8 鏡の裏技! これは便利だね!
花火、見つからずに運べるでしょうか?
特別寮を出て階段を四階まで上がれば、学園長室はすぐだ。
「失礼しますなのです」
美桜ちゃんがドアをノックして開ける。学園長さんは留守だった。奥の机の横に、でーんと見慣れたでっかい鏡がある。
── 学園長さんが使ったのかな?
そして鏡とは反対側の隅に、ごちゃっと荷物がある。見慣れた花火の袋っぽいものも見えている。
「さあ、ここからが肝心なのですよ! お姉ちゃんたちに見つからないようにこれを運動場に運ばないといけないのです」
荷物の前で美桜ちゃんが指をふりふり言った。
「そういえば運動場って行ったことないや。どこにあるの?」
あたしが聞くと、ソフィーちゃんが教えてくれた。
「教室棟の裏側が運動場になってるわよ」
「なるほどー。教室の中って入ったことないから知らなかったんだね。だとすると、三階……は、リーゼお姉ちゃんたちが生徒会室にいるだろうからやめて、二階か一階から行かないとだねー」
すると美桜ちゃんが腕を組んで難しい顔をした。
「そこが問題なのですよ。そろそろみんなが寮に戻ってくる時間なのです。美桜とソフィーちゃんがいないとお姉ちゃんが探しに来てしまうのです」
「だったら、あたしたちで運んでおこうか?」
「それは助かるのですが、やはり見つかる危険があるのですよね……」
あたしたちが、
「うーん……」
と考え込んでいるとレイアーナさんが、
「ならば、あれを使えばいいのではないか?」
そう言って鏡を指差した。
「我らはいつもあの鏡を使って訓練場に行っている。学園長殿が『他の生徒に会わない方がいいだろう』と配慮してくれたのでな。あれは学園内ならばどこにでも繋がると言っていたぞ」
「「そうなの(ですか)!?」」
思わずあたしと美桜ちゃんの声が被った。
「だったら、しーちゃんやってみたら?」
れーちゃんに言われて、
「んじゃあ、ためしにやってみよー!」
拳を突き上げると呪文を唱えた。
「ディメンションズゲート、オープン!」
レイアーナさんの言った通り、鏡の先は広い運動場につながっていた。その中央で師匠が、どでかい装置を前にタブレットを操作している。
「こんちわー、師匠ー!」
あたしが声をかけると師匠が振り向いた。
「おお、来たな我が弟子よ。それに無事姫君方とも合流できたようだな」
「玲士センパイ、こっちはこれでいいっすかね?」
師匠と反対側の端からレイス兄ちゃんが顔を出して言った。
「あ、レイス兄ちゃんもこんちわー」
「うす。美桜ちゃん、バケツと火はあちらに用意してあるっすよ」
「レイス、ご苦労だったな。後は配線を確認するだけだ」
「この図の通りになってればいいんすよね」
「ああ、後は……」
忙しそうに師匠とレイス兄ちゃんは話しながら装置を見て回っている。すると美桜ちゃんが、
「玲士お兄ちゃんもレイスお兄ちゃんもありがとうなのです。今日はよろしくお願いしますなのです! お二人のじゃまをしてはいけないのです。美桜たちはあちらで準備するのですよ」
荷物を持って、レイス兄ちゃんが教えてくれた学園側へと移動すると、大きなお盆が二つ地面に置いてあった。その上にお皿っぽい金属でできた器と丸い形の何かがいくつも積んである。横には着火用の器具。いくつかの水が入ったバケツもある。
「あ、これ、固形燃料だ。なるほど、この中で火をつけるのかー」
固形燃料なら燃えてなくなっちゃうから、後片付けも楽だよね。さっすが師匠ー。
「美桜ちゃん、急がないとみんなが心配しちゃうよ」
「ハッ、そうなのです。急いで準備しましょう。あっちにまとめて置いておくのです」
あたしたちは持ってきた荷物を少し離れた場所に置くと、急いで鏡をくぐり学園長室に戻った。
ぞろぞろとみんなで寮の食堂に戻ると、メイお姉ちゃん、リーゼお姉ちゃん、言乃花お姉ちゃんと冬夜兄ちゃんがもう食堂に集まっていた。
「美桜、遅かったわね。どこへ行っていたの? ……あら?」
心配そうに言った言乃花お姉ちゃんの目が、急に鋭くなった……。
まさかの便利ゲート!
しーちゃんは知りませんが、これは学園長がレイアーナさんたち用に設置したもの。レイアーナさんたちは自由に出したり引っ込めたりできないので、彼女たちが戻るまでは出しっぱなしです。
ドカーンと大きい花火、上がるのでしょうか?
それでは、また2週間後にお会いしましょう!




