65.アイテムバッグいらんかね?
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「いいパンチが入ってすっきりしたぜ。悪く思うなよ」
そう言い残して、金田が公園から出て行った。まさに通り魔。しかもかなりウザイ。普通なら警察への通報案件だろうが、俺の身内に手を出さなかったのだけは褒めてやる。ようやく、視界から金田が居なくなったので、黒い戦闘服に付いた土を掃いながら起き上がり、
「中川、俺は何ともないから」
「霧谷くん、何言ってんの。思いっきりさっきの眉なし男に殴られてたじゃないの。あなたが殴られて吹っ飛んだところなんて初めてじゃない」
「あれは、ワザとだから。ほんと。ほら、何ともないだろ」
顔の赤みは元に戻し、その場で軽くぴょんぴょん飛び跳ねて見せたら、少しは中川も落ち着いたようだ。
どうも、この運動公園へ来ると変なヤツが湧いて出てくる。金田については、武山薬品の仕込みがうまくいけば、会社をクビにして放り出してやるくらいで許してやろう。どうせ懲戒解雇だ。先々苦労してくれ。
「今日も、変なヤツが湧いてしまってヤル気がうせちゃったな。これからどうする?」
「昨日の今日でカラオケもないわねー」
「それじゃあ、ここの運動公園の先が土手になってるから、その上の歩道でも歩いてみない? 景色もいいし」
「いいわね、だったらやっぱりお弁当を持ってくればよかったわね」
「食べ物、飲み物は俺が持ってるから大丈夫だ。土手の上を歩いて適当なところで昼にしよう」
「食べ物を持ってるっていうけど、霧谷くん、手ぶらじゃない」
「何でもありの霧谷くんだから、きっとアイテムボックスかなんか持ってんだよ」
やはり、村田はするどい。
「そういうことだ」
「ほんとなの? 何だか、ズルいわね」
「そういうものだと思ってくれ。俺だってそれなりに苦労してきてるんだ」
「苦労したってどういうこと?」
「そのうちに話してやるよ。あんまり聞いてて気持ちのいい話じゃないと思うがな」
そういった感じで話しながら土手の上を歩いていく。昨日の雨で少しはぬかるんだところが有るかと思ったがすっかり土手の上の砂利道は乾いていたし、春の暖かい風が気持ちよい。まさに、ピクニックだかハイキングだ。
そんなうららかな日差しの中で、土手の上を歩いていると、やっぱり始まってしまった。
「しりとり」「リンパ球」「運動会」「いも」……
1時間ほど歩いていくと、少し道をそれて土手を下ったところに、下草だけが生えた空き地が有ったので、少し早いがそこで昼にすることにした。
あいにく、アイテムボックスの中にはビニールシートは入れてなかったので、帆布のような厚手の布を取り出して下に敷くことにした。かなり大きな布の塊が何の前触れもなくいきなり目の前に現れたことで、吉田はかなり驚いたようだ。中川と村田は小さなものがどこからともなく出てくるのは何度も見ていたと思うが、大きなものは初めてなので二人も驚いたようだ。俺から言わせると、どちらがスゴイかというと転移の方がスゴイと思うのだが。
「すごいよ。アイテムボックス。霧谷くん、これっていくらくらいの容量があるの?」
村田だけはすぐに復帰して、核心を突いて来る。
「どうなんだろう。
みんな、布の隅を持って広げてくれるか」
4人で帆布を広げながら、
「容量いっぱいになるまで試したことがないからわからないが、この前、10万立方メートルほどの土を収納してもなんともなかったから、相当なんじゃないか」
「10万!?」
中川も吉田も俺と村田の話を聞いていてかなり驚いたようだ。
「そういえば、あと定番の時間停止機能付きだ。そのせいか中に入っている物はお互いに干渉しないようだな。
生き物は基本収納できないけど、微生物なんかは収納できてしまうようだ。だから、中で時間が経過したら微生物が繁殖しちゃうだろ。そしたら中のものが腐敗したりして、アイテムボックスの中に変なガスが充満しそうだし、何より他に入れたものまでダメになりそうじゃないか? 食べ物も入れるのにそれだと困るからな。
よし、そんな感じだ。うまく敷けたようだな。それじゃあ、小皿とコップ、それとフォークを渡すから取ってくれるか?」
みんなに食器を配り、アイテムボックスの中から、大皿料理を取り出していく。かなり前にあちらの世界で用意したものなのだが中身はでき立てだ。
「この皿に入っているのが、牛肉の炒め物。で、こっちがソーセージでこれは豚肉入りの野菜炒めだな。焼き鳥もあるから」
料理と一緒に、ジュースの入ったピッチャーを何個か並べて、丸いパンの盛られた皿を真ん中に置いた。
かわった動物の肉料理なんかもアイテムボックスの中には入っているが、無難なものを選んで並べている。
「村田くん、ほんとに料理が温かいよ。凄いよ」
「便利だろ? そうだなー。みんな、アイテムバッグいるか? 俺のアイテムボックスは魔法だが。アイテムバッグは魔道具だ。容量も微々たるものだし、入れたものの重みを軽くするだけだけどな。俺が昔練習で作ったものが何個かあるはずだ。どれも内部容量が約5000リットルで100分の1の重量軽減効果が付いてる。それなりだろ」
なんだか、みんな黙っている。
「どうした? アイテムバッグは持ってて損はないと思うが?」
「霧谷くん、アイテムバッグって今の世の中にはない物じゃない。そんなものを人に軽々しく上げちゃうものじゃないと思うわ」
「中川、大丈夫だ。俺が昔空間魔法の練習で作ったものだから本当に大したものじゃない」
「霧谷くん、そういう意味じゃなくて、そんなものがあることが世間に知れたら大変なことになるんじゃない?」
「だれも、手品と思って本気にしやしないさ。本気にしたとしてもマネできなけりゃ同じだろ」
結局3人とも恐る恐るといった具合でアイテムバッグを受け取った。




