表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/30

ダンジョンとの距離は

よろしくおねがいします。

GW期間は不定期になります、申し訳ありません。


 秀平達は改めて第13階層へと到達した。

 

 ダンジョン内部は相変わらずの洞窟。草原が懐かしいと感じる。

 

 第13階層は奈緒とひとみにとっては悪い思い出のある階層ではあるが、初挑戦の拓海にとっては未知の領域だ。

 

 第13階層の探索を始めてさっそく姿を現したアリとネズミの軍団。

 

 そのネズミの大きさに拓海が慄いている所へ、秀平が声をかける。

 

「白瀬さん、ネズミは魔法を避けられる程度には素早いです。なるべく先制攻撃、狙いは偏差をつけて当てるような気持ちで魔法を撃ってください」


「は、はい! 頑張ります!」


 秀平のアドバイスを素直に受け取り、魔力強化を行いながら魔法を撃つ。

 

 まだ距離がある為先制攻撃に撃った魔法は、ネズミの前にいたアリに着弾するが、アリはその一撃で倒れ伏した。

 

 続く2射目でネズミに着弾するが、ダメージを負ったネズミはそれでも近づいてくる。

 

 もう一撃加えた所でネズミも倒れたのを確認してから、近場にやってきたアリとネズミを奈緒と秀平で片付ける。

 

 ひとみは支援魔法をかけてからもしもの為に待機している。

 

 そのひとみの横で奈緒と秀平に守られながら拓海は真剣に魔法を撃ち続けた。

 

 やがて全ての敵が光となって消えた後には、ドロップアイテムが残される。

 

 それを一つ拾いながら、拓海が呟いた。

 

「……ネズミ、素早い上にタフですね」


「もう少し魔法の威力が欲しいかな。拓海ちゃんの魔法は当たってるし後は威力があれば問題ないと思うよ」


 一緒にドロップアイテムを拾っていたひとみの言葉に先程の戦闘の感触を思い出しながら杖を振るう。

 

 拓海の手にしている杖は秀平やひとみと同じくギルドショップで買った魔力増幅機能付きの魔石を埋め込まれたものだ。

 

 懐に余裕が出てきたので魔法威力を追求する為に買ったものだが、ネズミに二発当てて倒せる程の威力を発揮してくれている。

 

 だが魔力を増幅するのであれば、もっと威力を出す事が出来るだろうと拓海は考えつつ、魔力を高めて杖に込める。

 

 その精神状態を維持しつつ魔法を撃てば、威力は変わるだろうか。

 

 そう考えながら、ドロップアイテムの回収が完了した奈緒と秀平へと言った。

 

「次のモンスターはもっと威力の高さを意識して魔法を撃ってみます」


「うん、それでいいと思います。この程度の階層なら、ちょっと精度落ちた程度で問題ないと思うんで、前は俺達が押さえるんでガンガン魔法の練習してください」


「はいっ!」


 拓海の宣言に秀平が同意すると、先へと進む。

 

 3分程度歩いた所で再び目前にアリとネズミの軍団が現れた事で、再び戦闘態勢へと入る。

 

 拓海の射線を維持しつつ前を奈緒と秀平で塞ぐ。

 

 二人に支援魔法をかけるひとみを合図に、拓海が射撃魔法を放つ。

 

 拓海の魔法の着弾でモンスター達が近づいてくるので、それを奈緒と秀平が近距離戦で制する。

 

 この陣形を維持したまま戦闘を行う事で、ダンジョンの中でありながら比較的安全に先へと進む事が可能になっていた。

 

 秀平にとっても近距離戦の実戦訓練が出来ている状態なので、杖術を鍛える上でも楽しい状況だ。

 

 基本は拓海の魔法で敵を倒す事にして、秀平と奈緒はなるべく拓海に獲物を与えるように行動する。

 

 そうして消化されたアリとネズミの混成軍は多くのドロップアイテムを与えてくれた。

 

 現状のペースでは第13階層から第15階層までを探索する。

 

 第14階層、第15階層と上っていく度に少しずつアリとネズミの強さや素早さが変わっているのだが、余力を持って挑んでいる秀平達にとってはその程度の強化のされ方では苦戦もする事はない。

 

 余りにもペースが早くならないように途中で適度に休憩を挟んでいるのだが、それも拓海のペースに合わせてのものなので秀平達は余力たっぷりだ。

 

「み、皆さんタフですね……」


「まぁこう見えてダンジョン探索は先行してるからね」


 途中の休憩で水を飲みながら言う拓海の言葉にひとみが何でもない事のように一緒に水を飲みながら言う。

 

 ひとみもダンジョン探索だけでは無く、東雲流道場に通うようになってスタミナも筋力も着実に付いていた。

 

 かと言って筋肉質になったという訳ではないが、食べる量が増え最近は家族を驚かせる事もままある。

 

 適度な運動とバランスの良い食事は重要な身体の資源なのだとひとみは実感していた。

 

 奈緒のようにスラッとした美女という訳ではないが、女性らしい柔らかな身体つきを目指しているひとみは自身の肉体改造についてそんな思いを馳せていた。

 

 女性陣の話を横で聞きながら秀平も自身の体力について考える。

 

 ダンジョンに通い始めてから明らかに自身のスタミナや筋力に影響が出ている事から分かる通り、ダンジョンでの実戦のお陰でスタミナが増えているのは大きい。

 

 これは将来的には老人も適度なダンジョン探索を行う事で良い運動に、なんてワイドショー辺りが言い出しかねないな、と思った。

 

 そうして休憩を終わらせた後、秀平達は無事に第15階層までの探索を終え、次回第16階層からの探索切符を手に入れた拓海に合わせてダンジョンを出る。

 

 やはり一日に3階層を攻略すると時間も経つもので、外はすっかり夜となっていた。

 

 そしてこのタイミングにダンジョン探索を終える冒険者が多いから、買い取り所が若干混んでいる。

 

 何とか列を確保して4人での買い取りを終えてから、精算を行う事にした。

 

 一人頭七桁にギリギリ届いた分配金に、拓海が思わずうめく。

 

「……ネズミとアリって、こんなにお金になるんですね」


「まぁその分危険度も上がるしね。命張って得た対価としてはまだまだ安いものだよ」


 拓海の言葉に苦笑を浮かべながら言った秀平に、奈緒とひとみが同意する。

 

 二人にとっては第13階層はまさに命を張った場所であり、秀平が居なかったら今頃どうなっていたか分からない因縁の場所でもあったので、その思いはひとしおだ。

 

「じゃ、お腹も空いたし帰ろうか。う~ん、こういう時ダンジョンと家の距離が離れてるのが不便だね」


「そうね。ダンジョンとの距離か……大学とダンジョン間にある地域に一人暮らしするとか?」


「一人暮らしかぁ……考えないでもないんだけれど、一人で暮らすのは不安が先に立つなぁ。拓海ちゃんはよく独り立ちを決断したよね」


「いえ、私はただ家を出たい一心なので……」


「兎も角、帰りましょう。晩ごはんが待ってます」


 そうして、新宿ダンジョンの外へと秀平達は帰っていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ