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二度目のボスアタック

よろしくおねがいします。


 秀平達はダンジョン第16、17、18、19階層を数日に分けて攻略した。

 

 学校も始まり毎週末でのダンジョンアタックだが、都合二回のダンジョンアタックで階層を攻略し、とうとう第20階層へとやってきていた。

 

 第20階層の扉の前まで到達するとその前で休憩をし、地面に腰を降ろして飲み物を飲む。

 

「ここが第20階層のボス部屋、ですか……」


「ボス部屋からはモンスターが出てこないのがありがたいよね。構造的にアリやネズミなんかが扉を開けないのかもしれないけれど」


「まぁ今はそれで助かっているので、休憩したらさくっとボスを討伐しましょう」


 緊張感を保ちつつそれでも緊張しすぎないように気を配りながら会話するひとみと秀平の言葉に、奈緒が無言で頷く。

 

「前回のボスはほぼ秀平君が一人で倒したようなものだから。今回は拓海にメインに戦ってもらうという形でいくの?」


 そんな疑問を問いかける奈緒の言葉に、秀平は飲んでいたペットボトルから口を放して言う。

 

「基本的にはそうですね。ボス部屋の中はモンスター多いですし、白瀬さんにはとにかくモンスターの数を減らしてもらおうかと。俺と東雲さん、大崎さんで前線を張って後ろに通さないようにしようかと」


「一気に殲滅はしないんだね。秀平君の魔法なら行けそうだけれど」


「出来ますけれど、それだと白瀬さんの修練にはならないかなって」


「確かにね」


 秀平はそう言うと空になったペットボトルを鞄に入れて立ち上がる。

 

「さて、それじゃあ行きましょうか。ボスアタックです」


 秀平の言葉に全員で頷き、ボス部屋の扉に手をかける。

 

 ギギギ……と軋む音を響かせながら開いたボス部屋の中には、やはり大量のアリとネズミが存在していた。

 

 その中央にはやはり他のアリとは二回り程違う、腹が異様に大きいアリが一匹佇んでいる。

 

「やっぱり構成は変わらないのか。中央に女王アリ」


「それじゃあ白瀬さん、先制攻撃お願いします」


「は、はい! いきます!」


 言うと同時に拓海はマジックショットで先頭の一匹のアリに攻撃を加える。

 

 これにフロア内の全モンスターが反応し、大群で秀平達へと襲いかかる。

 

「それじゃあさっき言った通り、俺と東雲さん、大崎さんで前線を!」


「了解!」


「まかせなさい!」


 互いに魔力と闘気を身に纏い、前線へと躍り出る。

 

 その間にも拓海が必死にマジックショットで敵を撃墜していく所を確認しつつ、前線に到達したネズミを魔力強化の杖や闘気を纏った木刀で屠る。

 

 中央の女王アリはまだ動かない事を確認しながら前線を維持して攻撃を加え、相手の攻撃を躱す。

 

 次第に数が減ってきたアリとネズミの混成軍に、とうとう中央の女王アリが動いた。

 

 その気色悪く膨れた腹を蠢かしながら、鳴き声をあげる。

 

「強酸くるよ!」


「散開!」


 言葉と同時、秀平達が前線から一旦下がるとそこへ女王アリの尻から吹き出した液体が浴びせかけられる。

 

 相変わらずの強酸攻撃に地面がジュワジュワと音を立てて溶けていく。

 

 秀平達には一切被害は無かったが、この強酸を浴びていれば大やけどでは済まない程度の被害にはなっていた可能性が高い。

 

 その事に改めてダンジョンモンスターの攻撃性を理解した秀平は、再び前線へと戻ってアリとネズミを迎撃していく。

 

 その隙間を縫うように背後の拓海からマジックショットの射撃を受けて、前線到達前のアリ達が仕留められていく。

 

 次々と倒れてドロップアイテムへと変化していくモンスター達。

 

 これは後の収穫はかなりの金額になりそうだなと思いながら、モンスターの数を着実に減らしていった。

 

 そうして残るモンスターは女王アリと、それを守る為に周囲に居るモンスターのみとなった。

 

「さて、ここからどうしようかしら」


「俺と大崎さんで取り巻きの掃除、白瀬さんと東雲さんで女王アリを退治して貰いますか」


「私はそれでいいよ。拓海ちゃんもいいよね?」


「が、頑張ります!」


 あっさりと決まった作戦にみんな頷きながら、女王アリへと突っかける。

 

 まずは取り巻きを秀平とひとみで抑え、その間に拓海と奈緒が女王アリに直接攻撃を仕掛ける。

 

「はぁああっ!」


 裂帛の声と共に全身に闘気を纏った奈緒の木刀が女王アリを切りつけ、そこへ援護射撃の拓海の魔法が着弾する。

 

「奈緒完全にバトルオーラ習得してるじゃん。飛斬習得もすぐだね」


「まぁこれだけモンスターを退治しておいてレベルアップも何も無かったら詐欺ですよ」


 取り巻きを処理しながらそんな会話を交わすひとみと秀平。

 

 このボス部屋だけでもかなりの数のモンスターを処理しているので、確かに秀平の言う通りそれで何も無かったら詐欺もいい所だ。

 

「そういう大崎さんは何か覚えました?」

 

「覚えたよー。リジェネートっていう時間経過で回復していく魔法」


「おぉ、それは良かった」


 そうこうしている内に取り巻きのモンスターは全て倒れ、残された女王アリも奈緒の渾身の一撃により、胴体が二つに分断されて事切れる。

 

「ピギィィィィ……」


「ふぅ……大丈夫? 拓海」


「私は大丈夫だよ、奈緒ちゃん。ただちょっと、疲れたかな……」


 女王アリがキラキラと光を放ちながらアイテムへと変じていく姿を眺めつつ、拓海が疲れたように息を切らせる。

 

 その二人に向かって、後方で取り巻きの処理をしたひとみと秀平が合流する。

 

「東雲さん、お見事です」


「いや~お疲れ様拓海ちゃん! ちょっと休憩したらドロップアイテムの回収、だね! 最後まで気を抜かずにがんばろ~!」


「は、はい! 頑張ります!」


 こうして、秀平達四人のボスアタックは完全勝利という形で幕を下ろした。

 

 この後のボス素材の買い取り金額に、またしても拓海がその高額さに慄く事になるのはご愛嬌という事で。

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