4 困ったときの学園長
絶妙のタイミングで現れる救世主。なんてアノ人しかいませんよね(笑)
「えっとー、あのー……」
── これ、どう答えるのが正解なのかな。学園長はあんまり話したくないみたいだったよね。
門のことを話したらまずい気がする。でも、言乃花お姉ちゃんがにっこり笑いながら答えを待ってる。
──う、目が笑ってないよ! うわーん、こんなの無理ー、助けて学園長ー!
とそのとき、
「おや、いいにおいがするねー」
気がつくと真後ろに学園長がいた。あたしの肩にぽんと手を置くと、さり気なくウインクで合図してくれた。
──が、学園長さん、ナイスタイミングだよっ!
するとリーゼお姉ちゃんが、
「学園長、一体どこから来たんですか? またしーちゃんが来ているのはどういうことなんです?」
と詰め寄った。でも学園長はにこにこしている。
「あれ、言ってなかったっけ? 詩雛くんはソフィーくんが望むときにいつでも学園に来ることが出来るようになったんだよ」
「な、聞いてませんよ! 大体どうやったらそんなにホイホイ簡単に世界を移動することが出来るんですか? おかしいですよね?」
「んー? 簡単だなんて失礼だな。とっても難しかったんだよ? でも詩雛くんが来るとソフィーくんが喜ぶからね。ここは僕が一肌脱ごうと思ったんだけど?」
「だーかーらー、そこがおかしいじゃないですか!」
リーゼお姉ちゃんの顔がどんどん真っ赤になっていく。
そのときピピピッとホットプレートから音がした。ソフィーちゃんが鍋つかみに手を入れている。
「しーちゃん、わたしが蓋を開けたらすぐにパンペルデュをひっくり返してね。お箸が難しかったらフライ返しを使ってね」
「オッケーだよ。ソフィーちゃん!」
あたしはさっとフライ返しを持って待ち構える。
「しーちゃん、いくよ」
パカッとソフィーちゃんが蓋を開けると、フワーンと甘ーい匂いが広がった。あたしはすかさずフライ返しで食パンをどんどんひっくり返していく。ジュワ〜という音、卵の焼けた黄色がホットプレートを埋め尽くしていく。全部ひっくり返すと、パタンとまた蓋を閉めた。
「これでもう五分焼いたら完成だよ」
「ふふ、楽しみだねっ」
「ほら、楽しそうでしょう? ソフィーくん、いつでも呼んで構わないからね」
「学園長ありがとうございます。学園長もパンペルデュ食べてくださいね」
「ありがとう。でも僕は忙しいからね。後で届けてくれたら嬉しいな」
そう言って学園長が食堂を出ようとしたとき、
「学園長、少しよろしいですか」
言乃花お姉ちゃんがそう声をかけて二人で食堂を出て行った。
「ソフィーちゃんのパンペルデュ……」
リーゼお姉ちゃんはふらふらとホットプレートに吸い寄せられるように近付いてくると、
「ソフィーちゃん、私も何かお手伝いしようか?」
嬉しそうに言った。
── さっきの騒動は何だったの?
って思ったけど、
── 蒸し返したら墓穴を掘るのは確実にあたしだよね。ここは黙って流しておこう。
と思い直した。
蓋の中からはジューッという音。さっきの甘い匂いが少しだけ隙間から出てきている。あたしがホットプレートに釘付けになっている間に、ソフィーちゃんはリーゼさんと二人で後片付けをし始めていた。使った道具が次々と厨房に消えていき、代わりにお皿とフォークが運ばれてきた。
「ただいま。何かいい匂いがするな。って、え? しーちゃん? どうしてここに?」
「本当、いいにおい。あ、しーちゃんいらっしゃい。これがフレンチトースト?」
と言う声とともに冬夜お兄ちゃんとメイお姉ちゃんが食堂に入ってきた。
「こんにちは! お邪魔してます。そうだよ、こっちではパンペルデュって言うんだって」
「ああ、パンペルデュか。懐かしいな、小さい時によくばあちゃんが作ってくれたよ。で、しーちゃんはどうしてここにいるんだ?」
「学園長のしわざよ。どうやったかは知らないけれど、ソフィーちゃんが来て欲しい時に来られるみたいよ」
リーゼお姉ちゃんがため息をつきながらそう答えたところで、ホットプレートのアラームが鳴った。
転移門のことをなんとかうやむやに誤魔化せたしーちゃん。いよいよ次回はパンペルデュパーティー?
二週間後をお楽しみに。




