表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/106

64.兄上近況じゃ


 父上、母上、夫婦仲はよいかのう? どうせ今でもアツアツなんじゃろ。


 兄上が武闘会で優勝したことはお知らせしたの?

 あれからどうなったかと言うとのう。


 ……モテておる。


 考えてみると兄上がモテない理由などなにもないのだがの。

 成績はかなり手加減しておるようじゃが、上位じゃし、人当たりはわるくないしの。頼めばなんでもやってくれるし、生徒会でみる通り、仕事はできて任せて安心じゃろ?

 顔も背格好もまあ普通じゃが、いままでなんだったのかのう?

 キャロルがデレデレしとるのがいまいち他のおなごらに理解されておらんかったというか引かれていたというかの。いつも男子にボコボコにされて情けないと思われておったのかもしれぬし、とにかく今までの評価が不当に低かったのは確かじゃ。


 ところがあの文化祭の武闘会で優勝して以来、まわりのおなごどもに遠慮が無くなっての、キャロルがちょっと距離を置いとる今がチャンスとばかりに学食でおなごに囲まれて、迷惑そうな顔しておったの。

 兄上にこっそり、なんで武闘会に出たんじゃ? と聞くとの、一言、「実験」と言いおった。

 今まで人間と闘ってみたことが無いので、どれぐらいの力で殴ればいいのか試してみたそうじゃ。

 なんでも穏便に済ましてきてまだ人間とケンカしたことが無いので、卒業前のこの時期にやってみておこうと思ったそうじゃ。


 兄上が学校でやっとることは全部実験なんじゃ。

 人付き合いも、友人関係も、おなごの反応も、やんちゃ坊主共が相手が弱かったり強かったりでどう態度を変えるか、その全てが実験なんだそうじゃ。

 人間を研究しておるのじゃ。

 いままでボコボコにやられておったのも、武闘会で相手をボコボコにしたのも、人間の反応を見るため、という目的もあってのことなのじゃの。


 うーん……。

 そんなことより素直に学園生活を楽しんだほうが良いのではないかのう?

「兄上は人間が嫌いなのかの?」と聞いてみるとの、そんなことはない。人間ぐらい見ていて面白いものはないというのじゃ。それはわしも同感じゃがの。

 父上は人間じゃが、わしは父上は世界で一番面白いお方じゃとおもうておるからの。

 兄上の友達はの、「お前強かったんだな!」とびっくりしておったそうだが、付き合いは別に変らんかったそうじゃ。

 つまり人間も、魔族も、たいしてかわらん。

 周りの反応が変わっても、友達はそのままでいることができるらしいの。


 そんな当たり前のことを研究しておったのかの?

 兄上もアホなことを考えることがあるのだの。

 わしはこの学園に来てから、人間がどうの魔族がどうの、あんまり考えんようになってきておるぞ。どっちも同じじゃ。


 兄上はの、「在学中に魔族だということをバラしても大丈夫か考えている」と言っておる。

 その時友人を失うことになるのだろうか? 興味深いと言う。


「ナーリンが自分は魔族だとバラしてもそれが周りに普通に受け入れられる、そんな学園になるのが一番なんだけどな。俺が卒業するまでにそうなるのは、まだちょっと早いかな」


 わしはそんな兄上の話を聞いてふと思ったのじゃ。


「そもそもわしら魔族なのかの?」

 兄上わしをびっくりしてみておったのう。

「わしら、母上が魔族で父上が人間じゃ。どっちでもないんじゃないかのう?」


 兄上、苦笑いして言ったのう。

「アレを人間と言うのは、ちょっと無理が無いか?」


 いわれてみれば、そうじゃの。


   1029年10月15日 ナーリンより。



次回「秋はやっぱり読書じゃの」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ