24.競馬2
第1レースの出走馬は全部で9頭。このレースは芝の1400メートルというそうだ。今日最初のレースのせいか、スタンドもまだ空きがあり、それほど盛り上がってはいない。
俺の1点買いの2番の馬は、黒色の毛並みに見事なまでのつやのある馬であおかげというらしい。おっちゃんの4番の馬の毛色は茶色なので栗毛だ。
おっちゃんの解説を聞いているうちにレースの時間になったようで、出走馬の紹介がアナウンスされている。馬をゲートまで引いてきた人たちが、ゲートの下の方の隙間から退去していく。
すぐに、ゲートが開き競争馬が一斉に走り始めた。
スタートからの短めの直線では9頭が横に広がりながらもほぼ団子状態でそのままコーナーへ走りこんでいった。コーナーを周りながら少しずつ集団が内側に寄って密集してきたがまだ集団から抜け出した馬はいない。
俺は、すでにおまじないを唱えている。2番の馬には軽く『スタミナ』を掛けて消耗を極力抑え、ほかの馬には、軽く『ファティーグ』を掛けある程度消耗させてやった。これで、自然な形で2番の馬が一着になるだろう。それでも終盤競るようなら、『ヘイスト』と『スロー』を使い分ければ完璧なはずだ。おっちゃんの推す4番の馬は出来たら二着になるよう調整してやるか。
9頭の馬がコーナーを回って直線コースに入って来た。正面の大スクリーンに映る3着までの番号もここにきてめまぐるしく変わり始めた。
ドドドドー。
ゴールを目指し爆走してくる競走馬たち。ジョッキーも中腰になって前傾姿勢を取り鐙から半立ちになっている。結構な迫力だ。前を走る馬をかわそうとしてか、さらに集団が左右にばらけてきた。
いまのところ、先頭はおっちゃんの買った4番の青帽子。俺の買った2番は4、5着当たりをつけている。レースはここからだ。
ドドドドー。馬が芝を踏みつける音がさらに大きくなる。
残り直線300メートル。徐々に上位陣が失速し始めた。その中を2番の黒帽子がするすると抜け出し、残り150メートルでトップに立った。
2番の馬はそのまま逃げ切り結局二着以下に大差をつけて一着でゴール。
おっちゃんの4番は2番に見とれていた俺の『ヘイスト』が間に合わず惜しくも三着でゴールした。俺の50万は300万ほどに増えたわけだが、おっちゃんの10万円分の馬券は紙屑になってしまった。スタンドでの歓声と吐息の中紙吹雪が舞うというのは本当だったようだ。
次のレースのため2人でパドックへ。おっちゃんは先に勝ち馬券を換金するよう俺に勧めたが、どうせ後のレースも負けるわけがないので、まとめて換金するとおっちゃんに言ったら苦笑いされた。気持ちは分かる。
「ビギナーズラックってあるもんなんだな」
このときはまだ、おっちゃんも俺が勝ったのがただの幸運だと思っているようだった。
これから後のレースはもはや単純作業。次のレースからは100万×4回の4レースを賭けて、俺はそこで本日の作業を終えることにした。平均オッズ7倍弱だったので、持ち金は3000万ほどに膨らんだ。
場内の少し離れた場所にあるという大口窓口までおっさんと二人で移動。
ここはスタンドと打って変わっておっちゃんの言う通り人気が少ない。
勝った馬券を受付のおばちゃんに渡したところ、受付番号札なるものを貰った。そのまましばらく待ってると、大きな紙袋を持っておばちゃんとは別の係りの人がやって来た。中を覗くと10センチほどの厚みのある1万円札のブロック3個、それとバラの万札などが入っていた。
「確認お願いします」
確かに3000万ちょっとの金が紙袋に入っていた。
おっちゃんに駄賃としてお札ブロックの紙のテープをちぎって、百万円の束を2つ渡してやった。
「わしに、くれるのか?」
「マージン期待しとけって言っただろ」
「すまんな」
「社長さん、別に気にしなくていいぞ。俺はここらへんで帰るわ。そのうちなんかあったらよろしく。まだ、競馬を続けるんならほどほどに。それじゃあ」
「ああ、こっちこそよろしく頼む。気を付けて帰れよ」
俺は競馬場でおっちゃんと別れて家へ帰った。これまでのレースで、おっちゃんは30万ほど負けたあと、俺の真似をして馬券を買うようになり、結局150万ほど勝ったようだ。俺のやった駄賃と合わせて350万。いい、小遣い稼ぎになったようで何よりである。
短編SF『我、奇襲ニ成功セリ』
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