30.孤児院じゃ
母上。父上。ごきげんいかがじゃ?
わしの部屋にまたシルビスが来たぞ。
冬休みになったらシルビスが送ってくれるそうじゃのう。
その手があったかの。いや、その手を使うのかの?
そんなにしょっちゅうこっちに来ておるのかのう……。どんだけじゃ。
シルビスが気の毒じゃ。
いっそのこと、こっちで婿を世話してやれぬかのう。
アライグマじゃし、ちっと無理かの。
父上は、「あれはアライグマではなくてレッサーパンダだ」としつこいがの。
今回の期末テストも、数学一位、赤点無しじゃ。
音楽も問題なしじゃ。音痴は治らんがの。
ダンスの修行、役に立ったぞ。
足運びがうまくなっての、先生の剣をかわせるようになったのじゃ!
「それはダンスの修行じゃない!」というツッコミは無しじゃ父上。
12月25日はクリスマスじゃ。
武神ツェルト様の誕生日じゃ。
誕生日ではなく、ツェルト様にとっての聖人の祝い日じゃという説もあるがいろいろ間違って伝わっておって真相はよくわからんのじゃがとにかくお祝いの日じゃな。
……町中がツェルト様像だらけでムサいのじゃ。
この日に、トーラスが新しく作った孤児院の開院式があるのじゃ。
前から信者を減らしておるモーガン教会がの、資金難ででっかい建物を売りに出したので、それを王室が買い取っての、孤児院に改造したのじゃ。
これで浮浪児が冬を越せずに凍死する、なんてことはもうなくなるという。
いままでそんなことがあったことが驚きじゃ。
とにかく、あちこちから寄付も集めたし、古着も寄付してもらっての、わしらもみんなで街頭に立って孤児たちへの寄付を市民につのったわ。
クリスマスじゃというとみんな財布のひもも少し緩くなるでのう、けっこう寄付が集まったぞ。
それよりも浮浪児の子供たちを集めるのが大変じゃったな。
いきなりでっかい建物で面倒見ると言われてもなにかして働かされるかどっかに売られるのかと疑ってのう、怖がって寄り付かん。
みんなで炊き出しをして、集めて、ツェルト教会の者も来て、よーく説明をして、入ってもらったのう。
今回の炊き出しは寄せ集めるためのエサじゃからの。わしらの班は前に評判良かった肉じゃがを作ってふるまったわ。
父上の皮むきが大活躍じゃった。
クリスマスツリーをホールに飾り、街中で集めた食べ物を食堂に広げ、子供たちを風呂に入れ新しい(とは言っても古着じゃが)服を着せ、医者に健康診断をしてもらい、病気の子供は療養棟に入れ、と一日中大騒ぎじゃ。
あと二、三回炊き出しをやれば、街から浮浪児がいなくなるのう。
トーラス、やるものだわ。
今年の学校行事はこれが最後で冬休みじゃ。
明日にはシルビスが迎えに来る。
考えてみると明日には会えるのにこうして手紙を書くのはなんか無駄じゃの。
あとは会って話すわ。
1028年12月25日 ナーリンより。
次回「三学期なのじゃ」




