4.
コンサートからの帰宅後。
クリスマスコンサートだったから夕方から始まって、終わったころにはもう夜だった。
その時間から帰宅してご飯を食べたアンジェはもうヘトヘトだった。
だけど。
「セトスさま、まだ、寝ちゃダメよ〜?」
「俺はまだ寝ないけど、どうしたんだい?
アンジェはもう眠いだろう?」
「まだ、くつ下、置いてないもん」
「覚えててくれたんだね」
「あたり前だよー!
このまま寝ちゃったら、サンタさんがきた時に、どこに置こう?って、こまっちゃうよ?」
「そうだね。くつ下持ってきてあげるよ」
「ありがと」
俺がくつ下を取って戻って来るまでの短い間ですら、アンジェは夢の国へ旅立ってしまいそうでフラフラしている。
「アンジェー?起きてる?」
「おきてるよ!」
「はい、くつ下」
「ありがと!これ、ここにおいて寝たら、サンタさん、プレゼントくれるかなー?」
「くれると思うよ」
「じゃあ、あしたの朝、おきるの、楽しみにしてる!」
「そうだね。おやすみ」
「うん!おやすみ、なさい」
翌朝。
「セトスさま、おはよ!
プレゼント、あったよ!」
サンタさんはあんまり計画的にプレゼントを選ばなかったようだ。
絶対にくつ下に入らないサイズのプレゼントが、くつ下の隣に置かれていた。
「ん、けっこう、大きい……?くつ下に入ってないよ?」
「そうだねぇ、まあいいんじゃない?」
「うん!これ、何?とってもふわふわで、さわるの、きもちいい」
「ブランケットだよ」
サンタさんこと俺が、色々見て回って探したブランケット。
アンジェにとっては手触りが一番大事だからとにかくふわふわで触り心地の良いものを。
色なんかのデザインは特にアンジェの好みがないから、俺の好み全開で選んだ。
彼女に似合うと思ってる、パステルっぽいオレンジ色で、トナカイのイラストが入っているノルディックなデザインだ。
「ふふ、ふわふわ〜」
うん、幸せそうに、俺の選んだブランケットに頬ずりするアンジェはやっぱり世界一かわいいな!
「これ、膝に掛けても暖かいと思うけど、こうやって肩から掛けてケープにもできるんだ」
肩に掛けて着せてあげて、前の大きなボタンを留める。
「いいね、これ、あったかい!」
ウキウキで超可愛い笑顔の彼女は、余程手触りが気に入ったのか、ずっとブランケットを撫でている。
「さいきん、寒いから、くれたのかな」
「そうだろうね。これからもっと寒くなるから使う機会も増えるだろうし」
「サンタさん、どこに帰ったのかな?」
「んー、俺もよく知らないけど、空の向こうに帰って行くらしいよ」
「じゃあ、ちゃんとお空に、おれい言わなきゃ!窓のところに、行きたい」
肘を持たせて窓際までエスコートし、窓を開けてあげる。
「さむっ」
突然吹き込んできた北風に、アンジェが咄嗟に首を縮めた。
「大丈夫?閉める?」
「だいじょーぶ」
俺に向かってそう言うと、すぅ、と息を吸い込んだ。
「サンタさーん、プレゼント、ありがとうー! だいじに、使うねー! けほっ」
急に冷気にさらされた上に、ほとんど出すことの無いくらいに大きな声を出したからか、軽く咳き込む。
「お礼言えて良かったね。窓、もう閉めていい?」
「うん。ありがと」
ケープ代わりのブランケットを整えてあげてから、ソファへ連れて行く。
「うふふ、この、ブランケット、だいすき!」
「良いものもらえたね」
「うん! 来年も、来てくれるかな」
「いい子にしてたら来てくれるんじゃないかな?」
「じゃあ、、今の、きもち、忘れる前に、お手紙書いて、くれる?」
「いいよ。何て書く?」
「プレゼント、ありがとうって。だいじに、使うよって、言いたいの」
「じゃあそんな感じで書いてみようか」
「ありがと!来年、くつ下のなかに、入れておくの」
ふふふ、とブランケットに頬ずりしながら既に来年のことを楽しみにし始めた。
来年もここにいることを当たり前の事と思ってくれているのが、たまらなく嬉しいな。
クリスマス番外編は以上で終了です。
お付き合い頂きありがとうございました。
また番外編を更新する時にはよろしくお願いいたします。




