第17話「微笑ましい親子」
翌日の日曜日。
佐奈ちゃんとの約束があった俺は、お昼ご飯を食べた後に公園のベンチに座って待っていた。
「――おにいちゃん、み~つけた~!」
やがて、俺を見つけた佐奈ちゃんがタタタッと笑顔で駆け寄ってきた。
相変わらず元気が良くてかわいらしい笑顔だ。
「こんにちは、佐奈ちゃん」
「こんにちは~!」
挨拶をすると、佐奈ちゃんは満面の笑みで返してくれる。
そして――まるでそうするのが当たり前かのように、俺の膝の上に座ってきた。
「えへへ♪」
佐奈ちゃんは俺の膝の上で、上機嫌に体を揺らす。
この子、ほんと自由人だよなぁ。
まぁ、かわいいから俺も受け入れているんだけど。
「……こんにちは」
「あっ、こんにちは――あれ?」
佐奈ちゃんに続くようにして、美鈴ちゃんも挨拶をしてくれたので返したのだけど――なぜか、彼女は俯いていた。
そのまま黙って、俺の隣に座るのだけど――見えた横顔は、結構赤くなっている。
なんで、赤くなってるんだろ……?
と、疑問に思っていると――
「あの……昨晩のことは……忘れてください……」
――美鈴ちゃんが懇願をしてきた。
それにより彼女の顔が赤い理由がわかり、どうやら彼女はあれだけ酔っぱらっていても、何をしたか憶えていたようだ。
まぁ、とんでもないことをしてきていたわけだし……やはり、清楚でウブな彼女からしたら耐え難いほどに恥ずかしかったらしい。
ただ……忘れてと言われても、忘れられるものではないというか……。
「善処します……」
としか、俺は言えなかった。
「ぜんしょってなぁに?」
すると、昨晩寝ていたことで何が起きたのか知らない佐奈ちゃんが、不思議そうに小首を傾げて俺に聞いてくる。
わからないことをちゃんと聞いてくるなんて、この子は偉い。
と言いたいところだけど、単純に会話が気になっているだけだろう。
「できる限り頑張りますって感じかなぁ」
「そうなんだぁ! さなも、ぜんしょするぅ!」
佐奈ちゃんは言葉を理解すると、俺の真似をするように美鈴ちゃんにドヤ顔を向けた。
なんでドヤ顔なんだ、と疑問に思うが、多分深い意味はないのだろう。
「ふふ」
佐奈ちゃんのかわいい笑顔に癒されたらしく、美鈴ちゃんは俺がいるにもかかわらず、かわいらしい笑みを零した。
こういう光景を見ていると、胸が温かくなる。
美鈴ちゃん、幸せそうでよかった……。
「おにいちゃん、きょうはなにしてあそぶぅ?」
「佐奈ちゃんの好きな遊びでいいよ」
「じゃあ、かくれんぼ~!」
美鈴ちゃんと佐奈ちゃんの微笑ましいやりとりで癒された後は、俺は佐奈ちゃんの気が済むまで一緒に遊ぶのだった。
そして、その後は家に帰る――などできず、また佐奈ちゃんにせがまれたことで彼女たちの家に連れて行かれ、ご飯をご馳走になるハメになった。
その際美鈴ちゃんが、『いつもインタスタント食品ばかり食べていると、体に悪いですよ?』と苦言を言ってきたので、前にスーパーで再会した際に、しっかり籠の中身は見られていたようだ……。




