21 学園長との約束
お別れの時間になりました。
何やら学園長が……。
「それにしても、ずいぶんたくさんのお見送りだね。詩雛くん、学園は楽しかったかい?」
あたしは目に浮かんだ涙を拭いながら答えた。
「うん、すっごく楽しかったよ。みんな優しくてとっても素敵な人ばっかりで……」
そう言っているとまたぽろぽろと涙がこぼれてきた。ソフィーちゃんが急いで鞄からハンカチを取り出し、渡そうとしてくれたけれど、あたしは首を振ってグイッと腕で涙を拭うと、ニカッと笑って皆の方を向いた。
「みんな、いろいろとありがとー! とっても楽しかったよー! だけど、ごめん。みんなが見てると余計に悲しくなっちゃうから、ここでさよならするよ! お世話になりました」
ペコリと頭を下げて、それからソフィーちゃんと手を繋ぐと門から外へ出た。
「また来いよ」
「いつでも待ってるからね」
「次を楽しみにしているわ」
「次はあなたの世界のアレのことを是非くわしく!」
みんなが口々に言ってくれる別れの言葉に、手を振り返して三人で歩き出した。
「あの子たちに、近くでこの魔法を見せたくないんだ。だからもう少し歩いてもらうよ」
そう言って門から少し離れた場所で足を止めた学園長は、今度はソフィーちゃんに声をかけた。
「ソフィーくん。少し詩雛くんと二人で話すことがあるんだ。その間にうさみちゃんへの手紙を出して来たらどうかな」
「はい、わかりました」
ソフィーちゃんはそう答えると門の方へ少し戻って行き、途中で森の中へと入って行った。
「ソフィーくんが入って行ったところから少し奥にうさみちゃんと出会った木があるんだ。その木の洞に手紙を入れてやり取りしているんだよ。……さて、詩雛くん。少し大事な話をするよ」
「はい」
学園長さんがここへ来た時と同じように、人差し指を前に出して軽く振って見せた。
「これから僕が君を迎えるために使った次元魔法を特別に見せるから、その時に使う呪文を覚えて欲しいんだ」
そう言って意味ありげに笑う。
「ええっ! あたし、覚えていいの? やったー!」
飛び上がって喜んでいると学園長さんが言った。
「では、始めるよ。次元回廊、開け」
学園長さんが呪文を唱えると、来る時に通ってきた大きな鏡が目の前に現れた。
「どうだい? 覚えられたなら唱えてみてくれるかな」
「わ、分かった。ディ……ディメンションズゲート、オープン! ……合ってる?」
パチパチと拍手の音がする。
「さすがだね。うん、完璧だよ。それが次元回廊を開く呪文だ。では次に、閉じる時の呪文だ。次元回廊、閉じろ」
「ディメンションズゲート、クローズド」
そう唱えると、鏡は跡形もなく消えている。学園長さんがにっこり笑う。
「うん、いいね。……さて、詩雛くん。この後もう一度、門を出すから、君は自分の部屋に戻ってこの門から出たら、その呪文を唱えて門を閉じてくれるかい?」
「分かった! うわぁ、楽しみ!」
── すごいよ、あたしも魔法使えるんだ!
すると学園長さんが急に真面目な顔になった。
「さて、もう少ししたらソフィーくんが戻ってくるだろう。その前に君に暗示をかけさせてもらうよ。元の世界に戻ると君は『異世界通話』のアプリを自分からは使えなくなる。これからはソフィーくんが連絡したときにアプリの存在とこちらの世界のことを思い出すようになるんだ。これは保険みたいなもので、君の世界にこちらの世界の痕跡を残さないようにするためのものだよ。この暗示は通話を切って五分後に発動するようにしてある。……ああ、心配しなくてもソフィーくんはきっと毎日君に連絡するよ、きっとね。それにこれは暗示だから、本当に必要なときにはひとりでに思い出せるからね」
学園長さんの話は少し難しくてどうして暗示が必要なのかいまいちよくわからなかった、けれど……。
「考えたけど難しいことは分かんないや。でも、学園長さんを信用してるから、これは必要なことなんだろうなって思う。だから、わかりました。……ねえ、また来れるかな?」
そう聞くと、パチンとウィンクして学園長さんが耳元でこっそりと言った。
「戻ったら君のスマートフォンを確認してごらん。きっと面白いことが見つかると思うよ。……ソフィーくん、ありがとう。ちょうど話が終ったところだよ」
その言葉に振り返ると、少し俯いたソフィーちゃんが立っていた。
次回で初転移は終わりです。今後どうなるかは?
二週間後をお楽しみに(笑)
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それではまたお会いしましょう!
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しーちゃんが登場する物語
「古墳に入ったら、異世界の姫様の協力者にされてしまったので、日本を救って異世界に転生します! ─WE ARE ALLY. SAVE THE PRINCESSES OF EMULIA. ─」
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ソフィーが登場する物語
「絶望の箱庭~鳥籠の姫君~」
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