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洗濯機と冷蔵庫


 すぐに入居できるとのことで、冬休みを良い事に、翌日には必要な物を買いに行くことになった。

 今回は誠さんと二人だ。

 さすがに今回は母親たちは付き添わず、お金だけを渡して「楽しんでらっしゃい」と送り出してくれた。


 確かに楽しみだけれど、不安がないわけでもない。

 誠さんと二人で決めるわけなのだが、選ぶときに意見が違ったらどうしたらいいか……。

 そこは私が引くべきなのだろうか。

 心の片隅で、そんな悩みを抱えていた。


「まずは洗濯機と冷蔵庫を買いに行きましょうか」

「そうですね」


 私は誠さんと二人、家電量販店へ行くことにした。

 広い店内は、ボーナスの出た家族や、お年玉を持った子供達で賑わっていた。

 とは言え、用があるのは冷蔵庫と洗濯機で、そのあたりはそれほど人も多くない。

 私達はまず冷蔵庫から見ることにした。


「沢山ありますね」

「そうですね。でも、けっこう絞れますよ」

「そうなんですか?」

「はい。まずは冷蔵庫の設置場所から大きさの制限があります」

「あっ、確かに! でも、何センチか……」

「調べてあります」

「……さすがです」

「以前、家のを買い換えた時の経験があるので」


 誠さんは照れたように笑いながら、高さや奥行きが書かれた紙を取り出した。


「自炊が多いにしても、二人ですからね。あまり大きくなくていいと思います」

「そうですね」


 そううなずきながら、二人、のところで何となく頬が熱くなる。

 ちらっと見たら、誠さんもどことなく頬が赤い。


 一緒だ。


 私は思わず笑ってしまった。



 誠さんが大きさや機能や値段で候補を絞ってくれる。

 私はその中から、色や見た目で選ぶことにした。

 思っていた以上にスムーズに決まって、ほっとした。

 違和感がないし、誠さんが嬉しそうに機能を説明してくれるのが楽しかった。

 本当にこの人は調べることが好きだし、それを楽しんでいるのがよく解る。

 私はあの部屋にこの冷蔵庫が置かれた様子を想像して、何となくにやけてしまった。


 うん、悪くない。


 二人で暮らす、という不安が少しずつ取れていくのを感じた。



 次は洗濯機だ。


「洗濯機は少し悩みました」

「何故ですか?」

「うちは洗濯機と乾燥機が別なんです」

「そうでしたね。私のところもです」

「今は一体型が多くて、どちらが良いかと」

「あっ、なるほど」


 確かに、今はドラム式の一体型洗濯機が多い。

 しかし、それの何が問題なのだろうか?


「乾燥機を回している間に洗濯機を使うこともできるし、やっぱり乾燥機だけの方が能力もしっかりしています」

「そうなんですか」

「使ってみたわけではないのですが、調べるとそういう声が多いようです」

「じゃあ、別にしますか?」

「でもスペースの関係もあるので……一体型を使ってみましょうか」


 確かに一体型は見た目も良くて、魅力的。

 私も誠さんの意見に同意して、ドラム式の洗濯機を購入することにした。

 各社にいくつかの特徴はあるものの、冷蔵庫同様それほど悩むこと無く決めることができた。


 店の人にお願いしたところ、明後日には配達してくれるとのこと。

 この調子だと冬休みの間に引越しができてしまいそうだ。


 実感と共に、何となく緊張感が高まる。

 本当に二人で暮らすんだ……。



 ふたりともテレビはあまり見ないので、テレビは買わないことにした。

 炊飯器は一世代前のお値打ちな物を選んだ。

 そうすると次に必要なのは……。


「……布団、ですね」

「はい」


 布団、というだけで恥ずかしくなるのは、別に変な想像をしているからでは無い! ……と言いたい。

 言いたいけど……否定もできない。

 やっぱり、意識してしまう。

 だって間取りを考えたら、同じ部屋に布団を並べて眠ることになりそうだし。


 ちらっと横を見ると、誠さんもやっぱり顔を真っ赤にしている。

 誠さんも意識しているに違いない。


 二人の間に緊張感が漂っていて、私としてはこの空気を壊したくなる。


 ここはひとつ、甘えてみるか。


 私は誠さんの手を取って、嬉しそうにこう言ってみた。


「誠さん、一緒に並んで寝ましょうね!」


「あっ、えっ……はい……」


 うわぁ、耳まで真っ赤になった。

 握った手に、汗までかいている。


 かっ、可愛い……。


 私は思わず腕に絡みついてしまった。

 誠さんはますます恥ずかしそうにしていたが、私は嬉しくてちょっと跳ねて歩きたくなる気持ちを抑えて、一緒に並んで歩いた。


 もう不安はゼロ。


 楽しみで一杯だ。



 誠さん、これからも宜しくね!




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