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異世界で魔王と呼ばれた男が帰って来た!  作者: 山口遊子


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48/111

48.運動公園


 土曜日の8時少し前、最後の吉田が現れた。


「吉田さんが来たみたい」



「みんな、おはよう」


「「「おはよう」」」


 やって来た吉田の恰好はというと、下は濃い鼠色のレギンスの上に黒の丈の短いショートパンツ。上は、ピンクのトレーニングウェアといった出で立ちだった。小柄な体格によく似あっている。


「霧谷君の恰好、そんなので走れるの?」


「おなじことを中川にも言われたが全く問題ない。吉田は準備運動の方は大丈夫か?」


「軽くうちで体操して来たから大丈夫。みんなの準備が良いようなら走り始めましょうか」


「じゃあ、よーい、ドン」


 だらだらと駅前の通りをみんなで運動公園のある方向に走り始めた。まだ軽いジョギング程度なので、村田と中川には本当に軽めに『スタミナ』をかけておいた。吉田にはどの程度運動能力があるのかわからないので、今は様子見で何も魔法の類はかけていない。


 吉田と村田が前を走り、中川と俺が後ろを付いて行く。後ろから見る吉田のランニングフォームはまだジョギング状態なのではっきりは分からないが、非常に軽くきれいなフォームに見える。これなら特に魔法をかけてやる必要はなさそうだ。


 村田の場合、軽い『スタミナ』だけなら問題ないと思うが、強めにそのたぐいの魔法をかけてしまうと、いつぞやの100メートル走のように手足がばらばらに動きかねないので次に『スタミナ』をかけるタイミングと強さは慎重にしないといけない。


 土曜のこの時間、通りにはまだ車も少ないので、今は車道の脇を2列で走っている。すぐ先からは国道でそこにはかなり広い歩道が両脇を走っているので危なくはない。途中に信号がそこそこあるが、信号が赤の時はその場で足踏みすることにした。


 この歩道の自動車道路側には大きな街路樹が街道沿いにずっと続いているので歩道がその分狭くなっている。2列だと向かいから人が歩いて来るとお互い邪魔になるのだが、先日中川に1列だと遠足みたいだと言われたので黙っていることにした。


 ジョギングを始めて15分ほど経ったころ、


「村田くん、その体形だからすぐにへばるかと思ってたけど、全然そんなことないのね。見直したわ」


 と、吉田が村田をめた。


「吉田さん。僕の方はいろいろ(・・・・)あって何とか走れてるんだけど、吉田さんこそたいしたもんだね」


「わたしは、長距離走るのは昔から得意だったの。村田くんも覚えてるでしょ?」


「そうだったっけ」


「ひどいなー」


『は、はい』以外を村田が口にするのは、中川以外では初めてかもしれない。


「あと3キロくらいだから、そろそろスピードを上げて行くか?」


 俺の提案に中川と村田は黙っていたが、吉田は、


「オッケー、それじゃ、ちょっとスピード上げるわよ。村田くん、ちゃんとついてきなさいよ」


 吉田は1段ギアーを上げたようだ。自分で長距離が得意と言うだけあって、きれいなフォームで軽く走っている。


 このスピードには村田はもちろん中川もついていけそうもない。

『スタミナ』は最初のものよりやや強めで、『ヘイスト』はごく弱く村田と中川に掛けてやった。これでかなり楽に走れるだろう。村田もちゃんと走れている。先に出た吉田にすぐに追いつくことができた。


「村田くんもだけど、みんなもやるじゃない。見直したわ」


 意地になったのか、吉田が更に走るスピードを上げたようだ。あと、10分ほどで運動公園までたどり着けると思うが、行った先でのトレーニングが目的なんだけど吉田は大丈夫なのか?


 後ろの3人が平気な顔をしてついて来るので、もう一段吉田がスピードを上げたのだが徐々に失速し始めてしまった。


「吉田さん、無理しなくてもいいのよ。もう少しで到着するから少しスピードを落としましょう」


 中川がそう言って、俺の方を向いたので、軽ーく『スタミナ』を吉田にかけてやった。


「あれ? 急に体が楽になった。あれ?」


 吉田は首をかしげながらも、走りが軽快になったようで、そこからはちゃんと2列で並んで走った。



「見えてきたようよ。そこの横断歩道を渡ったところの道を下りて行くと運動公園の入り口よ。中に入ったら少し休憩しましょう」


 運動公園のゲートを入ると、ちょうど自販機も何個か設置されていて、ベンチも置いてあった。


「ふう。わたしが一番走るのは早いと思ってたんだけど、あなたたち何なの? それに3人ともほとんど汗もかいてないようだし」


「吉田。俺から見て吉田はかなりだと思うぞ。吉田はほとんど自力でこの距離を走ったけど、村田と中川はいわばドーピング気味だったわけだからな」


「ドーピング?」


「薬ではないんだがな。それはおいといて、何か飲み物でも買って、少し休憩しよう」


「そうね。喉も少し乾いたから、ジュースでも買おうかしら」


「僕はコーラかな」


「村田くん、あなたは水かお茶にしなさい」


 村田が吉田にダメ出しされたので、渋々緑茶を買っていた。


 俺は村田の代わりにコーラにするか。……、フー。喉がスーとして気持ちがいい。


 各自持っていたタオルで汗を拭いたあと飲み物を手にしてしばらく休憩していると、運動公園のゲートの前に車が停まった。今どき珍しく嫌に車高の低いセダンだ。


 中から現れたのは、二十歳くらいに見えるチャラそうなお兄さんの二人組。こいつらはいわゆるテンプレモブ要員ってところか。おおいに楽しませてもらおう。早く来い。こっちに来い。


 俺以外の3人が警戒した目でその二人組を見ている。そんな目で見つめていると、お客さんがこっちに寄ってくると思うぞ。きみたち少しは場慣れした方が良いぞ。


 俺が薄ら笑いを浮かべて二人組を見ていると、俺の願いが通じたようでこっちに二人組がやって来た。よしよし。




ここまで、読んでいただきありがとうございます。

また、ブックマーク、評価、感想、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言]  いよいよ平和な日常が終わりを告げ・・・・  (でも戦いは一瞬で終わりそう) 【前回の作者様からの返信について】  そういえば村田君が霧谷君の黒いスーツを羨ましそうにする シーンがありま…
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