1 師匠と思念波
新章が始まります。
ぽいっと。
「ディメンションズゲート、クローズド」
師匠のいる研究室前に出した門を閉じると、実験室に飛び込んだ。
「こんちわー。師匠、来たよーっ」
「おお、我が弟子ではないか! よく来たな」
師匠は突っ立ったままタブレットに何か書き込んでいるところだったけど、あたしが声をかけると嬉しそうな顔で答えてくれた。師匠の前のテーブルには、あのブレスレットが並んでいる。
「あ、これ昨日のやつだよね。師匠すごいよ、これ思念波を吸収してたからビックリしたんだよ?」
「さすがは我が弟子だ、それに気づくとはな。先日貴重なデータが手に入ったので試しに入れてみたのだ。で、どうだったのだ? うまく機能していたか?」
── あ、しまった。師匠の研究スイッチが入っちゃったよ……。
「えー、もうみんなから話を聞いてるんじゃないの?」
「何を言う。データはいくらあってもよいのだ。それに実際に使っている者と初めて体験した者とでは取れるデータに雲泥の差があるのは当然のことだろう。それでは詳しく聞かせてくれたまえ!」
師匠の検証に付き合ったあたしは、ぐったりと机に突っ伏していた。
── つ、疲れたー。
目の前には嬉しそうにタブレットに書き込んでいる師匠。
「ふむ、理論的には間違っていないようだな。だとするとこの数値は……ふむ、実に興味深い!」
「そういえば師匠、手に入った貴重なデータって何のこと?」
「ん? 何を言っているのだ、君が送ってくれたのだろう」
「へ? 何のこと?」
「学園長にたのまれて君がこの世界に送った者たちのことを忘れてしまったのか? おかげで素晴らしいデータが得られたぞ、感謝する!」
「あ、ああーっ!」
あたしはガバっと顔を起こした。
── そうだった、すっかり忘れてたよ!
「師匠、シュリーアさんたちに会ったの!?」
「それこそ何を言っているのだ? 彼女たちならば昨日も来ていたぞ」
── 何それ、聞いてないよ!?
「だって、昨日会った時にはそんなこと一言も言ってなかったよ!」
昨日ソフィーちゃんたちを学園に送った後、あたしたちはハルヴェストの丘で花火を見て帰った。その花火の時間にシュリーアさんたちが来たんたけど、全っ然そんな話は出なかったよっ!
── そういえばこの前、姫様たちをこっちの世界に送ったんだった。すっかり忘れてたよー! 姫様たちも言ってくれたらいいのに、もう! ……あれ?
「あ、そっか。こっちの世界のことは忘れちゃうんだっけ。だから姫様たちのことも覚えてなかったんだー……って、そういえば師匠あの人たちこと見えたんだね。ビックリしなかったの?」
「何をだ? 額に思念石を付けていることか? あれは実に機能的で面白いものだった! 感情をコントロールできるというのは非常に効率的でしかもエネルギーに変換できる仕組みは素晴らしいものだ!」
「え? や、そういうことじゃなくて、師匠は幽霊だとは思わなかったの?」
「なぜそこで幽霊が出てくるのだ? 君たちの世界の幽霊は実体があるのか? それはそれで興味深いが」
師匠と噛み合わない話をしているうちに分かったのは、姫様たちがこの世界では普通に体があって、しかも制服を着て過ごしているということ。
── ちょっと見てみたいかもって思ったよ!
姫様たちは思念波のことを師匠に教える代わりに、ここでシュリーアさんに思念波を使う練習をさせてもらっているらしい。
── ということは、ここであたしとれーちゃんも練習ができるってことだよね? いいこと聞いたよ!
「師匠! あたしもぜひやりたいです!」
師匠の手をつかんでそう言ったら、あたしから強い思念波が師匠に流れていくのがわかった。
── しまった! また使っちゃったよー!?
本編をお読みの方はお分かりですよね?
今回の話は本編の120話の後になります。
前回学園に来た時よりもしーちゃんの思念波は強化されています。さて、師匠はしーちゃんの思念波に抗えるんでしょうか?
2週間後をお楽しみに。←鬼
本編の宣伝です。
しーちゃんが登場する物語
「We are enlister. Save the princesses of Emulia. ─古墳に入ったら異世界の姫様の協力者にされちゃったので、精霊を仲間にして日本を救います! ─」
はこちら
https://book1.adouzi.eu.org/n5917gw/
ソフィーが登場する物語
「絶望の箱庭~鳥籠の姫君~」
はこちら
https://book1.adouzi.eu.org/n3370hf/




