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気持ち悪いぬめぬめ

よろしくおねがいします。


 東京ダンジョン第16階層。

 

 相変わらずの洞窟型ダンジョンであるが、16階層からはモンスターが増える。その一つが岩を表皮に纏った蛇だ。

 

 硬質な岩を鱗代わりに纏っているその蛇は、最初普通の路傍の石に擬態している。

 

 そうして気づかずに人が側へやってくると牙を剥くのだ。

 

 とは言えこの蛇の大きさは大きくて1メートルほどで、毒性も持たない。攻撃方法は噛みつきと締め付けのみという対応のしやすさもあり、そこまで驚異では無かった。

 

 その上、蛇に関しては群れない。

 

 アリとネズミの群れに一匹混ざっている程度の出現頻度である。

 

 だがこの蛇の落とすアイテムの内、蛇の鱗がギルドでは高値で購入される。その硬質さと独特な性質は工学等に応用可能だと見られており、いくらあっても研究所が買い取ってくれる。

 

 そしてもう一体モンスターが新たに存在する。

 

 ぬめぬめとした表皮を持つ白色の爬虫類。四足で動くイモリだ。

 

 大きさは蛇と同じく1メートルほど。だがその大きさで四足で壁を這いながら動くというのは見た者に生理的な嫌悪感、ないしは恐怖感を与える。

 

 表皮がぬめぬめテカテカしているというのも見た目によろしくない。

 

 このイモリは耳が発達し物音に機敏に反応するし、群れも成す。だが目は若干退化している為、基本的に物音で獲物を感知するのだ。

 

 ひとみと奈緒の二人は、そんな基本的に気色悪い生物を相手に腰を引かせながら立ち回っていた。

 

「うえぇ……きもちわるいぃ」


「さすがにこれは……なんとかならないのかな」


 木刀で斬り捨て、棒で殴打する度に返ってくるぶよんとした感触に嫌悪感を感じながら二人はイモリを処理していく。

 

 その点秀平は魔法を射出しておしまいだ。直接攻撃をしない分そんな感触とは無縁である。

 

 イモリが体液を流しながら光に消えてトロップアイテムと化しても、嫌悪感は消えてくれない。

 

 ドロップアイテムが明らかにそのイモリの表皮であり、場合によってはレアドロップとしてイモリの足が残されるからだ。

 

 これを素手で拾うのは嫌だ。という乙女の思考回路で秀平が魔法で浮かせて鞄へと詰めていく。

 

 イモリの攻撃方法はその舌で攻撃してくるというありきたりなものであったが、速度も遅いし驚異にはならなかった。

 

 これでイモリの素材も現在高めに取引されるのだから、ドロップを放って置くのは勿体無いにも程があるだろう。

 

 ドロップを詰めた鞄を改めて背負うと、秀平が二人に言った。

 

「大崎さんは、攻撃魔法はまだ覚えない感じですかね。東雲さんも飛び道具があればいいんですけど」


「私はもうちょっと、って感じかなぁ。なおの攻撃手段で飛び道具となると、飛斬ていう飛ばすオーラがあるけど、中級スキルだしまだ覚えないと思うよ」


「寸鉄とかを持ち歩いて投擲するか。いや、実際投擲は練習しないと巧くいかないからな……」


「じゃあもう少々、二人にはイモリの感触と戦ってもらう必要がありそうですね」


 秀平の言葉に二人は嫌な表情を浮かべて互いを見る。そしてため息をつくと前へと歩き出した。

 

 通路を歩いていると数分後には今度はアリとネズミの混成部隊と衝突したので、これを撃破に動く。

 

「イモリのストレス発散だーっ!」


「斬り応えのある相手だ! 容赦しないぞ!」


 嬉々としてアリとネズミに打ち掛かる二人の姿に秀平は援護に務め、二人が漏らしたモンスターを礫を打ち出し倒していく。

 

 中々イモリとの戦闘は二人のフラストレーションを貯める結果になっていたようで、暴れ方も若干雑だ。

 

 そうして混成部隊を処理してドロップアイテムを回収した後、そういえばと秀平は話し出す。

 

「もうそろそろ20階層が見えてきましたけれど、どうします?」


「どうします、っていうのは?」


 秀平の言葉にピンと来ない顔で奈緒が聞き返すと、ひとみが言葉を続けた。

 

「20階層に挑戦するかどうかっていう話かな。20階層は所謂ボスフロアだもんね」


「そう。まずボスに挑戦するかどうかが一つ。それと、20階層以降も探索するかどうかも」


「確かに。稼ぐだけなら今の階層でも十分に稼げてはいるのよね」


 『ダンジョン案内小冊子』にも記載されているのだが、20階層には門番がいて、それ以降の階層を探索するにはその門番の撃破が必要になる。

 

 加えて20階層以降になると、洞窟型のダンジョンから草原に切り替わり、オープンフィールドとなる事が記載されている。

 

 いわば20階層までがこの東京ダンジョンではチュートリアル、20階層以降が東京ダンジョンの本番になるという事だ。

 

 政府の出している調査隊は最前線組と共同で最前線へ潜り情報を提供しているのだが、情報の更新は定期的になる。即時更新された情報というのは中々手に入らないものだ。

 

 それが重要事項であればギルドが広く周知を行うのだが、現在の最新情報で最前線組がいるのは32階層である事、31階層以降は密林になっている事。多種多様なモンスター、密林に存在していそうなものからそうでないものまでモンスターの出現分布は多岐にわたる事が共有されている。

 

 探索場所としての難易度が上がり、モンスターも大量に出現するという事から、そこから先へは進行しないという選択肢もあるにはあった。

 

 何せ秀平達は今の階層でもモンスターを狩っていれば収入になるのだ。それも普通のアルバイトでは一日では稼げない程稼げている。

 

 お陰で秀平は扶養控除から外れて一人収入を得ている事になってしまっているが。

 

 そんな理由もあり、ここから先へ進むか否か、秀平は二人に確認を行いたかった。

 

「もちろん、先に行きたいかな。冒険はまだまだこれからだし」


「私も、まだ十全に腕を振るえているとは思っていない。もっと強い敵がいるのなら、そこを目指す」


 ひとみは単純に冒険をしたいから。奈緒は強い敵に遭遇したいから。己の理由で二人は先へ進む事をあっさり決める。

 

 その事に秀平は安堵するのだった。

 

 秀平も、まだまだ冒険を行いたい。未知のエリア、未知のモンスターに遭遇したい。だから門番を倒し、その先の階層で行く事を決めていた。

 

 場合によっては一人で進む事も考えていたが、二人も一緒で良かったと、秀平は思うのだった。

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