3 姫様たちと学園長(学園Side:)
お待たせしました! ようやく姫様たちの転移後のお話です。
最新話を追っかけてくださっている愛読者の方へ
現在改稿中の文体に合わせて地の文が変わっています。ご了承ください。
さて、詩雛や美桜たちがハルヴェストの丘に行く準備をしている頃。
学園長室に芹澤が来ていました。
「ブレスレットは渡しておいたよ」
「感謝します」
「あの機能については説明しなかったよ」
「無論です。言乃花くんにバレたら面倒なことになるので」
「楽しみだね」
「あの思念波というものは実に興味深い。感情の波の大きさが力になるというのは、我々の魔法概念に通ずるものがあります。あの力が解析できれば、より強力な魔法を使うことも可能になるでしょう」
「その専門家ともコンタクトが取れたよ。明日、冬夜くんたちが出発したタイミングでこちらに来られるようにしてある」
「それは楽しみです! 素晴らしいデータが取れることでしょう。こうしてはいられません、実験の用意をしておかねば!」
そう言うと芹澤は高笑いをしながら飛び出して行きました。それを見送る学園長がくすりと笑います。
「さて、お祭りの準備も必要かな。彼女たちにも喜んでもらわないとね」
学園長の言う彼女たち。それは、昨日この世界を訪れた、不思議な二人組のことでした。
次元回廊を通り抜けて学園に転移してきた彼女たちは、門を出た瞬間驚いたように声を上げました。
「何? 実体があるだと? しかも何だ、この服は?」
「御姉様、これはどういうことでしょう」
長い水色の髪に濃い青色の瞳。髪の色も目の色も、背の高い女性の方が少し色が濃いようです。この学園の制服姿の二人は、自分の体を見回しながら戸惑っているようです。
その時、突然声がしました。
「ようこそワールドエンドミスティアカデミーへ、エミューリア王国の姫君たち」
「誰だ?」
背の高い方の女性がもう一人を背にかばうようにして振り返りました。そこにはいつの間にか学園長が立っています。学園長は微笑みながら言いました。
「あれ? さっき話しかけたばかりでしょ。僕はこの学園の学園長だよ。立ち話もなんだから移動しようか」
そう言って学園長がパチンと指を鳴らすと、二人が出てきた鏡の鏡面が揺らぎました。
「詩雛くんの開く門の出口に僕の部屋は設定されていないからね。さあどうぞ、姫君たち」
学園長はそのまま鏡の中へと入って行きます。しかたなく二人もその後に続きました。来るときは長い不思議なトンネルをくぐって来た二人ですが、今度はすぐに鏡から外に出ました。そこは豪華な広い室内で、奥に大きな机があり、中央にソファーセットが置いてあります。
「ここは学園長室だよ。さあ、座って。紅茶でも入れようか」
「いや、構わぬ。それよりもここはどこだ? なぜ我々を呼び寄せたのだ?」
立ったまま警戒するように声を出す女性に、学園長は紅茶の用意をしながら言いました。
「そう警戒しないでほしいな。君はたしかレイアーナ、だよね。レイアーナ姫様と言ったほうがいいのかな?」
「……シイナから私のことを聞いたのか?」
「ふふ、詩雛くんとそんな話はしていないよ。ただ、知っているんだ。君たちの宇宙船が、世界の狭間で遭難していることとか、ね。さあ、座って。君たちこういうのも久しぶりだろう? ああ、先に言っておくけれど、その体は本物だよ。制服は僕からのサービス。宇宙服では目立ちすぎてしまうからね」
まだ立ったままでいる二人に、学園長は笑みを浮かべたまま続けます。
「君たちが元の世界に戻るためには僕の助けが必要だろう? それに……僕なら、本当の意味で君たちを助けることができるけど。どうする?」
「……なんだと?」
「まあ」
驚いている二人に学園長はどこか嬉しそうに言いました。
「とりあえず座って。長い話になると思うから、ね?」
「……そなた、一体何者なのだ?」
質問には答えず、学園長はただにこにことしながらソファーの向かい側の椅子に座ると、紅茶の用意をし始めました。レイアーナと呼ばれた女性は、一つ大きなため息を吐くと、もう一人の女性とともにソファーに座りました。
二人に紅茶を差し出した学園長は、自分の分のカップを手に取ると、ゆっくりと香りを楽しんでから口をつけました。
「さあ、どうぞ」
レイアーナは小さなため息を吐くと、優雅な仕草でカップを手に取り、ゆっくりと口に運びました。
「たしかに、いい香りがするな」
かすかに甘いその紅茶に、レイアーナの肩に入っていた力が少し抜けました。
「シュリーア、大丈夫だ。飲んでみろ」
「はい、いただきます」
シュリーアと呼ばれたもう一人の女性もカップを手に取ると上品な仕草で紅茶を味わい、口元に微笑みを浮かべました。
「おいしいです。これは林檎、ですか?」
「アプリコットティーだよ。少しはリラックスできたかな。改めてようこそ、ワールドエンドミスティアカデミーへ。ここは、世界の狭間にある学園だよ」
学園長の言葉に、二人は目を丸くするのでした……。
現在カクヨムにもこちらを転載しています。カクヨムに移設するにあたり、一章を大幅に改稿しました。そちらの方に合わせる形で、こちらも現在2章以後を改稿中です。
さて、まりんあくあの本編既読の方でしたら、このシーンがどのことを指しているかよく分かると思います。
未読の方には補足を。
レイアーナとシュリーアは並行世界の地球アレトにある大国エミューリア王国の姫様たちです。アレトには思念派を力として使える人たちがいます。その中でも特別な才能のある人は、16才になると月にある学園へ入学します。レイアーナは国の代表としてシュリーアを学園まで送る任務についていました。その途中の事故で宇宙船ごとある空間にとらわれてしまっています。その空間から抜け出すエネルギーとして、思念派をしーちゃんの世界に来て集めています。
ですが、その謎の空間から抜け出せたのは思念体だけでしたので、しーちゃんの世界では実体がありません。
なのに、転移してみると体があったため、めちゃくちゃ驚きました。
どうして実体があるんでしょう?
続きは2週間後をお楽しみに!




