10 楽しい時間ってあっという間だよね
箱庭メンバーの異世界転移はここまで。
帰りはどうするのかな?
なんとか美桜ちゃんを座席に押し戻して、あたしは言った。
「あたしもまだそんなにくわしいわけじゃないんだよ。だけど、あたしとれーちゃんがみんなと話ができるのはその思念波を使ってるからなんだと思うんだ」
「そういえばしーちゃんとれーちゃんとはお話できますが、おじさんたちが何を言ってるのか全然わかりませんね。それに、この眼鏡がないと文字も読めなかったのです。これは重大なことですよ」
「しーちゃんたちとお話できるのは二人がその思念波っていうのを使えるからなのね。すごいね、しーちゃん」
そう言ってソフィーちゃんがにっこりと笑った。
── ああ、ソフィーちゃんの笑顔、いやされるーっ!
美桜ちゃんもつられてにっこりとしている。
── すごいよね、ソフィーちゃんが笑うとみんなが笑顔になるよねっ!
そんな話をしている間に、観覧車は地上に戻ってきた。
あたしたちはメリーゴーランドや他の遊具で遊んでから広場に戻ってきた。すると母さんが、
「もう少ししたらバーベキューをしに行くわよ。遊ぶのは後一つくらいにしておきなさいね」
「やったー! バーベキューだ!」
「お姉ちゃん、美桜もバーベキューしたいのです!」
「残念だけど、寮に食事の用意があるからもう少ししたら帰るわよ」
「うう、残念なのです」
「よし、だったら最後にあの昆虫館に行って終わりにしようぜ」
「冬夜兄ちゃん、ナイスなのです! しーちゃんたちも行きますよね?」
「あー、行きたいんだけどね……」
あたしはチラリとれーちゃんを見た。するとれーちゃんが首を振って、
「ごめんなさい、ちょっと虫は苦手で……」
と後退りしながら言う。
── そんなんだよねー、れーちゃん虫が全然ダメなんだ。特に体がテカテカ光るやつは気持ち悪いらしい。キレイなのにねー。
「あたしたちゴーカートにまだ乗ってないからそっちに行くよ」
するとその時、言乃花お姉ちゃんが近づいてきて耳元でこっそりと言った。
「しーちゃん、人目につかないところで門を出してくれないかしら。学園長がね、帰りはしーちゃんに送ってもらうようにって言っていたのだけれど」
「うん、わかった。ゴーカートが終わったらそっちに行くようにするね」
美桜ちゃんたちが移動するのを見送って、あたしとれーちゃんと父さんたちはゴーカート乗り場で並んだ。
「言乃花さん、何て言っていたの?」
あたしはれーちゃんの手を握ると思念波で伝えた。
『帰りは送ってほしいんだって。ねえ、れーちゃん。どこかいい場所知らない?』
『それだったら、カブトムシ館の裏手はどう? あそこなら誰も通らないと思うよ』
『いいね! ここが終わったらあたしそっちに行くかられーちゃんはみんなを連れてきてくれる?』
ゴーカートを楽しんだあたしたちは、「美桜ちゃんたちにさよならを言いに行くから」と言って父さんたちにはバーベキュー場に向かってもらうようにお願いした。
急いでカブトムシ館に向かうと、あたしは裏手に回った。そこは壁に遮られて完全に死角になっていて、誰も通らないし人目もない。
「なるほどー、ここなら大丈夫だね。よーし、いっくよー」
あたしはスマホを取り出すとアプリをセットして言った。
「ディメンションズゲートオープン、ゲートポジショニングセット、特別寮前!」
あっという間に目の前に大きな鏡が現れる。ちょうどそのタイミングでみんながれーちゃんと一緒に歩いてきた。言乃花お姉ちゃんとメイお姉ちゃんは大きな紙袋を下げている。メイお姉ちゃんが、
「うふふ、わたしと言乃花はソフィーたちがカブトムシを見に行ってる間にお土産を買ってきたよ」
とうれしそうに言った。
「それではしーちゃん、れーちゃん。また明日なのです!」
「またこの世界に遊びに来れるといいな」
「すっごく楽しかったよ」
「いい息抜きになったわね」
最後にソフィーちゃんが、ぎゅーっとあたしとれーちゃんをかわるがわる抱きしめてくれた。
「しーちゃん、また連絡するね。れーちゃん、またね」
そうしてみんなは門の中に消えていった。
しーちゃんたちの世界へ来た箱庭メンバーを書くのは楽しかったです。本編では詳しく書けなかったので。
次回は久しぶりにしーちゃんだけが転移します。
2週間後をお楽しみに。
それでは、また会いましょう。




