脳筋紳士・イベント一日目《前》
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一話が長くなりすぎて二つに分けました。《後》は明日投稿予定です。
『これより第1回GJOイベントを開始します――』
浮遊島、海岸地帯の砂浜に転送されたシルンの姉、陽が潮風を全身に感じるように伸びをしていた。
「ん~気持ちいい~」
「うぅ……すでに酒臭いです……」
気持ちよさそうに伸びをしている陽の傍らには陽より頭一つ分ほど小さい少女がいた。
陽の酒臭さに盛大に顔を顰めている少女は白を基調とした装束衣装を身に着け、美しい月白のような髪は地に着くんじゃないかと思うほどに長く、何より髪の色と同じ狐耳と尻尾を生やしていた。
「サツキちゃんも飲む~?」
そう言って陽はサツキと呼んだ少女に酒の入った瓢箪を差し出す。
「飲みません。飲めません。それより連れの方をお見掛けしませんが探さなくてもいいのです?」
何度も同じ絡みをされているのか、適当にいなしたサツキは陽から事前に聞いていた同行者がいないことを問うが。
「さあ? 元々個別行動ってことにしてたから先に行ったんじゃない?」
特に考えるようなそぶりもなく陽は適当にそう答えた。
プレイヤーとパーティーを組まなければパーティー報酬が貰えないからシルンと組んだだけであってその目的が達成された今、シルンこと実の弟である紳のことなど陽はどうでも良かったのだ。
当然、陽と紳の姉弟関係など知らないサツキは耳をピンと立てて怒鳴る。
「もし違ったらどうするんです!」
「……まっ、紳だしどうにかなるでしょ~」
「ガサツです……」
今の陽は何も役に立たないと悟ったサツキはがっくりと肩を落とす。
どうしてこの人はやる時とやらない時の差がここまで酷いのだろうか……。
「ほらサツキちゃん置いてっちゃうよ~?」
そんなサツキの心境などつゆ知らず意気揚々と酒を飲みながら砂浜を進んでいく陽を見たサツキは一度ため息をついた後、狐耳をペタンと下げ、どこか気落ちしたような表情で後をついていくのだった。
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浮遊島、森林地帯の中にある湖のほとり。そこに四人組のパーティーが転送されていた。
「めんどくせぇなー……」
赤髪の少年――リュウは腕を組みながら呟く。
リュウの視線の先には薄緑色のツインテールの少女がうなだれている。そう、シルンのフレンドのネイだった。
「シルンさんをパーティーに取り込む計画の大いなる第一歩が……」
「……」
昨日シルンをイベントに誘って先約がいると断られてからずっとこんな感じだった。
そしてなぜか同じパーティーメンバーの茶髪の少女、リーツも昨日からずっと落ち込んでいた。こっちはなぜ落ち込んでいるかはリュウには分からなかった。
「いつまで引きずってんだよ……もうイベント始まったんだから切り替えていこうぜ? な? お前がパーティーのリーダーなんだからさ?」
いい加減イベントを始めたいリュウはそう言っていつまでも落ち込んで動こうとしないネイの肩に手を置くが。
「ぐぇ!?」
「お前なんかに励まされるほど落ちぶれていないわ!」
リュウの腹にボディーブローが炸裂する。鎧の隙間を突いた鋭い一撃だった。
「おまっ、急に何すんだよ!」
「ふんっ、乙女の肩に安易に触れた罰よ」
そういってプイッと背を向け歩き出す。
だがやられっぱなしのままじゃ納得のいかないリュウは背を向けたネイを煽る。
「は? お前が乙女? ゴリラの間違いじゃねーの?」
そのリュウの言葉にネイは青筋を立てる。
「ほう…そんなにボディーブローが気に入った? もう一発喰らわせてあげるよ?」
「おお怖い怖い。このゴリラは血気盛んで怖いわー」
「ゴリラじゃない!」
「じゃあ殴るなよ!」
額をぶつけ互いに睨みあう。
その光景に黒髪の少年ケートはまたいつもの事かとため息をつく。このようなやり取りをいつも二人はしているのだからもはや関心するレベルだ。
「いつまで痴話喧嘩してんだよ」
「「痴話喧嘩じゃないわ!!!」」
「ほんと仲いいなお前ら」
「「仲良くない!!!」」
「お前らの夫婦芸ほんと仕上がってんな……」
パーティーメンバーが騒いでいる中、リーツはというと……
(紳くんがGJO始めたって陽さんから聞いたけど結局イベント誘えなかったな……)
ぼんやりとパーティーメンバーを眺めながら幼馴染の少年に思いを馳せていた。
各々がイベントを始めている中、一方紳くんことシルンはというと――
「誰か助けてくれませんかねぇ……」
浮遊島の縁にぶら下がっていた。
主人公の周りに女性キャラばっか増えてる気がするけど決してハーレムものじゃないです(鋼の意志)




