母の真実
『親愛なる娘、ハナへ。ごめんね、お前のそばにいてあげられなくて。あたしはお前を養う為に夜の町に繰り出しては金稼いでたんだ。その稼いだ金できれいな水やパンにミルクをお前に与えようと頑張ってたんだよ。ハナ、お前は今孤児院から学校に通ってるんだね。お前の夢がどんな夢かあたし気になるな。ただ、どんな夢を持ってようがこれだけは忘れないでおくれ。絶対にあたしのような人になるんじゃないよ!サキより』
母の手紙を読んだハナは涙を流した。
「ハナ…、あなたの母であるサキは…、夜の富裕層の町に繰り出していたの…、娘のあなたを育てる金を稼ぐ為に…。でも…、その稼ぎ方が…、真っ当な方法ではなかったの…。」
マキュリーナはハナにサキの事を話した。
「真っ当な方法じゃなかった…?」
ハナは方法について気になった。
「サキは…、富裕層の男性を相手に…、自分の身体を商売道具にして…、金を稼いだの…。つまり…、売春よ…。」
マキュリーナはハナに母が稼いだ方法について重々しく話した。
「!!…」
ハナは母の真実について大いに動揺した。
「富裕層の住宅地に娼婦が出没しているという通報があったの…。それで摘発したのがあなたの母だった…。彼女は移送用馬車に押し込められる直前に…、わたしに話してくれたの…。一度富裕層に嫁いだけど、金目当てだったことが発覚して離縁を迫られてスラムに追いやられ、そこで身ごもっていたあなたを産んだ事…、幼かったあなたを育てる金を稼ぐ為に手を穢した事…、そしてあなたの居場所を…。だから…、わたし達はあなたを保護出来たの…。」
マキュリーナはサキを摘発した事とハナを保護に至った経緯をハナに重々しく話した。
「!!…(そんな…、ママが…。)」
ハナは母を摘発したのが雫の騎士団、そして目の前にいるマキュリーナである事にさらに動揺した。
「ハナ…、あなたの母は悪い人だから捕まったんじゃないの…。金を稼ぐ方法を間違えてしまったからなの…。母があの方法で金を稼いでいたという真実を聞いて…、あなたは…、辛いよね…。」
「うん…。」
「でもね…、真実を伝える方は…、もっと辛いの…。いやしくもあなたの母に…、心ない事をしたという事実が…。わたし達雫の騎士団は…、ブラーガルドの治安の為にも働いているの…。このままあなたの母をのさばらせたら…、多くの富裕層の人々が…、やがて文無しにされていく…。そうした事態を防ぐためにあなたの母を摘発したの…。」
マキュリーナは涙を流しながら自分達の所業もハナに語った。
「…。」
ハナは何も言わずにただ聞いていた。
「でも…、悪いけどあなたの母を摘発した件については詫びる事は出来ないわ…。ああしなければ…、ブラーガルドの治安の悪化に繋がったから…。」
「…。」
「ハナ…、一つ尋ねていいかしら…?」
ハナは黙って頷いた。
「あなたの夢はどんな夢かしら…?」
マキュリーナはハナに自分の夢がどんな夢なのか尋ねた。
「…あたしの夢は…、金持ちと結婚する事です…。例えママがどんな人であっても…、それは変わりません…。」
ハナはマキュリーナに金持ちと結婚するのが夢と語った。
「金持ちと結婚したいのね…。わかったわ…。あなたの事は…、母から頼まれているからね…。」
マキュリーナはハナの夢に協力すると伝えた。ハナは静かながら喜んだ。
「これからあなたがすべき事は…、今まで以上に学問に勤しむ事ね。進路についてはわたしも色々調べるわ。」
「マキュリーナ様…、ありがとうございます!」
ハナは自分の夢に協力してくれるマキュリーナに涙を流して感激した。
次の日より、ハナは学校での学問は勿論、孤児院では院長と学問に勤しむ日々を送ったのだった。




