22階層へ
よろしくおねがいします。
一元化されたドロップアイテムの購入システムに関する利点は買い取り窓口が一つなので選ばなくて済む事がある。
また企業が独自でドロップアイテムの購入を行う場合、独自指針により買取金額の差が発生するだろうし、場合によっては買い取りを拒否される可能性もある。
その点現状のギルドが買い取る流れのままであればその買い取り金額の差は発生しなさそうであり、買い取り拒否も起こらないであろう。
何よりギルド側としてはドロップアイテムの買い取りを独占できる事になるし、ここに民間企業の競争原理は影響しない。
ギルドの買取金額の原資は税金で、だがドロップアイテムを販売もしている事で利ざやを稼いでいる、しかも安定的にだ。
この収入源を民間に譲り渡すのはさすがに勿体無いにもほどがある。
そういう意図が透けて見える今回のクエストシステム実装だが、冒険者側からすればこれからの買い取りにも影響が無い事が歓迎すべき部分であると思う。
「それでは具体的な方法をお教えします。と言いましても方法は簡単で、タブレットで受注希望のクエストを選択後、受注ボタンを押していただき、冒険者証をタブレットへかざしていただく事で受注は完了されます」
受付係の女性の指示のもと言われた通りに操作して、冒険者証に認証させる。
秀平が受注したのはウサギの角の納品だ。
認証は正常に完了し、受注状態のステータスがタブレット画面に記載される。
「はい、こちらで受注は完了です。後は通常通り買い取り窓口にてドロップアイテムを売却いただければそれでクエストは自動的に完了になります」
「買い取り窓口でクエストの受注を申告しなくても良いって事ですか」
「はい、冒険者証にデータが記載されておりますので、買い取り窓口では自動的にクエスト完了の処理がされます。クエスト完了の報酬もその際に自動的に上乗せされますので、買い取り窓口で特別な処理を行っていただく必要はございません」
「なるほど。クエストの完了期限などはありますか?」
「ドロップアイテムの納品に関するクエストの期限はございません。地図の作成に関しては構造変化から最大15日までとしております」
「あ、地図。地図はどこへ納品すればいいんですか」
「地図はこちらの冒険者ギルド窓口で納品を承っております。先着順となりますので作成されましたら素早い納品をいただけますと助かります」
受付係の案内にふむふむと頷きながら承諾する。
地図を作成などした事もないし、今後も行う予定は今の所無いのだが、何かの時に使えそうなので覚えておこうと思っていた。
「ちなみに、納品いただいた地図はこちらのタブレットで閲覧もできるようになる予定です。ダンジョン攻略の際にはお役に立つかと思われます」
「なるほど、そういう使い方をするんですね」
今後はダンジョン内部の地図も公開されるという事になるのだろう。誰かが潜ったフロアの構造を共有する事でより多くの冒険者が先へ進めるようになるという事だ。
今の所人伝いかネットで共有されていたような情報がギルドでも収集できるようになるという事は、さらに冒険者ギルドの利用価値を高めるためにも必要な事だろう。
そこにコストを支払うのは今後の発展の事を考えれば賢い選択であると言える。
ギルドの利用価値が高まれば人が集まり、人が集まればそこには市場が形成される。
今後もギルドは色々な冒険者向けの施策を打って利用価値を高めていく事だろう、頑張ってほしい。
そんな事を秀平が思っていると、受付係は説明を終えていた。
「以上となります。何かご質問はございますでしょうか」
「いえ俺からは特には」
「私も特に無いです」
「私も」
三人が今の説明に満足している事を告げると、受付係はにっこりと微笑みながら頷いた。
「それでは講習はこちらで終了になります。もしよろしければ早速クエストを実施いただけますようお願いいたします」
「はい、分かりました」
先程受注したウサギの角の納品がある。
とりあえず新しいシステムの事は理解できたので、ウサギの角の納品と、今日こそ21階層を攻略しようと、秀平達は冒険者ギルドを後にするのだった。
そうして訪れたダンジョンの草原フロア、第21階層で、秀平達は順調にウサギの角の収集を行った。
石碑から続く道の跡の5つ目のルート。
流石にそろそろ当たりを引いてほしいと思いつつ探索を進める。
相変わらず見通しの良い草原で遠目にウサギに発見される度に遠くから駆け寄ってくるのを返り討ちにして、先へと進む。
何度もウサギを倒し、その角を収集して休憩を挟みながら先へと進むと、やっと道の先に建造物が見えた。
淡い光を放つ石碑が、道の先に存在しているのだった。
「やっと見つけた~!」
「中々時間がかかったわね」
5つ目のルートにしてやっと見つけた石碑の存在に、ひとみと奈緒が嬉しそうに言う。
秀平としてもやっと21階層は終わりかと嬉しさが出てくる。
そうして石碑まで辿り着いて石碑へとアクセスすると、第22階層へ侵入できるのを確認して心の中でホッとした。
「どうします、このまま進みますか?」
「うーん、ちょっと様子だけ見ようか。本格的な探索は次で」
「そうね。なんだかんだでほぼ一日探索していたし、本格的な探索は次でいいと思うわ」
秀平の問いかけにひとみと奈緒が応える。
確かに一日探索した所で次の階層へ休みなく探索を続けるのも疲れる。
秀平も二人に同意してから、それじゃあととりあえず様子見で第22階層へと進むのだった。
そうして訪れた第22階層。
全く景色の変わる事無く、広々とした草原。
その事を周囲を見渡して確認すると、秀平は一言呟いた。
「そういえばそうだよね」




