21.電話の裏事情
『やべぇ、どうしよう。何だよこの複雑な状況。どうしてこんな事になってやがる』
俺こと真中光は自分の部屋で頭を抱えて唸っている。それもこれも天城とか言うクソ野郎のせいだ。
中学時代に相棒で親友だった高橋晴樹と本気の対戦をしてみたく、星道高校に通う事に決めたまでは良かった。が……そこにあいつがライバル視している天城隼人がいて、思っていた以上の最低な奴だったのは予想外すぎた。
このままでは、何のためにわざわざあいつと別の高校を選んだのか分からねえ。何とかしてやんねーと………マジで数刻前の自分を殴りたい気分だ。
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俺は、聞きたいこと…と言うかアドバイスを求めるべく久し振りに晴樹に連絡をする事にした。が……あの野郎、電話に出やがらねえ!さてはまた時間を忘れて練習に熱中してんな……?
数時間後にようやく繋がった。どう話を切り出そうか迷った俺は軽い感じの近況報告の体で話を振ったんだが………最悪だったと言えるだろう。
『俺さ……美香と別れようと思う』
「はぁっ!?」
驚いてもの凄い声が出た。え、何?俺さっき開幕最近彼女とはどうだ?ラブラブか?とか言って茶化しちゃったんだが。最悪のタイミングで特大級の地雷踏んだんじゃねえの俺?あいつに刺されたりしないよな?
あいつ、大して知りもしない奴相手でも優しいんだが、見限った相手と言うか……そう言う相手に対して凄く冷たく、無関心になる事がある。話し方から察するに、長年親しい間柄だった美香ちゃんに対してはまだ割り切れてない感じだったが………俺達、親友だよな!?切り捨てたりしないよな!?さっきのは煽ったわけじゃねぇぞ!!
「にしても、天城か……」
あいつが、色んな女に手を出す奴だって噂は知っていた。だが普段はそんな素振りは見せなかったし、てっきりモテない男の僻みかと思っていたが……噂より酷えじゃねえか、ふざけんなよ畜生。
ここまで事が進んでしまって、あいつがそれを知ってしまった。もう元通りにはならないだろう…俺が近くに居ればもっと早く気付いて取り持ってやれたかもしれないのに……くそっ!つまんねぇプライドで別の高校選ぶんじゃなかったなぁ……。
表面上は前向きに振る舞ってるように見えるが、なんせ優しすぎる奴だ。このまま放って置いたら、いつか潰れてしまう。そんな気がしてならない。
新しい目標でも、女でも何でも良い。あいつを支えるに足る何かが必要だ。
よし、ここは俺が一肌脱ぐしかない!試合を思い通りにコントロールして勝利に導く司令塔の実力の見せ所だ!
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何て意気込んで晴樹を誘ったは良いが…ダメだ。何も思いつかねえ。女心なんか分からねえし、そもそも引き合わせられるような知り合いが居ない。振ったけどせめて友達に……!って知り合いならいるがその相手に別の男紹介するとか外道も良い所だ。
打倒天城に向かわせるのは有りだが、それだけでは弱い。その先が続かない可能性があるのと万が一のリスクが大きすぎる。やはり、そう言う話は女に聞くしかねえ。沙織に電話してみるか……。
『もしもし、光?久し振りだね、どったの?』
「沙織か?久し振りだな。ちょっと相談したい事があってな」
俺は沙織に細部を伏せて話をし、何か良い案がないか尋ねてみた。
『あの2人がそんな事になってたなんてねぇ……そう言う事なら、1人心当たりがあるよ』
「ちょい待てや。あの2人なんて俺は一言も言ってねえぞ」
『あのね、光が率先してそんな気を使うのなんて、彼等相手ぐらいしかないでしょー?丸分かりよ』
そんなに分かりやすいか、俺………。すまん晴樹、秒でバレた。お前の為に動くから許せ。
「まぁ、それは良い。それで、心当たりってのは?まさか、お前………!」
嘘だろ?もしかして俺1人負けの可能性?
『違う違う、何変な勘違いしてんの!確かに良い奴だけどね、高橋も。ずっと高橋の事想ってる子がいんのよ。』
「へぇ、どんな子なんだ?俺の知ってる子か?」
『アンタ、変なこと考えてないよね?……四条瑠璃って子よ。高橋に助けてもらって、ずっと感謝してたんだって』
四条………いじめ問題で転校した地味な子だったか?
『あの子、高橋に胸を張れるようにって努力して、凄く可愛くなったの。少しくらい報われても、良いんじゃないかなって』
「確かに、それなら任せられるかもな」
『2人を引き合わせるのは私に任せてよ。光は、遊びに行く計画でも立ててくれる?』
「おう、任せろ。その子もいきなりじゃ不安になるだろうし、お前も来てくれるか?4人いた方が自然にペア分け出来るしな』
『オッケー。んじゃ、とりあえずそんな感じで。彼女、凄く一生懸命だから。きっと上手くやってくれるよ』
よしよし、上手い感じに計画が立ったな。自然にアイツを誘うこともできた。
にしても、何でこんなことになったかなぁ。ただ、幼馴染みに告白したいから、先輩カップルとして話を聞かせてくれって言いたかっただけなのに………。
光sideの裏話的な感じです。




