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異世界で魔王と呼ばれた男が帰って来た!  作者: 山口遊子


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93.帰還者同盟1


 国内で猛威を振るった新型感染病だが、武山薬品が行った治験の名を借りた大々的な治療薬の民間医療機関への無償提供により、重篤な患者が次々と生還し、その結果などがSNSなどを通じ一気に拡散されていった結果、ついに厚生労働省の特別認可がおり、健保適用薬としても認められることとなった。もちろん、担当の役人とその周辺には服部のチームが接触し高ランクのポーション提供という鼻薬を嗅がせている。


 新治療薬の価格についても目論見どおり通り税抜きで1セットあたり50000円で、新型感染病の特効薬を販売することになった。既に、武山薬品の薬品倉庫の中には24時間体制で工場を稼働させて、3種類のポーションを封入した2000万セットの治療薬が納入されており、2週間ほど前から順次出荷を始めている。1000万セットが治療に用いられ消費された段階で、一気に新型感染病は収束に向かった。


 新薬の適応病症は今回の新型感染病のみに限定したものだが、今後、かなりの病症に対して有効であることを立証していくことで、適応病症を拡大していく予定だ。武山薬品のボーナス支給日は7月初なので今回の収益を反映させて大幅にボーナスをアップしてやりたかったが、時間的に間に合わないようで、支給準備が整う9月末にでも全社員に対して臨時ボーナスを出してやるよう指示している。


 株価のほうはこういった好材料を織り込み、連日のストップ高を記録。ついに株価が1万円を超えた。800円程度で仕込んだ株が1万円である。俺を社長に推してくれた大株主たちに対して面目が立ったというものだ。ドライの方も株価が800円近辺の辺りで100万株ほど仕込んだそうだから、武山薬品の株だけでの100億円分保有していることになる。まだまだ、株価の上昇は続きそうなので楽しみだ。


 武山薬品の方の仕事が立て込んでいたので、高校の方にはコピーをやることが多かった6月だが、一応、新役員も決め体制も落ち着いてきたと思う。まだ部長クラスの入れ替えは続いているが、これ以降はアインと服部に任せておけばいいだろう。アインはたいてい自分の副社長室にいるのだが、服部は社内を飛び回っているようだ。板谷がいたころの社内での扱いはただの係長だった服部が大抜擢で常務取締役だ。これから不在の多くなる俺を除けば実質会社のナンバー2だと社内では認められている。



 そんな感じで、6月を終え、カレンダーは7月になった。


 事務所での仕事がほとんどなくなった中川は6月いっぱいで俺のところのアルバイトをめている。そのかわり、事務所の鍵は渡したままなので、好きな時にやって来てドライの要塞の中に作ってもらった勉強部屋で、吉田や村田たちと一緒に勉強をしている。ちなみに中川の父親は俺の与えたポーションを服用して以降体調が回復した結果、収入のほうもかなり安定したそうだ。



「ねえ、霧谷くん。ここのところ梅雨空が続いて鬱陶うっとうしいのだけれど、あなたはいつもと全く変わらないのね」


 勉強部屋に顔を出した俺に向かって中川が訳の分からないことを言ってきた。いまのいいようからして、俺のコピーの性能はかなりアップしていることがうかがえる。


「雨くらいどうってことないからな。それより今日は中川だけなのか?」


「吉田さんたちからは何も聞いてはいないけれど、まだ私しかここに来ていないわ」


「中川はいつも勉強熱心だな」


「この前中間試験があったと思ったら今度は期末よ。今度は霧谷くんに勝って見せるわ」


「その意気なら何とかなるんじゃないか?」


「何言っているの。心の中では、そんなことは思ってないくせに」


「そんなことはない?」


「何んで疑問形なの? やっぱりそうじゃない」


 夕方近くになったので、中川は自宅に帰って行った。中川が何を言いたかったのかはいまいちわからなかったが、まあ、ただの雑談だったのだろう。



 そろそろ、俺も家に帰ろうかと考えていたところ、ドライが勉強部屋の中に入って来た。


「マスター、探しましたー」


「どうした?」


「マスターの喜びそうな情報を掴むことができましたー」


「俺が喜ぶ情報? 何だ、言ってみろよ」


「デヘ、武山薬品に金田とかいう異世界帰りの勇者がいたことはご存じですよねー」


「金田な。覚えているぞ。確か警察に逮捕されたと思ったが」


「はい。その金田ですー。ニュースにはなっていませんが、いまから一週間ほど前、警察の留置所から拘置所に移送中に連れ去られたようですー」


「勝手に好きなところへ連れていってくれていいが、それがそんなに面白いことか?」


「帰還者同盟という組織が金田を連れ去ったようですー。帰還者同盟というのは異世界からの帰還者の互助組織を自称していますー」


「ほう。面白そうじゃないか」


「ひょ、ひょ、ひょ。そうでしょー」


「それで、金田が誘拐された話に続きがあるんだろ? 続きはどうなってるんだ?」


「今のところ続きは有りませーん」


「それじゃあ、どうしようもないじゃないか。その鉄道マニアのような名前の帰還者同盟というのどんな組織なんだ?」


「さっき言ったように、異世界からの帰還者を集めている組織ですー、その組織の構成員たちは高い身体能力やスキル、魔法などを使って犯罪行為を繰り返しているようですー。好き勝手なことをしているという意味ではマスターと同じですー」


「ドライ、おまえ近頃失礼な物言いが増えてきてないか?」


「ひょえー、マスターを怒らせてしまいましたー。申し訳ありませんー」


「まあいい。しかし、それだけだとそこまで面白い話じゃないな。他に情報はなにかないのか?」


「それが、帰還者同盟の拠点アジトがある場所を特定してしまいましたー」


「ほんとか? どうやったのかはわからないがすごいじゃないか」


「ひょ、ひょ、ひょ。今度はちゃんとマスターに褒められましたー。褒められたついでにマスターに良いものをプレゼントしますー」


 そういって、ドライが俺に差し出したものは銀色のブレスレットに見えた。手に取ってみると、


「なんだ? 腕時計?」


「はい。腕時計ですー。それに話しかければわたしとお話しすることができますー」


「おまえとだけか?」


「それはそうですー。でも、その腕時計にはすごい機能が付いてますー。文字盤がスイッチになっていて、それを押し込むとすごいことが起きますー」


「すごいこと?」


「はいー。スイッチが押された場所に向かって、ミサイルが飛んできますー」


「ミサイル?」


「巡航ミサイル? 面白そうだったので10発ほど作りました。拠点内のミサイルサイロから、このビルの上に設置した転移魔法陣を通って目標に飛んでいきますー。もちろんステルスですー」


「ミサイルが飛んで来たら俺までけがしそうじゃないか」


「マスターは腕時計を外して、そこから離れればいいだけですー」


「そう言うことか。便利そうじゃないか。ところで威力はどのくらいだ?」


「ひょ、ひょ、ひょ。まためられましたー。でへ、でへ。威力は1発で一つの都市が跡形もなく更地になりますー」


「ばか! そんなの使えるわけないだろ!」


「今度は、怒られましたー」




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― 新着の感想 ―
[一言] ドライもんの作る道具は極端すぎるっ! 気軽に使えないよ!
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