番外SS 何でもない夏の日
お久しぶりです
「暑いねぇ……」
ある夏の日に、リビングのソファでアンジェが溶けそうになっていた。
「暑いなぁ……」
ここしばらく続いている暑さが堪えているところへ、今日はこの夏一番かと言うほどの暑さだ。
アンジェでなくても溶けそうなのだから、身体の弱い彼女が調子を崩すのも無理はない。
陽の当たる場所は避けて涼しいところに居ても暑いから、さすがに今日はアンジェに引っ付かずに過ごしていたのに。
「セトスさま〜?」
「どうした?」
「あついの。こっち来て?」
最近覚えた手招きをして呼ぶのが可愛くて仕方なくて、髪を撫でながら隣に座る。
「近くに居たら暑くないかい?」
「んー、あつい、かも?」
「離れてた方がまだ涼しいだろう?」
「ううん、だいじょうぶ。今日はせっかく、セトスさま、おやすみなんだもん!」
確かに、普段は領地へ帰っているこの時期に王都へ残っているせいで、俺の仕事は割と忙しい。
海も山もあって涼しい領地の方が過ごしやすいんだが、何せ遠いからな。
アンジェにもう少し体力が出来てからでないと遠出は厳しいと思ったんだ。
「せっかくの休みか。確かにそうだな」
「うん! だから、いっしょに、いたいの。
…………セトスさまは、あつくない方がいい?」
「全然!! 俺はアンジェより体力もあるから平気だよ」
「それなら、この方が、いい。
おんなじ部屋に、いるのも好きだけど、となりにいる方が、もっと好き」
ヤバい、かわいい。
この可愛すぎる生き物を俺はどうしたらいいんだろう?
暑さで茹だった頭でそんなことを考える程にアンジェが可愛すぎる。
いつものように俺の手を取ってスリスリと撫でる手はいつもより熱い。
普段は冷たく感じる彼女の手がこんなにも熱くなっているということはやっぱり暑さにやられているんだろう。
「そうだ、アンジェ、水遊びをしようか」
「みずあそび?」
「水遊びって言ってもそんなに本格的には出来ないから桶に水を張って足を漬ける程度だけど」
「んー、あんまりよくわかんないけど、やる!」
と、言うことでイリーナが適当なたらいに水を張ってくれた。
もちろん室内だと水浸しになるから外だ。
「アンジェ、抱っこするよ?」
「わーい、ありがと!」
俺が抱き上げるだけでアンジェは無条件に喜ぶのが可愛いよなぁ。
そして、庭で一番大きな木の陰に置かれたベンチに座らせる。
「靴と靴下脱がせるよ?」
「え、うん?」
イマイチ状況が分かっていないようなアンジェはキョトンとしてる。
「水に足つけるから冷たいよ〜?」
ちゃんと予告してからたらいの水に漬けさせる。
「ん、つめたい」
「嫌か?」
「んーん、きもちいー!」
ぱしゃぱしゃと足を動かして楽しそうだ。
よかった。
「セトスさまは〜?」
「俺はいいよ。アンジェが楽しみな?」
「わたしは、セトスさまと、いっしょがいいな」
そう言ってくれるところが、アンジェの一番かわいい所なんだよなぁ。
なんて思いながら、さてどうしようかと考える。
いつものように隣に座るとさすがに足をつけられそうにはない。
そこまで大きなたらいではないからな。
「アンジェ、抱き上げるよ?」
一声掛けてから抱き上げて、自分が先に座ってから足の間にアンジェを座らせる。
「これでいい?」
「うん!」
自分も靴を脱いで同じ盥の水につけると、ほんの少しの涼しさが得られる気がした。
「アンジェ、楽しいか?」
「うん! たのしい!」
「それは良かった」
いつもよりも密着しているせいで、何なら水遊びするより暑いんじゃないかっていう状態だけど、ふわふわと笑いながら足で水を蹴るアンジェはやっぱり最高にかわいいと思うんだ。
新連載『ゲームちっくな異世界でゆるふわ箱庭スローライフを満喫します 〜私の作るアイテムはぜーんぶ特別らしいけどなんで?〜』を始めました。
私らしいのんびりまったりしたお話ですのでぜひよろしくお願いします。




