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92.三年生の二学期開始じゃ


 父上、母上、夏休みの間世話になったのう。

 父上、枝豆、美味かったぞ。

 まだ刈り取る前の青い大豆を塩煮して食べるなんてちょっと思いつかんかったのう。あれは商売にできると思うわ。


 夏休みの間中、メビウスとシルビスと領内を回ったのう。

 馬で走るというのは実に楽しいわ! シルビスもすっかり気に入ったようだったのう。おかげで宿題がたまって大変だったわ。


 母上はまた王都にミュージカルを見に行っておったのかの?

 くるくる回っては奇声を張り上げて不気味だったぞ。父上も引いておった。

 「ミュージックのサウンド」だったかのう。引きずられて一緒に観に行った父上にあらすじを聞いたのじゃが、貴族で軍人の大きな屋敷の家庭教師になった見習い修道女が歌と音楽で子供たちを手なずけてちゃっかり主人の後妻に収まり、戦争になりそうになったとたんに一家そろって国外に逃げ出す話じゃそうだのう。


 話だけ聞くと最低じゃな!

 そこな軍人なぜ戦わぬ!

 敵国に弓引くもよし、王に過ちあれば王に盾突くもよしじゃ。逃げるはないじゃろ。

 軍人が民草を置いて真っ先に逃げ出すなど言語道断じゃろうて。

 母上が夢中になっとる意味がわからんわ。(いくさ)の前に四天王が全員唄い踊りながら逃げ出したらどうすんじゃ。


 王都までシルビスに送ってもらって、ハンターギルドにメビウスを返したのじゃがの、わしがタスランで盗賊団捕えたのが伝わっておっての、あれからアジトも踏み込んで根絶やしにして、誘拐されていたお嬢様とか子供とかも解放されての、盗賊団全員縛り首になったそうじゃ。お手柄じゃいうて褒められたわ。会長のジョーウェルは渋い顔だったがの。

「盗賊はその場で殺せと教えたはずだが?」とな。

「わし一人じゃったし、十二人もおったのじゃ」と言うと肩をすくめておったな。

 学生を一級にするわけにはいかん。卒業したら昇級してやると言っておった。

 学生のうちは勉強を優先してくれとな。それはそうだのう。

 授業中にドカドカと教室に踏み込んできたのは誰だったかのう?


 科学部の魔石バーナー、完成しておったな。

 夏休み中ずっとこれを作っておったそうじゃ。

 点火するには高熱量のファイアボールが必要での、わしが帰ってくるのを待っていたそうじゃ。待たせたのう。


 試験、大成功じゃぞ。ゴーッと勢いよく燃えるのじゃ。

 火力のコントロールもバッチリじゃ。

 文化祭まであと一か月。二人乗りの大型気球の制作も順調じゃ。

「もう科学部に入ってくださいよ」と頼まれての、「ここまでおぬしらでやってきたのだし、わしが入ったら手柄の横取りじゃろう」と言ったらな、「ナーリンさんのおかげで俺たち頑張ってこられました。ここまでフラれ続けたら俺たちのほうがみじめです」と実に正直に申すのじゃ。

 しょうがないのでの、文化祭が終わるまで、科学部に入ることにしたのじゃ。


 こいつら、なんか作って夢中になっとるときの父上とおんなじなんじゃ。

 そっくりじゃの。殿御って、そういうもんなんじゃのう。

 これがいわゆる「理系脳」かの?

 なんか、いろいろと、おせっかい焼きたくなるんじゃ。

 そこは、わしも母上とおんなじなのかもしれんのう。



     1030年9月2日  ナーリン



次回「炊き出し実習で家庭料理じゃ!」

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