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草原

よろしくおねがいします。


 東京ダンジョンの最前線攻略階層は現在第33階層になっているそうだ。

 

 秀平が冒険者登録をした時の最深度が第32階層だから、随分時間がかかっているように思える。

 

 だが最前線のフロアは木々の鬱蒼と生い茂るジャングルとなっているという事で、それが攻略の速度上昇を妨げている要因になっているようだ。

 

 またダンジョンの定期的な構造変化により石碑の場所が変わるというのも、一つの要因になっているだろう。

 

 ダンジョンは定期的に、構造が変わる。

 

 月に一度、月末の際にダンジョンの構造変化が開始され、その間は誰もダンジョン内に潜ることはできなくなっている。

 

 構造変化により通路の順路から石碑同士の距離、方向まで変化するので、同じ階層だと言っても構造変化前と後では別の階層であると言っても過言ではないだろう。

 

 幸い、地形的なものや出現するモンスターの分布は変わる事は無いので、実力さえあれば先へと進む事は可能だろう。

 

 そういう意味でも、この構造変化という現象はある意味冒険者のふるい落としに一役買っている現象である。

 

 四苦八苦しながら最前線を進んでいるだろう政府の送り込んだ部隊と冒険者に、お疲れ様と心の中で呟く。

 

 そんな事を思いながら、秀平達は第21階層へと侵入した。

 

 転移してすぐに感じたのは爽やかな風。

 

 周囲を見渡してみると石碑の他には何もない、だだっ広い草原が視界一面に広がっていた。

 

 前後左右どこを見渡しても草原という状態に秀平とひとみ、奈緒の三人で驚きの声をあげる。

 

「……これはすごい」


「うわぁ~、本当に草原だぁ~」


「ダンジョンの中にこんなフロアがあるのね……綺麗だわ」


 確かに奈緒の言う通り短い芝生の映えた草原は綺麗に見えるが、これも大概迷いやすい地形をしているなと秀平は感じていた。

 

 ダンジョン内だが天井には空が広がっているように見え、明るいが太陽などの光源は見当たらない。

 

 何か目印になるようなものがあれば良いのだが、現在の所だだっ広い草原だ。

 

 地面の起伏はあれど目印とするには弱いもので、中々方角と感覚を一致させるのが難しそうである。

 

 この中を探索しろというのもダンジョンの障害の一つなんだなぁと考えながら、秀平は足元の地面を見る。

 

 そこにはいくつかの草が踏まれてできた跡が確認でき、何人かの人員がここを行き来している事が理解できる。

 

 だがこの跡は石碑を中心にいくつもの方向へと伸びており、道行く先はバラバラだ。

 

 さて、どの道が正解なのかなと思いながら眺めていると、ひとみと奈緒もそれに気付き行き先を決める事になった。

 

「正面、て言うのがまぁ安直だけど分かりやすいよね」


「でもこの広い空間で真正面に行くだけでたどり着けるかしら」


「そこなんですよね。実際いくつもの方向に分かれてる訳ですし、正面が正解という訳でも無さそうです」


「どの道どこかに行かないといけないならまぁ、当てずっぽうで決めるしかないかな」


「何か確実な情報が欲しい所だけれど……」


「ネットとかで情報収集しておけば良かったかな」


 三人であぁでもないこうでもないと話しながら、最終的に一旦正面に向かおうという話で決着する。

 

 そうして石碑から見て正面の道を、先人のつけてくれた跡を辿りつつ進んでいくと、草原の先からガサガサと音を鳴らしながら獣が飛び出してきた。

 

 それを一言で言うなら、角ウサギである。

 

 大きな中型犬ほどの大きさの、一本の角を額から生やしたウサギが結構な速さで駆け寄ってくる。

 

 数は4匹ほどだが、その勢いの良さに警戒して迎え撃つ。

 

 ウサギはまず先頭の一匹が勢いよく飛び上がると、秀平に向けて思い切り体当たりを仕掛けてきた。

 

 それを魔力を纏った杖で受け止めて、横に流す。

 

 すぐに後追いのウサギが同様に体当たりしてきた所を、小さな旋風で巻き上げようとした。

 

 だがその魔法をウサギは既の所で避けて、方向を変えて再び突進してくる。

 

 それを奈緒が横から闘気を纏った木刀で斬りつけた。

 

「ギャウォッ」


 甲高い鳴き声を鳴らして斬られた一匹だが、まだ戦闘は可能なようで地面に落下してから再び起き上がってくる。

 

「意外と耐久力あるな」


「それに、素早い。瞬発力もあるし中々やるわね」


「普通ウサギって可愛いものだけど、このウサギ達は何か違うね」


 ウサギの軌道に合わせてマジックサークルを展開、石の礫を射出した秀平が一匹を倒すと、他の三匹が一斉に各人へと襲いかかる。

 

 それを奈緒はカウンターで斬りつけ、ひとみは秀平と同じく魔力を纏った杖──星の形のアクセサリーをてっぺんにつけたアレだ──で一旦受け止めてから、弾き返す。

 

 それを秀平が旋風よりも殺傷力を上げた氷の矢を射出して倒すと、奈緒が最後の一匹を再び斬り伏せて倒した。

 

 そうして全滅させたウサギ達は光と共に消え、後にはドロップアイテムが残される。

 

 ドロップアイテムはどうやらウサギの額の角のようで、それが4本と魔石が同量落ちていた。

 

「……ウサギの角か。何かに使えるのかな」


「結構硬いみたい。先は丸いけど勢いをつければ突き刺さりそうね」


 コンコン、と角を叩きながらいうひとみの言葉に、奈緒が不思議そうな表情を浮かべる。

 

「でも奴ら、角で攻撃しては来なかったわね」


「案外、角が折れると弱ったりするとか……」


 奈緒の疑問に秀平が応えると、あぁ~と二人が頷く。

 

「何にせよ、ここから先は動物型のモンスターが多く出そうね」


「大きな虫も怖いけど、動物も中々怖そうだね」


「とりあえず、気を引き締めて先へ進みましょう」


 秀平の言葉に二人が頷き、道を先へと進むのだった。

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