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23.気分転換(2)


「うおお……すっげぇ……!」


敷地内に入った俺は感嘆の声をあげていた。外からでは見え難かったアトラクションや建物があちこちに並んでおり、まだ開園したばかりだと言うのにもうかなりの行列ができている場所もある。


「凄いね高橋君!早く行かないと回りきれなくなっちゃうよー!」


四条もいつもより数段テンションが上がっている様子。ソワソワしてるのが子犬みたいで癒されるな。


「そうだぞ晴樹!ファストパスも取ってるし、時間は有効に使おうぜ。目指せ全アトラクション制覇!」


「いや〜流石に無理っしょ!どんだけ数あると思ってんのよ」


俺もそう思う……まぁ意気込みは認めるが。


「そのくらいの気持ちで回った方が楽しいよきっと!行こ、高橋君!」


四条に引っ張られる様にして最初のアトラクションに向かう。まずは……ジェットコースターだ!……と思ったが、ファストパスの時間より少し早かったので、雑談をして時間を潰す事にした。


回る順番がどうのとか、お昼はどんなものが良いかなんて話をしていると時間になったので、係の人に声をかけて座席に乗り込む。


………さっきの人達、めっちゃマジな感じの悲鳴あげてたけどそんなに凄いのかな…ちょっとビビる。


「うぉ、動き出した…いきなりだな…えっ?」


座ってるのと逆方向に動き出したぞこのジェットコースター!?そういう方式のやつかよこれ!


斜め下を向く形で逆向きにゆっくりとレールを登って行く。そして……


「「うわぁぁぁぁぁぁ!」」

「「きゃーーーっ!」」


女子陣が可愛らしい悲鳴をあげる中、本気で絶叫する俺。横で光も同じ事になってる。てか、こいつも絶叫系苦手だったっぽい。何でいきなりこれ選んだんだよ!


逆向きに進むに加えて、2回転したりレールが捻れてぐるぐる回ったりと多彩な動きを見せるジェットコースター。終わる頃には叫び疲れてぐったりしている俺と光。対して女子陣は『楽しかったーっ!ねぇ、後でもう一回乗らない!?』なんて言ってる。勘弁してください。


「なんで絶叫系苦手なのに初っ端がこれなんだよ光ぅぅ………!」


「苦手な物を放置しておくのはポリシーに反する……!後、怖がる女子に対して平気な俺らって構図でカッコ付けられるんじゃねーかと思った」


考えが浅すぎる!俺ら両方撃沈してるじゃねーか!


「ただダサい所見せただけになったが?」


「言うな。でも、意外と評価は悪くないっぽいぞ。ほれ」


顎で四条達を指す光。向こうも何やら2人で話をしてるらしい。


『高橋君達って、絶叫系苦手なんだ‥…!意外な弱点だね…!』


『めちゃくちゃ速い打球だって難なく処理するのに、こんなのがダメなんだね。…ちょっと可愛いかも』


可愛いって言われてんぞ光。男としては複雑だが嬉しそうだしそれでもいいや。


その後は恐竜の世界を冒険すると言う設定のアトラクションや、殺人鬼の居る館からの脱出を目指す体感型ゲーム等人気の高い所から順番に回った。どれも最新型なだけあって映像とは思えない程のリアリティがあり、迫力満点だ。‥‥館はリアル過ぎて怖かったが。


そして、今は少し遅めのお昼ご飯を食べに来ている。施設内のお店なので少し割高だが、そんなことを気にするのは無粋か。アトラクションや作品とのコラボメニューも多く、その場の雰囲気や作品の世界に入ったような気分を楽しめるのが醍醐味なのだろうな。…男子高校生としては、量が物足りなく感じてしまうが。


「私達、少し話したいことがあるから、席外すね。すぐ戻ってくるから」


そう言って清水が四条を連れて離れて行った。まぁ、人に聞かれたくない女の子同士の話なんかもあるんだろう。


「丁度良い、晴樹。俺もお前と話したい事があったんだ」


光が真剣な顔で話しかけてくる。


「なんだよ、改まって」


「俺な、沙織に告白しようと思ってるんだ」


「ブッ!本気かお前!……もしかしてそっちが今日の本命だったのか!?」


親友の恋路だ、応援するに吝かではないが……心配してくれたのが嘘だったのかと思うと、少し悲しい。


「馬鹿!んなわけねえだろ!そりゃ計画にかこつけて沙織を誘った部分はあるけどな、本題はお前を励ます事だ」


「悪い。ちょっと悲観的になってるな俺」


「謝る必要はねえよ。元々相談しようと思ってた事が、計画と重なっただけだからな。それより、お前はどうなんだ?四条さんとは。あんな良い子、中々いねぇぞ?」


「今は、四条とどうってのは考えられないかな。奴等とのケジメを付けないと、先の事は………」


「そうか……だが、真剣に向き合ってやれよ?あんまり蔑ろにはするなよ」


「分かってる。………ってか、流石に四条達遅くないか?」


もう結構経つのに戻ってこない。少し心配だ、様子を見に行く事にした。すると……


『いーじゃん、俺らと回ろうよ。』


『困ります…!友達と来てるんです』


『そんなやつより俺らと遊んだ方がきっと楽しいって。ほら』


『ちょっと、嫌って言ってるでしょ!?どっか行ってよ!』


2人が、柄の悪そうな連中に絡まれていた。何してくれてんの?ブッ飛ばすぞコラ。助けに行くぞ!


「すみませ〜ん、この子達先約があるんで、遠慮してもらえます?」「あっ………高橋君…」


そう言って有無を言わせず四条の肩を抱き寄せる。すまん、不本意だろうが少し我慢してくれ。


「おい、俺達のツレにちょっかいかけてんじゃねぇぞ?あぁ?」


光も鬼の形相で清水を庇っているが、どっちが絡んでるのか分からんなこれ。俺達に睨まれた彼等は慌てて去っていった。それにしても、不注意で四条達に嫌な目に合わせちゃって申し訳なかったな、もっと気を付けよう。


「っと、ごめん四条。大丈夫だった?」


「…高橋君………かっこいい……」


ぽーっとした表情で何か呟いてる。ショック受けてるのかな……。


「おい、沙織!大丈夫だったか!?」


「あ、うん。ちょっとしつこくて困ってたけど大丈夫。助けてくれてありがと。ちょっと格好良かったよ」


向こうは向こうでいい感じになってるな。変なこととかされてなくて本当によかった。


「さぁ、気を取り直して次に行こうか。あんなの気にして楽しめないなんて勿体ないし!」


「良いこと言うじゃねーか晴樹!ほら行くぞ沙織!」


「はいはい、わかったわよ。瑠璃〜?いつまでも高橋に見惚れてないで次行くよー?」


「ちょちょちょっと沙織ちゃん!変な事言わないでよっ………!?」


こうして俺達は様々なアトラクションを楽しんだ後、複合型運動施設に軽く寄ってから帰ることにした。


――――――――――――――――――――――――



「光、当然ミットは持ってきてるよな?ちょっと受けて欲しい球があるんだ」


「何だ?まさか変化球でも増やしたのか?益々対戦のハードルが上がるじゃねーか」


「まぁ、そんなとこだ。まだ完成してないからな、実際受けてもらってアドバイスが欲しい」


「俺は構わねーけど…良いのか?一応敵になるやつに手の内教えちまって」


「分かってても打てない球を完成させてやるさ」


「言ったな。打ち崩されて泣くんじゃねぇぞ」


そう言ってミットを構える光。まずは直球からだ。


パァン!と、小気味良い音を立ててボールが収まる。何球か立て続けに投げて、感触を確かめる。

そして、本命のシュートを試す。握りのみを変えて思い切り腕を振った新球は………手元でグイッと曲がり、右打者の胸元辺りを深く抉る形でミットに吸い込まれた。イイ感じに行ったと思うが……どうだ?…難しい顔で光が考えこむ。ダメか………!?


「お前………これは…!おい、もう一球来い!」


同じ様に投げ込んで見せる。


「なんて球投げんだよ、お前は…!球速140以上出てるし、何より直前で曲がり始めるから直球と判別が付きにくい。これ胸元にズバッと投げ込まれて打ち返せる打者なんてそう居ねえぞ!」


かーっ!また手強くなりやがって!と光が頭を抱えてる。どうやら、あの光を唸らせるだけの可能性がある球だったらしい。ただ………


「今の球さ、偶然イイところに2連続で決まっただけで、実際まだコントロールしきれてないんだよね」


その次に投げたボールは内角を更に外れ、完全に死球になるとんでもない所に行った。


「これが確実にコースに投げ込めるなら、正直さっぱり打ち返す光景が見えん。狙いを絞って1本出るかどうか、そんなレベル」


「武器になるって知れて良かった。ありがとう光」


よし、暫くこの球に集中して、新たな武器として磨き上げよう!



(やべー……!見栄張って狙えば打てるかもとか言ったけどメチャクチャにきついぞこれは…。直球も150km出てる感じだし、まだスライダーとチェンジアップもあるんだろ?これで制球力あったら手がつけらんねーよ)


その裏で光は、親友の成長に戦慄を覚えていたとかいないとか。



――――――――――――――――――――――――



そして駅に戻ってきた俺たちは、それぞれの帰路につく。帰り際、光に声をかけられる。


「あんだけの球投げれたら、絶対エース取れる。登ってこいよ晴樹。秋……はまだ分からないから、来年の夏。絶対お前を打って甲子園に行ってやる」


「あぁ、絶対エースになって、お前らを完封して俺は甲子園に行く。途中でコケたりすんじゃねーぞ!」


そう誓い合って握手を交わした。さぁ、週明けから練習も始まる。まずは試合に出てアピールすることから始めないとな!



『大分元気になってきたみたいだね、高橋も。色々手を回した甲斐があったよ。男同士の友情ってやつ?なんか良いねそーゆーのも。瑠璃も負けてらんないよ〜?高橋を取られない様に頑張らないとね?』


『もうっ、沙織ちゃん!まだそーゆータイミングじゃないんだってば!沙織ちゃんこそ、真中くんとはどうなの!?』


『ななな何言ってんの瑠璃!今私のことはいいでしょっ!?』


『よくな〜い!私の事からかったんだから、自分もガンガン攻めなきゃ!誰かに先を越されちゃうよ!?』


向こう側では彼等を巡って所謂ガールズトーク的な会話が繰り広げられているのだが、知る由もない。




いつもより長くなってしまいました。読み難かったらごめんなさい。

次回くらいからレギュラーを目指して〜と、リベンジ&新しい関係へみたいな方向性にして行けたらと思っています。これからもよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] 美香との別れ方がやはりモヤモヤとして内容が入りづらいです 意図的にそう展開されたと思いますが…早くの解決を心待ちにしてます
[良い点] 主人公が多分ぶっ壊れ能力を持っているとこ。瑠璃ちゃんが可愛いとこ! 絶対この2人をくっ付けてくださいね!!!!!笑 あと、結構感情移入できる作品です!! [気になる点] 今まで読んで…
[良い点] 今のところは予定通り(?)、元彼女を登場させてない点。(今回の施設とかで、偶然見かけるとかの場面があったりするのかとも思いましたが、その点はぶれずに!) [一言] いよいよ、打倒天城に向け…
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