表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/106

58.ヒールは貴重じゃ


 二学期が始まって教室に行くとトラスタンがケガしておった。

 頭と腕に包帯を巻いておるのじゃ。

 どうしたんじゃと聞くと夏休みに一人で狩りに行ってヘマしたそうじゃの。

 アホな男じゃ。身の程を知れと言いたいわ。


 渋っておったがの、押さえつけて動けんようにしてヒールをかけてやったのじゃが、クラスが大騒ぎになったな。


「ナーリン! あんた、治療魔法が使えるの!!」

 エーリスが驚愕じゃ。

 いやクラスの全員が驚きなのじゃ。

 それほど驚くことかのう。魔族は三人に一人は魔法を使うし、十人に一人はヒールできるからの。ま、傷とか怪我とか簡単なやつの。


「なんでこんな学校にいるの!!」

 いやその言い方はないじゃろう……。


 まあ騒ぎが収まって、Dが言うにはの、治療魔法ができるような子はまわりがほうっておかんそうじゃ。たちまち貴族の間で取り合いになって養子にするとかしての、教会のいい学校に入れて一流の治療師に仕立てるそうじゃ。

 自分の領地に医者、治療師がいるというのは貴族のステータスだそうでの、治療師は貴重なのじゃ。医者は高給取りなのじゃ。

 そういう技術は一部の者が独占して、高い金をとっていい暮らしができるはずなのだそうじゃ。

「それでは貧乏人は医者にかかれぬではないかの?」と聞いたら「そうですよ」とあっさり言うのじゃ。


 病人やケガ人が金が無くて医者や治療師にかかれぬなど魔族ではありえんことじゃ。ケガ人が出ればみんなで治療し、病人が出ればみんなで薬草集める。それが普通じゃ。

 それを商売にするとはちょっと思いつかんのう。


「(だからマズいと思ったんだよ……)」とトラスタンが小声で言うのじゃ。

 

「治ったかの?」

「まだ痛い」

「すまんの。効かんかったようじゃ」


 クラス中がっくりじゃ。「ナーリンにそんなことできるわけないよな」ということになったのう。


「(ありがと)」

 トラスタンはこっそりそう言って、一週間ずっと包帯巻いとったの。


 あれでなかなか気を使うこともできる男なのじゃの。

 すこーし、見直したわ。

 ヘマをした分と相殺じゃがの。

 男を上げたり男を下げたり忙しい男じゃの。


   1029年9月7日 ナーリンより。



次回「ポトフを作るのじゃ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ