77.炊き出し実習が面倒じゃ
父上、母上、おいしいものを食べておるかの?
父上がまたおかしな料理などしておらぬかのう。実験とか申してな。
三年生の最初の炊き出し実習じゃ。去年のクリスマスが最後だったからずいぶん時間がたったのう。
街はの、今あの化け物騒ぎのあとなのでの、あちこちで復興作業をやっておる。
人手が足りん状況での、浮浪者たちにもたくさん仕事ができたのじゃ。
そんなわけで浮浪者の数は減っておるらしいのじゃ。
いいことじゃの。
わしの班はメンバーが一新されての、まあ相変わらずわし以外は全員殿御じゃが、一人があの学級委員長のピカピカの貴族なのでの、これがちと面倒じゃのう。
わしがポトフを作るとなると、これをガンコに反対するのじゃ。
「浮浪者はいいものを食べさせると働かなくなる。不味い物を食わせてこそ、いいものを食べられるように働くようになるのだ。オートミールで十分だ」と面倒なのじゃ。
班の一人は前、同じクラスだった殿御での、「俺はナーリンが作った料理が浮浪児にも浮浪者たちにもいつも大人気だったのを見ていた。俺はナーリンに任せるのが一番いいと思う」と言ってくれるのじゃ。うれしいのう。
ぶん殴って言うこと聞かせるのは簡単じゃが、ちゃんと話し合いするのもまた勉学のうちじゃ。わしはなぜ浮浪者にポトフを作るのか、ポトフを食べさせる効果についてきちんと説明するとの、他の四人は「そうだったのか」と感心して協力を約束してくれたのだがの、貴族のピカピカは反対なのじゃ。「かえって浮浪者を増やすことになる」とな。
「おぬし、浮浪者を同じ人間だと思っておらぬのかの?」
「当然だ。社会の落後者だぞ。クズじゃないか」
これはあきれたのう。
「浮浪者というのは最初から浮浪者だったのではないのじゃ。何かの事情で浮浪者に身を落としただけでの、元は普通の平民の暮らしをしておったはずなのじゃ。誰でも浮浪者になる可能性はあるのじゃぞ? おぬしとて例外ではないのじゃ」
「僕は違う。一緒にするな」
わしはもう面倒くさくなってのう。
「とにかく他の四人はポトフで賛成じゃの? じゃ、お主は今回は手伝わなくてもいいから見学しておれ」ということになったのう。
なんかモメ事の元を抱え込んでウンザリじゃ。
1030年4月10日 ナーリン
次回「炊き出し実習当日じゃ」




