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異世界で魔王と呼ばれた男が帰って来た!  作者: 山口遊子


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45/111

45.テスト


 午前中は、いきなり中川の前に現れてびっくりさせてしまったので、今度は事務所の扉前に転移した。人目がないのを確認し、そこで普段着に早着替えをして『ステルス』を解いた。


「ただいま」


 そう言いながら、事務所の扉を開けると、中川は下を向いて勉強をしている。


「霧谷くん、お帰りなさい」


「まじめだな。今日はもう何もないから帰ってくれてもいいぞ」


「そう、それじゃあ、近くのスーパーで買い物をして帰るわ」


「ふーん。中川は料理もできるのか?」


「下手だけどね」


「それでも偉いな。続けていればすぐにうまくなるだろ」


「そうね。そのつもりで頑張っていくわ」




 翌日の日曜日。


 母さんの作ってくれた朝食を食べていると、珍しく早起きして、俺の向かいで朝食の食パンにバターを塗りながら妹の美登里が俺に話しかけてきた。


 父さんと母さんは、朝早くからマンションに引っ越した叔父さん夫婦のところに手伝いに行っている。


「ねえ、お兄ちゃん、きのう女の人と二人でラーメン屋さんから出てくるところを目撃しちゃった。中学の頃は全然だったけど、高校に入学して早くも彼女ができちゃったの? それって、高校デビューってやつ? お兄ちゃんはああいった感じの人がタイプだったのね」


「美登里、あれは学校の同級生だ。別に彼女とかそんなんじゃない」


「じゃあ何で一緒にラーメンなんて食べてるのよ」


「同級生が同じ店にいたら知らない振りはできないだろ」


 美登里が妙に絡んでくるので適当に誤魔化しておいた。嘘は言っていない。


「なーんだ。でもちょっと安心しちゃった。だけど昨日の人すっごくきれいな人だったわよね」


「美人なんだろうな。だけど俺からすると美登里が1番だ」


「フフフ、お兄ちゃんありがと」


 しょせんは中1、チョロいものである。




 朝食後、美登里がめずらしく俺にれてくれたお茶を飲みながらテレビを見ていると、とうとう俺が苦心して製作したわが街のランドマークが崩落したようだ。周りを工事用ネットで覆っていたため、周辺への被害はなかったようで何よりである。崩落の瞬間をスマホか何かで撮った映像が流れていた。自信作の最期だ、俺も見に行きたかった。


 次に流れたニュースは、〇×港の近くにある倉庫街での爆発事故のニュースだ。その現場で、大量の覚せい剤が押収されたというものだった。しかも現場近くで救急隊員に救助された30名あまり全員が逮捕されたようだ。中には、銃弾により負傷した者もおり、大規模な薬物密売組織のからんだ事件として警視庁と県警で合同捜査本部を設け組織間の抗争も視野に入れ慎重に捜査を進めているという。この関連で。逮捕された30名の内1名が奇妙な格好をしていたとは報道されなかった。解せぬ。


 最近のニュースは俺がらみのニュースが多い。そう考えると、やはりこの国の平和を実感する。いや、俺がいなければもっと平和だったのか?



 その日は、森本興業からのスタミナポーション(弱)100本の注文があっただけで、簡単に中川が処理した。他には何事もなく1日が終わった。



 翌日。週が明け、学校生活が再開した。


 俺と中川が二人で良く出歩いていることが学校で噂になっているらしい。何と言ってもまだ高校生、一緒に男女が歩いていただけでもそういった噂が立つとはほほえましい限りだ。特に中川の場合才色兼備ときている。俺は別に気にならないが、中川がそうとは限らない。悪いことをしたかもしれんな。


 中川の場合、学校で口をきくのも、俺と村田くらいみたいなのでそういった噂自体耳に入っていない可能性もある。妙な噂を立てたくらいでこの学校の生徒をどうこうするつもりはないので放っておくことにしよう。知らない振りをしていればそのうち誰も気にしなくなるだろう。



 このところ、中川は、自分の弁当はちゃんと持ってくるのだが、俺と村田と一緒に食堂で食事するようになった。俺はいつも豚汁を、稲荷好きの村田はいつものセット、中川は俺と同じように汁物とサラダなんかを頼んでいる。


 話はかわるが、これまで何度か学校で小テストが繰り返され、その都度俺は満点を取っている。


 小テストの方式は、基本的に先生が黒板に問題を書き、その答えを配られたシートに記入するというもので、時間が来ると書き終わったシートを隣の席の者のシートと交換し、先生が黒板に書き出す答えで採点するというものだ。採点し終わった答案は後ろの方から前に手渡されて最後に先生の元に集まるという訳だ。


 他の連中の点数に興味はないのだが、クラスの連中は、俺がいつも満点を取っていることを認識しているようだ。


村田も、どこで聞いてきたのか、


「また霧谷くん満点だったみたいじゃないか。というか、満点以外取ったことないんじゃないか?」


「そうだな、気にしたことはないけど、そうかもしれないな」


 今日も英語の小テストがあった。単語の書き取りテストで、俺の答案はいつものように中川に採点され、俺が中川の採点をすることになる。そういえば、あまり気にしていなかったが、中川も今までの小テストは満点だったような気がする。ちゃんと記憶をたどって確認したところ、やはり俺は中川の採点で満点以外を付けたことがない。やはり、新入生代表を務めただけのことはあったんだ。


「霧谷くん。あなた授業中真面目に黒板の方を向いていることもないし、教科書だって机の上には出しているだけで閉じたままよね。そのくせ先生にあてられてもちゃんと答えられるし、いったいどうなってるの? まさかこれも、あなたの不思議なアレ(・・)のおかげ?」


アレ(・・)ではないな。アレとは違って、俺は必要なことは意識しなくても勝手に覚えるし、それが、勝手に関連付けられていくんだ。教科書なんかもその気になってぱらぱらめくるだけで全部暗記できてしまう。教科書は貰ったその日に全部覚えてしまったし、授業中先生の言った言葉や書かれた板書も全て関連付けて覚えてる。だから俺は教科書を見なくても言われた場所をすらすら読めるし、質問にも答えられるんだ」


「なんだか、ズルいわ」


「ズルいかどうかは分からないが、できてしまうものはしょうがないだろ」


「やっぱり、ズルいと思うわ。私は数学が苦手なのだけど、わからないところがあったときは私に教えてくれない?」


「それくらいはかまわないが、中川が数学苦手とは知らなかった」


「それじゃあ、約束したわよ」


「ああ、いいよ」


 どう考えても、中川が数学が苦手だとは思えないが苦手だったようだ。



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