脳筋紳士・町に向かう
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目が覚めるとそこは焚火の前……ではなく俺の家の天井だった。
「……見知ってる天井……ってことはログアウト出来てるな」
とりあえず上半身だけ起こした俺はヘッドギアを脱ぎ、俺の枕の隣において一度背伸びをしてベッドから出る。
「6時か……まず飯だな」
ポケットに入れたままだったスマホを取り出し、ホーム画面で時間を確認した俺はそう呟きながら部屋の中にある小さな冷蔵庫からブロック状の栄養補助食品と俺の受験勉強をともに乗り越えた愛用のエナジードリンクを取り出す。
ドカッと机の前にある椅子に座った俺はPCの電源をつける。目的はナビゲーターちゃんに教えてもらえなかったGJOの基本的な知識を知るためだ。
(騎士くん達を待たせないように検索することは絞ってと……)
片手でエナジードリンクを飲みつつ俺は情報収集を始めた。
「っと、情報収集はこれくらいでいいか」
情報収集に適当に区切りをつけPCの電源を切り、流れるような動作でベッドに戻りヘッドギアをつける。
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そしてGJOに改めてログインした俺が最初に目に入った光景は……。
(っ!? 公爵令嬢ちゃん!?!!??)
「はわっ! シルンが目を覚ました!!」
俺が目を覚ましたことに驚いてしりもちを着く公爵令嬢ちゃんだった。
「あの、お嬢様。一体何を……」
一応公爵令嬢ちゃんに尋ねてみる。
すると起き上がった公爵令嬢ちゃんは視線を宙に向けながら。
「べ、別にシルンが何しても起きないからって頬をつねったり、髪をいじったりなんかしてないわよ?」
頬をつねったり、髪をいじったりしてたんですね(にっこり)
今すぐ仕返ししてやりたい所だが流石にゲームとはいえ少女の頬をつねったり、髪をいじったりするのは紳士的にも常識的にもアウトだと思うので、宙に視線を逸らす公爵令嬢ちゃんをスクショすることで気持ちを静める。
「まあ、私の頬をつねったりしたのは置いておくとして……お嬢様? 服装が変わっていませんか?」
そう、スクショした時に気づいたのだが公爵令嬢ちゃんの服装が変わっているのだ。具体的に説明すると豪奢な真紅のドレスから町娘が来ていそうなシンプルで落ち着いた服装に。ついでに言うと金髪ロングだった髪もまとめ上げられツインテお団子ヘアーになっている。
「ふふ、良く気付いたわねシルン! 今の私の姿は町娘風お忍びスタイルになっているのよ!」
公爵令嬢ちゃんはそう言いながら腰に手を当て俺に向かってドヤ顔をしてくる。
俺は町娘スタイルの公爵令嬢ちゃんのドヤ顔をばっちりスクショした。
「お嬢様、焚火の隣で何してるんですか服が燃えますよ。シルンさんは目覚めたようですね。おはようございます」
声のした方を向くと公爵令嬢ちゃんと同じように服を着替えたアナさんと騎士くんがいた。お互い手にパンなどが乗ったトレイを持っていることから朝食を持ってきたのだろう。
ちなみにアナさんに指摘をされた公爵令嬢ちゃんはあわてて焚火から離れていた。可愛い。
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「すみません。私まで朝食を頂いてしまって……」
アナさんや騎士くん達に勧められて朝食を頂いた。
朝食の内容は白パン、軽く炙ったソーセージ、ナッツやドライフルーツだった。公爵令嬢の食事ならもっと豪華なものだと思ったが騎士くんが言うに「お嬢様の普通の庶民や冒険者の朝食が食べたい」という要望によるものだという。それでも朝食に使われている食材はどれも一級品らしくとても美味しかった。
「いえ、これくらいお嬢様やアナさんの恩人なんですから当然ですよ。それにお嬢様のわがままに付き合ってもらっているのにこの程度のことしかできなくて……」
こんな感じで騎士くんと恐縮し合ってるといつの間にか馬車に乗り、乗り込み口から体を乗り出した公爵令嬢ちゃんが俺と騎士くんのことを呼んでいた。アナさんも気づいたら馬車に乗っていて身を乗り出している公爵令嬢ちゃんを馬車の中に戻そうとしている。
「何話してるの! 朝食も食べたし早く町に向かうわよ! ちょっとアナ引っ張らないで! 大人しく馬車の中に戻るから!」
俺と騎士くんはその光景を見て思わず笑みがこぼれる。
「ははっ、お嬢様が呼んでいますし行きましょうか?」
「そうですね。これからの話は町に着いてからにしましょうか」
俺と騎士くんはお互い笑いながら馬車に向かった。




