーにいつしか恋慕するまでに。
実は娘は、恩人のチャーリーを親切で素敵な金持紳士と勘違いしていたのです。
月日は廻り、チャーリーはようやく刑務所から出所しました。
チャーリーの服装は余りにもボロボロ、以前よりやつれて見えます。
何より彼の目には、精気がないように感じます。
冒頭の浮浪者チャーリーは、身なりは貧しくとも小さき紳士としての品格があり、活力が漲っていました。
だが今の刑務所上がりの彼は、服装もボロだが精神的に疲弊して見える。
街の新聞配達の少年たちが、チャーリーをからかって後ろから物を投げつける。
チャーリーは少年に怒っていたがその拳にも以前の力がない。
そんな時、彼が歩いた通りの花屋で、チャーリーたちを笑顔で見つめている女主人がいました。
そうです。花屋の女主人はあの盲目の花売り娘、その人でした。
目が完治した後、彼女は出世して街で花屋を構えるまでの、立派な女主人に出世してました。
「!?」
チャーリーは女主人があの盲目の花売り娘だと直ぐに気付きます。
( なんてことだ、あの花売り娘がいるではないか!)
チャーリーは立ち止まって、無言で女主人をじっと見つめて、嬉しそうに笑いかけました。
若い女主人にしたら、突然背の低いみすぼらしい浮浪者が、なぜか自分を見て微笑している。
彼女にしてみたら、浮浪者の微笑はちょっと不気味でもありました。
それでも浮浪者を憐れに思ったのか、彼女はチャーリーに近づいて一輪の白い花と小銭を手渡します。
手渡したチャーリーの手を握りしめた娘の感触──。
( この手……?)
彼女は浮浪者の掌から手首、肘へと目が視えない時と同じように、たどたどしく触る。初めてチャーリーが自分が憧れていた、その人と気付くのです。
無償の愛を与えた浮浪者と、無償の愛を与えられた盲目の貧しい娘。
今、ふたりの立場は逆転しました。
you (あなたでしたの……)
1カットの四角い字幕が出ます。
彼女の思わず発した言葉を見て、私は胸が張り裂けそうでした。
それはなぜ?
娘が落胆する気持ちを、you だけで感じたからです。
チャーリーはとても嬉しそうに
You can see now? ( 見えるようになったのかい?)
Yes, I can see now! ( ええ、みえますのよ……)
チャーリーは娘から手渡された白い花を恥ずかしそうに口に加える。
娘を見つめるチャーリーの笑顔。
カメラは移動して娘の表情からチャーリーの表情をアップで映します。
チャーリーの白塗りの顔、目の下の隈まで良く見えます。
ここで映画は The End となります──。
◇ ◇
いかがでしたか。
『街の灯』のラストシーンをご覧になった方は、チャップリンの切ない表情をどう感じましたか?
──笑っているけど哀しみの中にも刹那さが含んでいるよう。
これが私の率直な感想です。
盲目の娘さんに思いがけなくチャーリーは逢えて嬉しかった。
もちろんそうでしょう。
盲目だった娘さんの眼が視えるようになって、はつらつと働いていたのです。
チャーリーは心底喜んだ事でしょう。
彼女の眼を治す為に、奮闘して結果的に刑務所に入ってしまったのです。
ボロボロでしたが、チャーリーの善行は実を結びました。
出所して疲れ果てた彼の眼には、娘の瞳には自分の姿が映っている。
自己を犠牲にした愛は報われたのです。
報われたけれども⋯⋯。
そのチャーリーの表情に、もう一つ言い知れない虚ろな何かを私は感じました。
──こんな僕でごめんね。多分、君は僕とは違う誰かを夢見てたよね。
と、これはあくまでも私の感じたチャーリーの気持ちです。
変な話、私だったら自分の眼を治してくれた恩人が汚い浮浪者だったら、一生邂逅しない方が良かった気さえします。その方がずっと美しい夢を見れるから。
自分が描いていた素敵な憧れの紳士の、淡い理想夢を汚されたような……。
こう考える自分は酷く醜い利己的な人間だなとも思います。(~_~;)
でも、その後二人はどうなったのでしょうか?
彼女の事だから、チャーリーの大金を渡した後の酷い話を聞いて、きっと彼に感謝して恩返しをしたのでしょうね。
けれども映画はあのシーンで終るのです。
そこがチャップリンの凄さでもあり、人間の心理を見抜いている厳しさでもあります。
◇ ◇
余りにも有名なチャップリンの「街の灯」のラストシーン。
このラストシーンは著名な映画評論家が様々な解釈をしています。
「街の灯」をご覧になった方は、どんな感想を持ちましたでしょうか。
コメディジャンルに分類される映画ですが、私には観たあとの余韻が凄かったです。
心を抉られる切なさと深い愛が暫く残る名作です。
最後までお読みくださりありがとうございました。<(_ _)>
※ 参考文献引用
「私の映画の部屋」淀川長治(文春文庫) 「洋画ベスト150」(文春文庫)
「映画100物語 外国映画編」(読売新聞社)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
※文面中にAIの検索文を引用している箇所が少しあります。
※ 泣いているリアクションつけてくれた優しい方、ありがとうございます。
<(_ _)>




