娘の手紙
ハナがティーンアカデミーを卒業して嫁ぎ先のスバル王国に出発した一方、雫の騎士団本拠アクアポリスの応接室ではサキとマキュリーナが面と向かって座っていた。刑務区のあるポリスヘイムで長期間刑務に従事してきたサキ。彼女のかつての妖艶な美しさはなりをひそめ、髪もボサボサかつ白髪混じりで、表情にもやつれが見え、猫背で杖もついており、かなり老けたような雰囲気になっていた。
「サキ、今日で釈放よ。おめでとう。」
マキュリーナはサキを労った。
「…ありがとう…。」
サキは棒読みでありがとうと言った。
「サキ、娘のハナから手紙が来てるわよ。」
マキュリーナはサキに書簡を渡した。サキは慣れない手つきで書簡から手紙を取り出し、読んでみたが…
「あたし…、読めないの…。お願い…、読んで…。」
サキは娘のハナとは違い、ラストティーンまでずっとスラムで暮らしており、学校に通えなかった為、読み書き等が出来ず、手紙を出した際も、役人に自分の言葉を伝える形で書いて貰っていたのだった。
「わかったわ。」
マキュリーナが手紙を読んでサキに伝える事にした。
『親愛なるママへ。あたし、もうすぐ結婚する事になったの。嫁ぎ先は、ミドルガルドのホワイト地方のスバル王国で、夫はアレクセイ=フォン=スバルっていうの。スバル王国は冬になると大雪が降る国で資源も乏しく裕福じゃないけど、きれいな水に恵まれてるんだよ。アレクセイ王太子は誰一人貧困に喘ぐ事のない国にしていきたいとあたしに言ってくれたんだ。あたしはママや自分のような貧困に喘ぐ人達を出さない為にアレクセイさんに妻として協力するって決めたの。あたしの花嫁姿、ママに見せてあげたかったな…。いつでもあたしは待ってるよ。ママとまた逢える日を。ハナ』
「ハナ…、逢いたい…。」
サキは涙を流しながら娘に逢いたいと言った。
「手紙の様子だと近いうちに結婚式が行われるそうね。」
「じゃあ…、あたし…、ハナに…、逢えないの…?」
「大丈夫、逢えるわ。わたしがその望みを叶えてあげる。ついてきて。」
マキュリーナは杖をついたサキを連れてアクアポリスの奥の方に向かった。
「待って…、外に出ないと…。」
サキは自分からすればちぐはぐな方向に行くマキュリーナに指摘した。
「わたしの言う通りにして。娘に逢いたいならね。」
マキュリーナはサキに娘に逢いたいなら自分の言う通りにするよう伝えた。
「…。」
サキは半信半疑マキュリーナに従う事にした。




