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孤児院を巣立って

月日が流れ、レスティーンスクールを無事卒業したハナは、孤児院の自室の荷物をまとめていた。


(今日でここを巣立つんだね。ありがとう、この部屋。)


荷物を背負ったハナは自室の鍵をかけて自室を後にした。



ハナが院長に自室の鍵を返すついでに別れの挨拶をするため、応接室に入ると、院長が書簡を持っていた。ハナは院長に鍵を返した。


「院長、部屋の鍵です。」

「わかりました。ハナ、あなたの母から手紙です。」

「はい…。」


院長は書簡をハナに渡した。ハナは手紙を読んでみた。


『親愛なる娘、ハナへ。モスクールに留学おめでとう。お前も昔のあたしと同じように金持ちと結婚する夢を持ってるんだね。そんなお前に伝えたい事があるんだ。絶対に金に(おぼ)れるんじゃないよ!あたしは貧しさから金持ちと結婚し、夫の金で一人贅沢(ぜいたく)三昧(ざんまい)の日々を送って追い出されたんだ。あたしと同じ(てつ)を踏まないよう気をつけるんだよ!サキより。』


(ママ…。あたし、モスクールでも頑張るよ!)


ハナは母の手紙を読んで決意を新たにした。


「ハナ、今日からあなたはこの孤児院を巣立ちます。これからも自分の目的を忘れずに、そして自分の業と向き合いながら精進なさい。」

「はい、院長。今までありがとうございました。」


ハナは院長に深々と頭を下げて感謝した。



応接室での院長との挨拶を済ませ、院長と一緒に連れられたハナの元に孤児院のレスティーン(子供)達が総出で見送った。レスティーン達はハナと遊んで貰った事もあって別れに涙する者もいた。一人のレスティーンがハナに歩み寄った。


「ハナ姉ちゃん、ありがとう。みんなからのお祝いです。」


レスティーンはハナに青い雫の形をしたオブジェを渡した。


「これは…?」


ハナは目を丸くした。


「ハナ姉ちゃんに水の加護があるようにという願いを込めてみんなで作ったお守りです。」

「みんな…、ありがとう…。」


感謝したハナはレスティーン達を次々抱擁した。



外には馬車がハナを待っていた。馬車を手配したのは雫の騎士団だ。


「じゃあみんな、あたしは行きますね。孤児院のみんなに水の加護がありますように。」

「ハナ姉ちゃんにも水の加護がありますように!」


かくしてハナは新天地であるモスクールに向かい、今まで自分を育ててくれた孤児院が小さくなっていく様に涙を浮かべたのだった。そして、彼女はこれが孤児院どころか故郷との永遠の別れとなる事をまだ知る(よし)もなかった。

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