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異世界で魔王と呼ばれた男が帰って来た!  作者: 山口遊子


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5.高校入学2


 入学式後のホームルームが終わったところで、先生も教室を出て、生徒たちも思い思いに帰宅するようだ。ほかのクラスもホームルームが終ったようで生徒たちが帰宅するのだろう、廊下の方が騒がしくなってきた。


 黒板の上にある掛け時計を見るとまだ11時だ。早めに家に帰って、俺の部屋を少し改造しておこう。美登里なんかが取り込み中に勝手に入ってきたりしたら困るからな。


 俺が席を立ち教室を出ようとしたら、教室の扉を半分開けて、なにやら目つきの悪い男子生徒の二人組が教室内を物色している。邪魔だ。誰かに用事でもあるのか知らんが出入り口に立つな! 通行の邪魔だ。ここのところこんなヤツらによく出くわす。


「ちょっと、そこどいてくれるか?」


 不機嫌そうに俺がそいつらに道を開けるよう促す。


「……」


 背の高い方が俺を睨み付けて来たが、それでも黙って横に寄ってくれた。


「サンキュ」


 俺は、そのまま横を通って教室を出て廊下に出る。


 何だか目つきの悪いヤツらだったなあ。目つきが悪いがいいヤツもたまにはいるが、非常に少ない。たいていはとんでもないヤツだ。偏見であると自覚はしているが、こればかりは俺自身の経験則なので如何いかんともしづらい。さっきの二人組も不良とは言わないまでも、ロクなヤツじゃないだろう。という俺も目つきの悪さで人のことは言えないかもしれないがな。


「「おーい! 村田ー。一緒に帰ろーぜ!」」


 後ろでさっきの二人組が村田を誘っている。


 はて、こいつらも同じ中学出身だったか? 村田が嫌そうにしているのが気配でわかる。振り返って見ていると、二人組に両肩を組まれた村田が引きずられるように連行されてゆく。


 仕方ない。出しゃばってやるか。


「おい、お前ら、村田が嫌がってるようじゃないか。

 村田も、いやならちゃんと『いや』と言わないとだめだぞ」


 村田は下を向いて黙っている。


「何言ってんだ? お前に関係ないだろ!」


 二人組の背の低い方が俺を睨みながら言ってくる。


 俺はそれを無視して、


「村田、もう一度言う。嫌ならちゃんと『嫌』と言え。俺が何とかしてやるから」


 村田は下を向いて黙っている。


「何とかする? お前何(いき)がってんの? バカなの?」


 二人組の背の高い方があおる。こいつはモブAと呼称こしょうしよう。背の低い方がモブBだ。


 廊下で騒いでいる俺たちの周りにだんだん人垣ができて来た。


「……嫌だ。……嫌だ! 嫌だ! お前らなんかと一緒に帰らない!」


 ちゃんと言えるじゃないか。


「良く言った。俺が何とかしてやる。

 村田を放してやれ! その代り俺を1発殴らせてやる。ぐーでいいぞ。別に学校にチクったりはしないし、もし学校から何か言ってきたら殴られたことはないと言ってやる」


「本当か?」「一人1発ずつで2発殴らせてくれるならいいぞ」


「ああ、一人1発ずつでいいぞ。なんなら一人2発ずつでもいいぜ」


 そういって俺は眼鏡を外し、殴りやすいように顔を前に突き出してやった。


 右からモブA、左からモブB。結構腰の入ったパンチだ。こいつら慣れてる。いっぱしの不良のようだ。 


「キャー! ……」


 人垣の中から女生徒の黄色い悲鳴。


 ゴキッツ。 ボキッツ。


 鳴ってはいけないような音がして、二人の拳が砕けた。手の甲から白い骨がはみ出している。複雑骨折ご苦労さま。


 俺の顔面は無論無傷だ。モブの攻撃で俺がダメージを受けるわけがない。


 二人とも自分たちの砕けた拳からはみ出た白い骨を見て、泡を吹いて気絶してしまった。周りの人垣もドン引きである。


「キャー! ……」


 人垣の中から女生徒の黄色い悲鳴がまた響いた。どうでもいいが声が大きいな。


 ……。



 二人組は、しばらくして駆け付けた救急隊員に担架に乗せられ救急車で運ばれて行った。


 そして俺と村田は、職員室に連行された。


 ……。


 間延びした救急車のサイレンが遠くの方で聞こえる。


「……。霧谷君、事情は分かりました。周りで見ていた生徒たちも聞いています。今回のことは不幸な事故だったのでしょう。ですが、霧谷君、どれほど自分の顔の硬さに自信があるのか知りませんが、これからこんな無茶なことは絶対にしないでください。私はこれから校長に説明してきますから。二人とも、もう帰ってよろしい」 


「どうも、お騒がせしました」


 ペコリと山田先生にお辞儀をして、村田と二人で職員室を後にする。


「ハア。……」


 後ろの方でため息が聞こえた。先生、お疲れさまです。ため息をついていると幸せが逃げますよ。



「霧谷くん。今日は助けてくれて本当にありがとう。僕は、中学2年の時からあの連中にいじめられていたんだ。僕があいつらにいじめられているのを、同級生はもちろん、担任も校長も見て見ぬふり。良い高校に入いればあいつらと別れられると思って一生懸命勉強してこの学校に入学できたのに。成績最底辺のあいつらが、どうしてこの高校の入試に受かったのか不思議でならない」


「村田、俺もお前と同じ浪岡中だったよしみだ。気にするな。あいつらからいじめられることはもうないと思うけど、何かあったら俺に言ってこい」


 これじゃあ、どっかの親分みたいだが、まあいいか。


 村田とは帰る方向が同じなので、うちの最寄りの駅まで一緒に帰り、そこで別れた。


 村田の話では、モブAの家は爺さんが大病院を経営し、父親が県会議員をしているそうだ。地元の名士というやつだ。


 モブBはAほどではないがそこそこの金持ちらしい。一般的に、金持ちほど子弟の教育には力をいれいてるものと思っていたがどうもここいらでは違うらしい。

 

 今回自分たちの息子が自業自得とはいえ大けがをしたわけで、なにがしかの逆恨みをされるかも知れない、と村田は心配そうに言う。逆恨みされるならおそらく相手は俺だろうから、全く問題ない。



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