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ブレイバーのこと

よろしくおねがいします。


 拓海を仲間に加えてから初めてのダンジョン探索。

 

 まずは拓海の行ける階層を自分達と同じ第22階層まで引き上げなければいけない。

 

 今まで一人で9階層を探索していた拓海は9階層以上の階層にはまだ行けない事が分かっているから、秀平達も一緒に9階層から順に探索していく事になる。

 

 秀平の夏休みも残りわずか。何とか夏休み中には第20階層のボスを攻略したいなと思いつつ、ゲート前の広場で女性陣三人を待っていた。

 

 するとそこへ、女性陣達が現れる。

 

 だがその側には複数の男性の姿があった。

 

 彼らはしきりに女性陣へ話しかけているが、どうもその態度は知り合いという風情ではない。

 

 男性はいずれも若く、20歳前後かと思われるが、帯剣をしている事から同じ冒険者だと認識できた。

 

 四人程の男性は女性陣の前を塞がないように、だが自分達の話を聞いてもらえるように話しかけている。

 

 それを女性陣は嫌そうな表情を浮かべつつ無反応で歩みを進め、秀平を視界に捉えると駆け寄ってきた。

 

 何だ何だと戸惑いつつ秀平が様子を見ていると、ひとみが男性達に向けて口を開く。

 

「私達、彼と一緒に行きますから! さ、行こう秀平君」


 そう言うと、ひとみが腕にしがみつくように引っ張りゲートへと歩みを進める。

 

 他の二人も何も言わず秀平達の後に続いてゲートを潜る。

 

 その途中、秀平の背後からは男性達の声が聞こえた。

 

「チッ、コブ付きかよ」


「僕たちと探索した方が絶対に賢いのにな」


「ハーレム野郎が」


 半分呪詛の声を聞きつつ、彼らが視界から消えるまで秀平はひとみに引っ張られ続けるのだった。

 

 そうしてやってきたダンジョンの9階層で、ひとみがほっと胸を撫で下ろしてから秀平を離す。

 

「ごめんね、秀平君。巻き込んじゃって」


「いえ。ナンパですか?」


 秀平の言葉に苦笑いを浮かべて肯定する。

 

「ギルドから目をつけられてたみたいで。ギルド出た瞬間一緒にダンジョン探索しようって声をかけられてね」


「ナンパ自体は経験あるけれど、あそこまで無駄に強引なのは珍しいわ」


 ひとみと奈緒の言葉に秀平はふぅんと軽く返事をしつつ拓海を見る。

 

 拓海はナンパ自体初めてだったのか若干オドオドしていた。

 

「それにあいつらの一人がブレイバーらしくて変に自信過剰で。絶対こんな奴らとは組みたくないと思ったね」


「ブレイバー、それも固有のスキル持ちですか?」


 秀平の質問に頷くと、ひとみが説明をしてくれる。

 

「ブレイバーはNFOの職業の一つだけれど、戦士系から派生する魔法戦士ポジションだね。魔法と近接戦闘両方使えるけど固有スキルで士気向上とか光の剣とか持ってる。ピカピカ光ってうざったい奴らだよ」


「なんか、若干私怨やらが混じってる気がしますけど」


「いやーほんとにNFOにおけるブレイバーは総じて自信過剰なんだよね。攻撃力も防御力も大した事ないけれど士気向上とかの使える全体バフ持ちだから、パーティ需要は高くて。攻撃スキルがいちいち光ったりカッコつけたりで正直好きじゃない」


 そんなひとみの説明に何となく納得した秀平は、そのまま拓海へと話しかけた。

 

「白瀬さん、これからダンジョン探索ですけど大丈夫ですか」


「は、はい! 頑張ります!」


「今日は目標を第12階層ぐらいまでにしておきましょう。9階層はすぐに抜けて、10階層から戦闘をしていきましょう」


「はい!」


 そんな拓海の返事を聞いて頷くと、早速道を先へと進んでいく。

 

 久しぶりの洞窟型フロアだが、以前と何も変わらず若干涼しい気温に保たれた洞窟内部と、モンスターを狩る人の多さに内心うへぇとため息をつきながら最短でフロアを抜ける。

 

 そうして訪れた第10階層は、9階層までと違ってやはり人の密度がぐんと下がる。

 

 これならモンスターも倒せるかなと思いつつ、道を進んでいくと久しぶりのダンゴムシとコウモリに遭遇した。

 

 ダンゴムシは2、コウモリは1の数的には少ないグループだ。

 

「それじゃあ白瀬さん、攻撃してみてください」


「は、はい! いきます、マジックショット!」


 拓海がそう言い手に持った六角棒を振ると、先端から青白い光の塊が速球の速度でダンゴムシへ飛んでいき、着弾する。

 

 すると衝撃を受けたのかダンゴムシは押されたように仰向けになり転がった。

 

「えい! マジックショット!」


 もう一度拓海がマジックショットを発射すると仰向けになったダンゴムシに着弾し、ダンゴムシが光となって消える。

 

 一匹のダンゴムシを倒した後、こちらに襲いかかってくるもう一匹のダンゴムシとコウモリを奈緒が斬り伏せていた。

 

 拓海の撃ったマジックショットに関して、秀平がう~んと感想を告げる。

 

「何か……全体的に威力が無いですね」


「は、はい……すみません」


 ダンゴムシを二発で倒す威力。いや、ダンゴムシ相手に二発もかかる威力というのはどうなのだろう。

 

 そう考えていた秀平はしおしおと萎れていく拓海に慌てて言う。

 

「い、いや。威力は分かりました。後は威力の向上と魔法の発動の速さを何とかすれば。ちなみに使える魔法はそのマジックショットだけですか?」


「はい……私の持ってるスキルはテイミングとペットヒール、あとは今のマジックショットだけです」


「なるほど、では……まずは魔力の扱い方から、練習していきましょうか」


 そうして、秀平による拓海の魔法威力向上作戦が開始されるのだった。

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