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PLS  作者: 城弾
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第9話「Just Like Paradies」Part3

 一行は目的としていたホテルへとたどり着いた。

 海を前にした眺めのよい観光ホテルだ。それに喜ぶ面々。

 しかし部屋に案内されて愕然とした。

「あのぉ、こういうお部屋しかないんですか?」

 「引率」という形でついてきた以久子がおっとりとした柔らかい口調で従業員に問う。

「申し訳ありません。なにぶんシーズンですのでこれだけのお客様をご案内できるお部屋がここしかなくて」

 それは三十畳ほどの広さの大広間だった。ここに雑魚寝となるらしい。

 それ自体は良いとしても男女混合なのである。それはどうかと思われた。

「いいじゃない。修学旅行みたいで」

 真っ先に切れそうなまりあが平然としている。

 確かにこのホテルはまりあの父の経営でいわば「身内」。

 庇うのも理解できるが逆に言えば友人たちに対して恥をかかされたと叱責も出来た。

 もっともそんな行為が逆に「恥」と考えたのかもしれないが。

「お部屋がないんじゃ仕方ないわね。由美香。一緒に寝ましょうね」

「だからあんたは! そう言う誤解を招くような発言は避けてよね」

 美百合の発言に渋面の由美香。

「あら。いいじゃない。私たち仲良しなんだし。一緒にお風呂で体を洗ったりしたこともあったでしょ」

「く、栗原先輩と火野先輩がそういう仲……あうう。あたしって(美少女同士という)そっち方面もいける口だったんかにゃ?」

 美少年同士の「恋愛」を好むはずのいわゆる「腐女子」の恵子だが、それに女の子同士の妄想をさせるほどこの二人は仲がよかった。


 由美香と美百合は馬が合うらしくいつも一緒にいる。

 しかしかっこいい系の女子である由美香が男役。

 そして誰彼構わずふわりと抱き締める美百合はお姉さんキャラで女役。

 要するにそういう関係と揶揄されているのだ。

 もっとも美百合のは方は気にしてないどころか、むしろ悪戯でやたらに由美香に抱きついたりしているが。


 大半はこんな余裕ではない。

 全員が女性なら何も問題はないが男子が五人もいるのである。

 特にそれが思い人である詩穂理。なぎさ。美鈴は多数の女子もいるとはいえど一つの部屋で一緒に寝起きという事態に困惑していた。

「ねぇまりあ。何とかならない? あんただって男子と一緒じゃ困らない?」

 たまらずなぎさがまりあに詰め寄る。

「平気よ。着替えのタイミングを外せば別に」

 本当に平然としている。そして「ニヤリ」という感じの笑みに三人娘はさとった。

(わざとだ。こいつオーナーの娘と言うのを利用してこの大部屋にしたんだ)

(そうすれば水木君とも一緒の部屋。でも)

(美鈴たちも一緒なの忘れてない? 恥ずかしいよぉ)


 意外にもまりあに援軍が現れる。

「先輩。私たちは平気です。ね。お兄ちゃん」

 大樹に寄り添い腕を取る双葉。兄妹では確かに問題もあるまい。

「まぁあたしもそれならアニキは平気だけど」

 千尋も続く。こちらはブラコンではないので淡々としている。

 結局はどうしようもないのでそのまま受け入れた。


 ビーチへと移動。そして着替える。

 さすがに男子は早い。ほとんどがスポーティーなタイプである。

 優介だけはビキニタイプ。


 女子は人数も多く着替えに手間が掛かり時間も要した。

 その間に平らな胸を露出させているのにナンパされていたりする優介である。

 顔だけでなく華奢な体躯や白い肌が女性的に見えたのだ。

「ホモ」の優介はついていくかと思いきや、さすがに「本命」の恭兵たちの前では「尻軽」にはなれず断っていた。


「お待たせぇ」

 ピンクのビキニのまりあが優介に笑顔で手を振る。露骨にそれを無視する優介。

「ふん。水木君はあんたみたいなお子様体形に興味はないわよ」

 プロポーションではまりあより数段上の瑠美奈がそれを最大限に活かすべく黒いビキニである。

「あんたこそオデコがまぶしくて優介が直視できないわよ」

「人のオデコを鏡みたいに言うなぁ」

 千葉まで来ても相変わらずの二人である。

「あ、あの。喧嘩はやめてください。二人とも」

 おずおずと割って入った詩穂理。泳げない彼女だが一応は水に入るためにメガネを外してある。

 元々裸眼でもそんな極端に目が悪いわけではない。

 黒板の文字を見るのに苦労する程度である。

 それでもメガネ使用なのはその顔。

 とあるAV女優にそっくりなのを嫌い隠すために着用している。

 それが素顔。しかも水着。さらにセパレート。おまけに黒。白い肌を際立たせるコントラストであった。

「…………」 

 「大人っぽい顔」でまりあを。「大人っぽいスタイル」で瑠美奈を黙らせてしまった。

「意外だよね。詩穂理がビキニなんて」

「大胆だよね」

 なぎさは青いビキニ。普段の反動なのか脚を長く見せる布地の少ないもの。

 美鈴は赤いワンピース。胸元はリボン。腰はスカートと子供っぽいが恐ろしくしっくり来る。

「仕方ないんです。胸が極端にありすぎてワンピースだと下が余るんです。ビキニでも上下別のものですし。おまけに黒しかなかったし」

 泣きそうな表情で弁明する。

 実は買い物に同行した姉と妹に強引に押し切られた。

「もっと大胆に攻めないとあの鈍感な裕生では気がつかない」と。

 そのときはそんな気になったものの後悔する羽目に。

「大変ねぇ」

 これまたDカップの美百合。こちらは花柄のワンピースタイプ。

「いいじゃない。スタイルよくて」

 そういう由美香もハイレグタイプの紺のワンピースでスマートに見える。どことなく競泳用の印象。

「あたしはシホちゃんの気持ちわかるにゃ。胸がでかいと服の選択が狭くて。可愛いのがよかったのに」

 文句を言うのは里見恵子。オーソドックスなビキニである。さすがにしっぽや耳はつけていない。

 人前で恥ずかしいというのではなく、水中では邪魔だったのである。

 それでもビキニのガラが「トラジマ」なのはコスプレイヤーの「意地」(?)だった。


「わぁー。これが日本の海ですか?」

 黄色いビキニのアンナが感動したように言う。

「アンナ日本の海ははじめてなの?」

 性格どおりおとなしい紺色のワンピースは双葉。

「うん。初めてですヨ」

「海なんてどこも一緒よ」

 妙に醒めた一言は千尋。水着も黒いワンピースと地味。

 スポーツは得意なのに母を水難事故で亡くしたトラウマで泳げない彼女はそれほど熱心に水着を選ばなかった。

 それでもこの場に来たのは兄と詩穂理の後押しと、双葉やアンナと来たかったからである。


「はいはーい。みんな揃ったかしら?」

 教師そのものの号令は木上以久子。

 大人っぽいワンピースはもちろんだが、その色が白というのは驚かせた。

 昨今では透けない素材があるとはいえどである。

 普段は何処か子供っぽいと思わせる彼女も、ここではさすがの『大人の女』であった。


 メイドたちも水着である。さすがにビーチでメイド服はいくらなんでも目立ちすぎであったそれゆえに。

 三人ともワンピース。もちろん主であるまりあより目立たないためである。


「優介。一緒に遊びましょう。その二人っきりで」

 赤くなって上目遣い。これだけならかなり可愛いまりあである。

 しかしそんな「色気」が通じないホモ少年。からかうように言う。

「一緒に男の子にナンパされに行くなら付き合ってやるよ。もっとも僕の方が男の子にもてるだろうけど」

「なんですってぇ?」

 いくら優介でも言われたくない言葉であった。

 まりあが走って詰め寄る。

「うひゃ。おっかねー」

 優介が逃げる。校内と同じであった。

「待ちなさいよ」

「やーだよー」

 ただここでは海という逃げ場があったのである。いきなり沖へと泳ぎだす二人。

 陸上に残された面々は呆然とするばかり。

「二人ともー。ちゃんと準備運動をしなくちゃだめよー」

 よく通る綺麗な声で呼びかける担任。言っているのは正論だがやや的外れなのは否めない。

「あたしらも競争する?」

 提案する由美香だが美百合にやんわりと断られた。

「由美香にかなうわけないじゃない」

 ちなみに美百合は泳げる。でも由美香の運動神経にはかなわない。


 そのころ、優介の双子の姉にしてまりあの親友である水木亜優は神奈川にいた。

 突発的に決めたまりあたちと違い部活の友人たちと六月中から立てていた計画であった。

 まりあたちの話が出たときは既に宿の手配もしてあり変更はできなかった。

(まりあのバカ。秀一さんも行くなら日程ずらしてくれたって)

 まりあの兄、秀一に思いを寄せる彼女は心中で恨み言をつぶやいていた。

「あゆ。どうしたの? ぼーっとして」

 呼びかけられて我に帰る。

「ううん。なんでもない。さぁ。泳ごう」

 無駄に元気で駆け出すボブカットの少女を唖然としてみている一同である。


 海水浴場にそぐわぬ空手着の少女たち。

 足を痛める危険性の少ない砂地をロードワークをしている。

(ん? あの金髪は1年の留学生?)

 長い髪を無造作に束ねた先頭の少女がここで逢う筈のない存在に目を取られる。

「主将?」

 突然立ち止まった「主将」に怪訝な表情をするほかの少女たち。

「ああ。すまん。ちょっと知り合いに似てて……む?」

 似ているだけなら通り過ぎたが、その少女たちに善からぬ輩が近づいていては見過ごせない。

 だがまだ何もしていないので手は出せない。取りあえずは様子見だった。


「はーい。そこの金髪の彼女。可愛いね」

 黒い肌のいかにもサーファーという感じの青年三人がが声をかけてきた。

「かわいい? ホントですか?」

 喜色満面のアンナ。どうやら日本人でないゆえか言葉の裏を考えなかったらしい。

 そのままに受け止めて喜んでいた。

 まさしく子供そのものの喜び方をする。

 だが千尋と双葉は「ナンパ」を知っている。

「どうだい。お互い三人だし」

「一組ずつ分かれてもいいしね」

 勝手なことを言う三人に冷たい視線を浴びせる千尋。双葉は怯えて千尋の陰にいる。

「いこ」

 無視して行こうとする千尋。双葉は知らない男に怯えているので千尋が何とかするしかない。

「待てよおい。すかしてんじゃねぇぞ」

 今度は脅しに掛かった。千尋の腕を掴む。

「離してよ」

 気の強い千尋は怯まない。

「チヒロに何するですか!?」

 さすがのアンナも暴力となると態度が変わる。

「やめてください」

 精一杯の勇気で双葉が抗議する。

「うるせえ!」

 華奢な少女と屈強な男。普通なら結末は考えるまでもないがここには助けがいる。

「か・ざ・み・キィィィィッッックゥゥゥ」

 遠くにいたはずの裕生がその俊足を飛ばして駆けつけた。

 それをそのまま助走としてジャンプしてのキックをサーファーの胸板に見舞った。

「ぐわぁっ」

 胸板という高い位置を蹴られたため真後ろに吹っ飛ばざるを得なくなるナンパ男。

 砂を盛大に巻き上げて倒れる。

「へっ。ご丁寧に爆発シーンの再現か。案外ノリがいいじゃねぇか」

 突然現れた赤毛の男。その乱入に戸惑う青年たち。

「お、お前何者だよ?」

 間抜けな質問をしてしまう。

 裕生は待っていたとばかしに手をパンパンと払いながら直立の体勢になる。そして青年に向かって

「通りすがりのコイツのアニキだ。覚えとけ」と言い放つ。

 一気にそがれる緊迫感。

「ふ、ふざけんじゃねぇぞ」

 どこに隠し持っていたのかナイフを振り上げる男。しかしそのナイフは飛んできた「立て札」によって叩き落された。

「ぎゃあーっっ」

 悲鳴を上げて蹲る。そんなものが腕に当たればもっともな反応だ。

「あははは。こんな芸当のできる奴は」

 さすがの裕生も呆れて乾いた笑い声。

 まず双葉。そしてはるか彼方にいるその兄。大樹を見るとなげ終わった後の体勢だ。

 裕生はそこから来たのだがその場にあったと記憶している遊泳禁止の立て札がここに飛んできていた。

「すごいです。フタバのお兄さんもチヒロのお兄さんも」

 ヒーロー二人に興奮気味のアンナ。双葉は双葉で「お兄ちゃんが守ってくれた」とトリップ中。

 千尋は一人で乾いた笑いをあげていた。

「ひゃああっっっ」

 残る一人はたまらず逃げ出す。その目前に空手着の少女。

「少女に乱暴だけではなく仲間を見捨てるとはとことん腐りきった奴だな」

 言うだけ言うとその少女は逃げた男の鳩尾に強烈な一撃。

「う…」

 白目を剥いて倒れると同時に周囲から絶賛の声が。

 どうやら地元でも嫌われていた三人組らしい。

 この様子では警察沙汰になっても口裏を合わせてくれるだろう。

 それはいい。裕生と三人の少女は助けに入った空手着の少女に向き直る。

「お前、何でこんなところにいるんだよ。芦谷?」

「合宿だよ。あんたたちこそここで海水浴か。奇遇だな」

 少女は蒼空学園女子空手部の主将。芦谷あすかだった。

 いつものようにクールに。

 むしろ素っ気無いという表現が似合う淡々とした態度で対応する。

「へえ。だったら夜にでも遊びに来ないか?」

「遠慮する。夜も鍛錬だ。そのための合宿なのだからな。そうでなくてもこの細腕で男に勝とうと思うと倍の鍛錬がいる。遊んでなどいられない」

「おいおい。たまには休まないと筋肉がいかれるぜ。か弱い女なんだし」

 体育会系の裕生だけにその懸念はもっともだった。しかしあすかは少しむっとしたらしい。

「誰がか弱い」

 最後までいえなかった。猛烈な勢いで大樹が駆け寄ってきたのだ。

 最愛の妹をがっしりと抱き締める。赤くなる双葉。

「怪我はないか?」

「うん。大丈夫。お兄ちゃんが助けてくれたから」

 相変わらず危ない兄妹である。

「ふ。大地。あんたがそんなだからお前の妹は自分の危機すら乗り切れないのだぞ」

 大樹は無表情。しかし僅かに力のこもる言葉を返す。

「女を守るのは男の役目だ」

 正論だった。

「それじゃ女に生まれたらずっと誰かに守ってもらわないといけないのか?」

 ややけんか腰になるあすか。はらはらして見守っている空手部員たち。

(男とか女とかに何か思うところがあるのかな? 芦谷先輩)

 千尋がそんなことを思う。助け舟は意外な形でやってきた。


「あれー? 芦谷。あんたの家。夏はこっちで営業するの?」

 おっとり刀で駆けつけてきた中になぎさがいた。

 その発言に茹蛸のように赤くなるあすか。怒りではなく羞恥という印象。

「主将の家?」

「そう言えば行ったことないよね」

「お店をやっているんですか?」

 部員たちがざわめく。今度は脂汗のあすか。なぎさをひとにらみ。そして部員たちにもにらみを。

 一瞬にして無駄口をやめる少女たち。

「い、行くぞ。ロードワークの途中だ」

「は、はい」

 部員たちは行ってしまった。

(あ。そーか。誰も知らないんだっけ? あいつの家)

 失言をなぎさが悟ったころには空手部は影も形も見えなくなっていた。


 波打ち際に戻る途中で裕生が見たもの。

 それは砂浜にすっぽりとお尻がはまって抜け出せなくなっていた詩穂理の姿だった。

 美鈴が懸命に抜き出そうとするが何しろ非力で持ち上がらない。

「何してんだ?」

「……助けに行こうとしたら転んで」

「スキー場にはよくある話だがな」

 軽く言うと裕生は屈む。

「ちょっとくすぐったいぞ」

「え?」

 手を貸すのかと思ったらなんとそのまま砂の中から詩穂理を抱き上げた。

 当然ながら「お姫さま抱っこ」になる。今まで恥じらいで赤くなっていたが、今は別の恥じらいで赤くなる。

「あ、ありがとう。立てるわ。もういいわ。おろして」

 知り合いを含めた不特定多数の前でこんな気障な格好。恥ずかしくてたまらない。

「また転んだらたまらんからな。ついでだからこのまま海まで運んでやるよ」

 どうやらヒーロー役としての芝居の練習も兼ねているらしく、芝居がかってゆっくりと歩く。

 詩穂理はさしずめ助け出されたヒロイン。

 しかし役者ならいざ知らず普段は本に囲まれて生活しているような少女にしたらこれはたまらない。

 反面裕生に抱きかかえられているのが至福の時間で自分から下りる気にもなれない。

 けれど視線が恥ずかしくて無意識で裕生の胸板に顔をうずめる形に。

 誰がどう見ても恋人同士にしか見えない。


「わぁーっ」

 目を輝かせていたのがアンナだ。国の風習でこのスタイルは結婚式を思わせる。

「いいないいな。シホリ先輩。私もやってもらいたいな」

「アンナ。いくらあんたでも邪魔はさせないからね」

 千尋としては裕生というより詩穂理の応援で言う。


 羨んでいたのはアンナだけではない。美鈴もだ。

(いいなぁ。シホちゃん。美鈴も大ちゃんにああやってもらいたいな…)

 この場にいる最大級の男と最小級の女である。体格差は凄まじい。

「美鈴」

 願っていたら大樹から手を差し伸べてきた。

(ウソ。これは夢?)

 現実だった。反対側には双葉が手をつないでいたのだから。

「えへへ。二人でお兄ちゃんに泳ぎを教わろ」

「う、うん(それでもいいか)」

 3人仲良く手をつないで海へと。


 このときばかしは自分のスポーツ万能が恨めしいなぎさだった。

 恭兵にコーチしてもらう口実がない。

 反対に恭兵にコーチしようにも彼も泳げる。

 しかも当の恭兵は現地の女の子をナンパしたところを姉にとがめられて砂に埋められていたところだ。

 これでは二人で過ごすところではない。

 肩を落としていた。そこに声をかける大人の女。

「綾瀬さん。一緒に泳がない?」

「先生?」

 髪を上げることはよくあったが、意外に珍しい素顔の以久子である。

「そうですね。泳ぎましょうか。でも先生。あたし自慢じゃないけど速いですよ」

「いいわねぇ。私、速くはないのよね。海には三時間くらいいられるんだけど」

「そんなに?」

「だって先生。前世はまんぼうだもん」

「はぁ?」

 呆気にとられていたら以久子が海に。慌てて追うなぎさ。


 逃げる優介。追うまりあ。

 誰も二人に付き合いきれない。

 意外な形で「二人っきり」という願いのかなったまりあだが、それに気がつく余裕がなかった。

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