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97.読書の秋じゃ



 父上、母上、最近なにか本を読んだりしておるかの?

 そんなヒマ全然ないわと言われそうじゃの。わしは三年生最後の空き時間、まだ読んでおらぬ本を読みまくっておる。学園の図書館が使えるのも残りわずかじゃ。これも勉強じゃ。


 最近王都で流行っておる本を送るぞ。

 へるん先生を覚えておるかの?

 わしが子供学校の時の人文の先生じゃ。

 ほれ、わざわざ魔族領に来て学校で教師をやる一方で、魔族の寓話を熱心に調べておったあの人間の先生じゃ。

 あのへるん先生がこっちで本を出したぞ。

 ラフカディオ・ヘルン著『魔界怪談』じゃ。

 怪談言うても怖い話ばかりじゃなくての、奇妙な話、不思議な話、笑い話も多いのじゃ。ようこれだけあつめたの。短編集じゃ。

 『氷女』や『顔無し』はわしも知っておるが、『耳無しホーイツ』は知らんかったの。

 魔族にこんな寓話があったとは、と母上でもびっくりすると思うぞ。


 目の見えない吟遊詩人のホーイツが、魔界に迷い込んでの、案内をしてもらって城に行き物語をせいと言われる。そこで持ちネタの、ヘボな勇者が悪戦苦闘しながら魔王を倒す旅に出てあちこちで失敗ばかり引き起こすという詩を唄うと周りがゲラゲラ大笑いして酒にご馳走を食わせてくれるのじゃ。

 それで気分がようなって、一週間後の最後の日、物語のヘボ勇者は最後にはそれでも魔王をコテンパンにやっつけて、宝を持って都に凱旋して話は終わりじゃ。

 それを聞いた周りの者は急に怒り出しての、ホーイツは耳をちょん切られてしまうのじゃ。

 ホーイツの唄を聞いていたのは実は魔族、ホーイツの耳を切ったのは魔王というのが話のオチじゃ。


 ……なんだかのう。

 ……この話作り話ではないのかの?

 ……どう考えてもおかしいじゃろう?


 なんで耳なんじゃ。

 そこは首じゃろう。



     1030年10月17日  ナーリンより。


次回「修学旅行じゃ」

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