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運命の日

いよいよファーストレディの選抜の為のドラフト会議の日を迎えた。セレブ科の学徒達は洋裁の講義で制作したドレスに身を包んでおり、ハナも例外ではなかった。色や柄はそれぞれ違うが、ハナは白地に青の雫柄で可憐な雰囲気にマッチした意匠だ。一方、ミドルガルドの各国の要人達もタキシードをはじめとする礼服で臨んでおり、会場全体が(おごそ)かな雰囲気に包まれた。



多くの要人が最初に選んだのは級長だった。そして、級長が選んだのは若手の元老院院長だった。級長が元老院院長を選んだ理由は、貴族と平民が手を携え合う世界を目指すという自分の思想と一致していたからだった。


それから、他の学徒達が次々に決まっていく中、ハナはまだ選ばれていなかった。


(あたし…、粗相が多いからなの…?それとも…、皆程美しくないからなの…?ママみたいに美しかったら…、皆振り向いてくれるかな…?)


ハナは自分が選ばれない理由を憶測で挙げては落ち込み気味だった。そんな中…、


「白地に雫柄の君とお話致したいが…、いいかな?」


白のタキシードに身を包んだ男性がハナを選んだのだ。ハナははっとした。


「…わかりました…。」


ハナは承諾した。そして、交渉が始まった。



「初めまして、私は『アレクセイ=フォン=スバル』。ミドルガルドの『ホワイト地方』の『スバル王国』国王『ブレンダン=フォン=スバル』の嫡子だ。」


男性は自己紹介をした。


「わたしは…、モスクール・ティーンアカデミー・セレブ科7年生の…、ハナと言います…。」


ハナも緊張しながらも自己紹介をした。


「緊張しなくてもいいよ。私の国であるスバル王国は『ミドルガルドの最果て』と呼ばれるホワイト地方の小王国なんだ。ホワイト地方はブルー地方よりラピス山脈に沿ってダイヤモンド街道が続いている。冬は大雪が絶えず、作物も育たず、人々は家で縮こまった生活を強いられている。我が国は他の国と比べたら資源に乏しい。しかし、どこの国にも負けない物がある。それは、大自然並びに()()()だ。」

「大自然と水資源…?」


ハナは大自然、何より水資源に関心を示した。幼い頃に母と住んでいたスラムには自然が全くと言っていい程なく、きれいな水にも恵まれていなかったからだ。


「大雪が降るという事は裏を返せば手つかずの自然が多く、また水資源が豊かという事だ。雪解け水は人々の命を繋いでいる貴重な資源なんだ。私はこの水資源を活かして交易を盛んにしていきたい。そして、()()()()()()()()()()()()()にしていきたい。これが私の望みだ。」

「!!…。」


ハナは誰一人貧困に喘ぐ事のない国にしていきたいという言葉にはっとした。自分も幼い頃母と共に貧困に喘いでいたからだ。そして、自分の本当の夢は金持ちと結婚するのではなく、誰一人貧困に喘ぐ事のない世界にする事に気付いたのだった。その夢を自ら実現させるにはファーストレディとして夫の(まつりごと)を支える…、そう、以前と目的こそ違えどアカデミーで学問に勤しんできたのは決して無駄ではなかったのだ。


「ハナ、我が国は宴を催せる程決して()()()()()()()()()()()()()()()()して参りたい。そんな私の勝手に…、お付き合い頂けないだろうか…?」


アレクセイはハナに自分のファーストレディとなってくれないか尋ねた。


「…わかりました…。わたしも…、あなたの望みに寄りそうよう…、努めます…。」


ハナは承諾した。


「感謝致す…、ハナよ…。」


アレクセイは自分の妻になる事を承諾してくれたハナに感謝した。ハナの進路が内定した瞬間だった。

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