45.御前会議の評判じゃ
父上はあの後すぐに帰ったのう。
もうちっと遊びたかったがの。父上はドラゴン便など使わずあいかわらず自分で飛ぶのじゃからのう……。あの魔法を、魔族の魔法で再現するのはちと難しそうじゃ。
御前会議の結果じゃが、こっちにも伝わってきとる。
モーガン教会の勇者召喚じゃがの、全員無罪、おとがめなしじゃ。
そもそも違法でなかったものを違法にするのは無理じゃし、新しい法を作ってそれで違法にするのは当の父上が強固に反対したそうじゃのう。
「法の不遡及は文明国の大原則である」とな。
要するに好き勝手に法を作ってムリヤリ有罪にするのは時の権力者がやりたいほうだいしているのと同じで国民の信頼を損なう、法への信頼を一番失う行為ということかの。
法は力も権力も財産も持たぬ平民を、暴力や権力や金持ちから守るためにある。民は困ったら、法に訴えることしかできぬのじゃ。法は弱き民の味方でなければならぬ。味方だったはずの法がいつ民の敵に回るかわからんのでは本末転倒じゃ。
新法を作ってその罪で法ができる前の行いを罰するなど、もはや文明国ではない。程度の低い野蛮国のやることじゃと父上に言われてはグウの音も出ないわの。そんな法律を作ったら、世界中に恥をさらすこと間違いなし、どんな国にも相手にされなくなるというわけじゃ。わしも覚えておこうのう。
モーガン教会は、パスティール教会と合併して、「勇者教会」として統一する案が出とるそうじゃ。どちらも落ち目じゃからといって信者がいないわけではない。その信者の救済策でもあるわけじゃし、バラバラになりかけた信者を今一度集めて勢力をある程度取り戻すこともできるだろうの。
この提案を双方前向きに検討中じゃて。
父上が、「魔族側はいずれの教会に対しても遺恨はない。教会を潰すようなことは賛成しない。魔族側に不義あらばいつでも勇者を召喚し魔王を討つがよい」とはっきり言ったからの。
このことが市民に驚きをもって受け止められておる。
魔族の器はなんとでかいのじゃとな。
学園の生徒にも、モーガン教会の信徒もいれば、パスティール教会の信徒もいるのじゃ。みんなひとまず安心しておった。
母上だったら、「そんな教会潰せばよい」と言ったかの?
言わないわの。
チャンスがあれば、勇者と闘ってみたいのが、魔王じゃからの。
あっはっは!
1029年5月10日 ナーリンより。
次回「身体検査じゃ」




