番外編.クリスマス
時期的には 39.初雪 の前くらいの気分ですが、あまり深く考えずにお読みください
仕事から帰ってご飯も終わり、のんびり2人でソファに座って話している時間。
「そういえば、アンジェはクリスマスって知ってる?」
ふと思いついてそう聞いてみたのは、職場でクリスマスプレゼントの話題が出たから。
それぞれ妻や子どもに何を贈ればいいのかと相談していた。
俺も多少考えてはいるが、そもそもアンジェがどこまでクリスマスのことを知っているのか……
かなり疑問だから悩む前に直接聞いてみた。
「んー、メアリが、プレゼントをあげる日?」
「メアリ?誰だ?」
「前のおうちのときに、そう言ってた」
「ああ、アンジェの実家の侍女か。大体合ってるよ。大切な人にプレゼントを贈るんだ」
「じゃあ、わたしも、セトスさまに、あげる!」
「いや、アンジェはもらう側だな。俺があげるから」
「プレゼント、もらえるのー?やったー!」
素直に喜ぶアンジェ。
「何か欲しい物はある?」
「……ほしい……もの……?」
「特にないかな?」
「わかんない……」
「それなら、当日のお楽しみにしておこうか。俺がとっておきの物をあげるから」
「セトスさま、ありがとう!だいすき!」
うん、この満面の笑顔が俺にとってのクリスマスプレゼントだな。
翌日、セトスが出勤してから。
「ねぇねぇ、イリーナは、クリスマスって、知ってる?」
「よく存じておりますよ」
「じゃあ、プレゼント、あげたことある?」
「ありますねぇ」
「だれに?」
「友だちや、妹が多いですね。両親に渡したこともあります」
「そうなのね!じゃあ、セトスさまに、あげるなら、何がいいと思う?」
「お嬢様が、主様に、ですか。なかなか難しいですね」
「そうなの。むずかしくて、なやんでるの」
「おひとりで外へは行けませんから、何か、家の中で準備出来るものにした方が良いでしょうね」
「うーん、でも、わたし、何も……できないよ?」
「そうでしょうか。お嬢様自身が、出来ないと思い込んでいるだけなのではありませんか?
今までも、そうだったでしょう?」
「うん、たしかに。いつも、そう。
できないと、思ってても、セトスさまと、いっしょなら、できる」
真剣な表情で考え込むアンジェ。
「でも、わたし、今、ひとり。セトスさまが、いない」
「では、主様にご相談してみてはいかがですか?」
「だめ。わたしが、プレゼントもらう時は、ひみつで準備してくれてて、わーっ!って言えるように、びっくりさせて、くれるの。
だから、相談は、なし」
「そうですか。お嬢様がこうして考えていると言うだけで、主様は喜んで下さると思いますよ」
「そうかなぁ……」
アンジェがほんの少し身体を揺らしているのは、深く考えている証。
「……あっ!」
「いかがなさいましたか?」
「いいこと、かんがえた、かも!」
キラキラした笑顔でイリーナに話す姿を見て、『この笑顔もプレゼントにしたいな』などと侍女は思ったがそれはそれとして。
「ピアノに、する!このまえ、練習してひいたら、セトスさま、とっても、よろこんでくれたから!」
「それは良いプレゼントだと思いますよ。家の中で、お嬢様が自分で準備出来るものですからね」
「じゃあ、プレゼントに、合うような曲を、ティアに、教えてもらう!」
「では、母屋の方へもそのように知らせを出しておきますね」
「ありがと!ティアと練習するのも、セトスさまに、きいてもらうのも、とっても、楽しみ!」
セトスに導かれるだけでなく、自分自身で何かが出来るようになりたい。
そう願えるようになったアンジェの成長が、セトスへの一番のプレゼント。
おそらく続きます。
クリスマスまでに出し終えたいっ……




