51.喫茶店?
しばらく放っておいたが、どうやらドジョウ髭は、海を渡って大陸の本拠地に戻ったようだ。蜘蛛の送ってくる映像に、何度かテレビで見たことのあるビルが映っているので場所はシャンハイのような気がする。これで、いつでもシャンハイ旅行が出来る。
港から車に乗ってとある高層ビルの中に入っていったドジョウ髭だが、数時間気にかけないでいたら、何やら白い貫頭衣のような物を着せられて独房の中に入れられていた。
100億もの損失を出した上に拠点も失ったわけだから、お咎めなしってことはないだろう。ドジョウ髭がどうなろうとどうでも良いが、2型の蜘蛛は3匹しか作っていないので、俺的には大事な蜘蛛だ。ドジョウ髭の巻き添えになってはことなので、適当な場所を自分で見つけて潜んでいるよう指示を出しておいた。
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価格を1本1000円と低くしたせいか、スタミナポーション(弱)のニーズが高い。そんなに傷む物ではないので、20本ずつの箱詰めにして20箱作って事務所の脇に積んでおいた。俺にとっては、どちらも元値はタダなので、儲けは儲けなのだが、これだけスタミナポーションがあっても、ヒールポーション(中)1本50万より総額が安い。値段を下げすぎたか?
授業を聞きながらではあるがポーションのことについて思いついたことが有ったので、学校帰りに森本のおっちゃんのところに行って話をすることにした。
「社長さん、そろそろ大きくいこうと思うんだけど」
「今度はなんだ?」
「喫茶店を開こうと思ってるんだ」
「喫茶店? どういうことだ?」
「俺のポーションをジュースに入れて喫茶店で売るのさ」
「何でまた喫茶店で?」
「本当は薬として売り出したいんだけど、薬だといろいろ煩いんだろ?」
「ああ、許認可とか薬事法とかいろいろあるようだな」
「それでだ、喫茶店でジュースとして出す分には問題なさそうだろ?」
「そうだな。役人はおっかねーし、いい方法みたいだな」
「それで、従業員込みで居ぬきの喫茶店の物件って出回ってないかな?」
「そういや、お前さんところの1階に入っているスタ〇なんだがあんまり客が入ってないだろ? それで、そろそろ畳むかもって話が出てるようだぜ。あとで、不動産屋に聞いといてやるよ」
「それなら、知ってる。来週末に店を畳むって張り紙が店の前に出てた」
「それじゃあ、不動産屋に言って、その店を譲り受ける条件でも聞いといてやるよ」
「社長さん、頼りになるな。お礼に、これを置いてくよ」
キュアポーション(弱)を3本ほどおっちゃんの机に置いてやった。
「これは、病気用の薬だ。重い風邪でもインフルエンザでもすぐに治ると思うぞ」
「そいつはすごいな。こいつも喫茶店に使うのか?」
「そうだな。品目はある程度あった方が良いからな」
「花粉症に効くのはねーかな?」
「今渡したので効くと思うぞ」
「それなら、かなり売れるんじゃないか? 定価はいくらくらいで考えてるんだ?」
「そうだな、インフルのワクチンが3000円くらいって言うから、同じで3000円にしておくか。あんまり安くするとかえって売れないこともあるし、値段については追々考えていくさ。どのみち、ジュースの中には薬を少量しか入れるつもりはないんだけどな。これからは、マスの時代だから、大量販売だ」
「3000円だと1000人客が来て300万か、大儲けってわけにはいかなそうだな」
「まあな、そのうち噂が広まって、良い客層を掴んだら、もっと高級なのを出していけばいいだろ?」
「そうだな。それならかなりいい線行くんじゃないか」
「だろ、そん時は、社長さんも営業に協力してくれよ」
「任せてくれ。知り合いに声かけてやるから、最初からいい線行くと思うぜ」
「それじゃあ」
森本のおっちゃん、役に立つわ。これで何とかなりそうだ。
翌日。
学校での昼食時、いつものように中川と村田と3人で昼食をとっているところだ。
「今度、喫茶店を始めようと思ってるんだ」
「喫茶店を始めるって、喫茶店の店長になるってことかい?」
「いや、店長は別に雇って俺はオーナーになるってところかな。それで、もう店のあてはあるんだが、店の名前を早めに決めないと看板の発注もできないからな」
「霧谷くんはいつも突拍子もないことを始めるけれど、今度は喫茶店なのね」
「うちの事務所の下のスタ〇、あそこが今度店を畳むことは知ってるだろ? できれば俺がその後を引き継ぐつもりなんだ」
「もうそこまで話が進んでいるの?」
「そういうこと。中川も良かったら店名を考えておいてくれないか」
「それなら、事務所と一緒に、『KIRI-YA』でいいじゃない」
「それもそうか。そう考えると『KIRI-YA』はいい名前だったな」
「霧谷くんの『KIRI-YA』か、カッコいいなー。そのうち世界の『KIRI-YA』になったら凄いなー」
「すぐにはできないけど、少しずつ手を広げて村田が言うように世界の『KIRI-YA』にしてみたいな」
そういうことで店名はあっさり『KIRI-YA』に決まった。
「霧谷くん、森本興業の社長さんから電話」
週末、事務所のソファーでまったりしていると、森本のおっちゃんから電話があった。
「はい、霧谷です。社長さん、喫茶店の方、何とかなりそうかい?」
『ああ、お前さんが言ってた通り来週いっぱいで、あの店畳むそうだ。今勤めている連中を引き取ってくれるなら、看板をとっぱずすだけで備品はおいていってもいいってよ。帳簿も必要になるだろうから店長以下雇えればちょうどいいんじゃないか。今回はちょっと広くて備品代もあるんで、最初の保証金が200に月に50ってとこらしい』
「そんじゃ、社長さん、悪いけどそれで話を進めておいてくれるかい」
『わかった。店長以外で今働いてるのが3人だそうだ。いくらで雇ってたかは知らないが、時給で雇ってたらしいから人件費はそこまでかからないんじゃないか?』
「下のスタ〇で働いてる連中ならよく知ってるから申し分ないな。ちょっとくらい人件費がかかっても大丈夫」
「そこでだ、そろそろ、お前さんのところも会社にしちゃどうだ? 金さえ出せばすぐに会社なんぞ作れるぞ。給料計算したり払ったりするのも自分で一々するのは面倒だろ? 今後別のことを何かするにもそっちの方がいろいろ都合が良いんじゃないか」
「そうなのか。そんなら社長さん、当てが有るなら頼んでいいか?」
「実費は貰うが、任せておきな。うちもいま使ってる税理士の会社にやってもらったんだ。そこに頼めば何とかなるだろ。うちが会社になるのに30万ほどかかったと思うから、今でも、だいたい4、50万もありゃ十分だとおもうぞ。そのくらいの金、お前さんなら楽勝だろ?」
「費用については、全然問題ない。それじゃあ社長さん、よろしく」




