結婚式
ミドルガルドのホワイト地方のスバル王国の冬、外は雪が降り積もる王城の中でタキシード姿の王太子アレクセイとウェディングドレス姿のハナが多くの王族や従者に兵士が見守る中、結婚式に臨んでいた。
「アレクセイ=フォン=スバル殿下よ、あなたは妻『ハナ=サキ=スバル』を命の限り愛し、護り抜く事を誓いますか?」
「はい。」
「では、ハナ=サキ=スバルよ。あなたは夫アレクセイ=フォン=スバル殿下を命の限り慈しみ、支え抜く事を誓いますか?」
「はい。」
「では、アレクセイ=フォン=スバル殿下よ。ハナ=サキ=スバルの薬指に指輪をおはめ下さい。」
アレクセイはハナの薬指に指輪をはめた。指輪のデザインはスバル王国の風土に相応しい、雪の結晶をあしらった物であった。かくして結婚式が無事に終わったかのように見えた。
「ハナ!あたしだよ、サキだよ!お前のママだよ!」
突然式場にサキが乱入してきたのだ。ハナは母親が突然来た事に目を丸くした。居合わせた者達も突然の乱入に動揺した。
「狼藉者を取り押さえよ!」
「!!」
物々しい甲冑に身を包んだ衛兵達が叫びを上げ、サキを取り押さえた。
「…く…、苦しい…、息が…。」
サキは衛兵達によって地面に顔を押さえつけられ、息が出来ない程苦しんだ。
「衛兵方、おやめ下さい!」
ハナは衛兵達に母であるサキの拘束をやめるよう懇願した。
「ハナ様、申し訳ありませんが、そういう訳には参りません。あなた方の身を護る事がそれがし共の務め故。」
衛兵達は拒否してサキの拘束を続けた。
「おやめなさいっ!!」
懇願では駄目だと踏んだハナは命令する形で衛兵達に強く言い放った。衛兵達は拘束を緩めた。
「衛兵共よ…、この人は…、わたしの母です…。母は…、娘のわたしが幼い頃から長い間生き別れたわたしの結婚を聞きつけて…、遠い所からはるばるここまで来ました…。そんな母への狼藉は…、このわたしが赦しません!!」
ハナは毅然と言い放った。居合わせた者達は感心する者もいれば動揺する者もいた。
(かような気丈な嫁ならこのわしも安心だ…。倅よ…、良き妻を娶ったものよ…。)
スバル国王ブレンダンは気丈な嫁の姿に内心狂喜した。
「ハナ様の母上でしたか…、これは大変失礼致しました…。」
衛兵達はさっきまで拘束していたサキに謝罪した。サキは無言で立ち上がり、娘と向き合った。17年ぶりの母娘の再会だ。ハナ、齢20の事であった。




