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20.二学期開始じゃ


 父上、母上、お見送りありがとうございました。

 無事に学園に到着したぞ。

 二学期の開始じゃ。校長の訓辞が長かったのう。

 貴族と平民、もう少しなかよくせい、国王の言ったことを思い出せとくどかったの。まあそれも時間が解決することじゃ。なにごとも少しずつじゃの。


 やっぱりわしは魔界が好きじゃ。自然一杯で空も広いしのびのびできるわ。

 王都のせまくるしい空は好きになれぬ。

 兄上は帰っておらんかったのう。生徒会と言う奴はそんなに忙しいものなのかの?

 なんでもやるのう、兄上は。

 いや、逆じゃな。なんでもできるから、やらされておるのじゃな。

 父上とおんなじじゃ。


 夏休みの間、父上にみっちり十手の稽古をつけてもらっての、宿題の本を読んでのう、そいで読書感想文を書くのじゃからのう。

 いつが休みだったのじゃ?

 ちっとも休んだ気がせんかったわ。


 ガイコツのやつ、王都で療養しとるふりをして、ちゃっかり魔界に帰ってきておったな。あの講演の話、どこまでホントなのじゃ? と聞いたら「半分ぐらい?」と言いおった。


 半分なのかの!

 盛りすぎじゃ!!


 わしが書いた講演についての長い手紙を母上に見せられて、「こんなこと言いましたかな?」ととぼけておったな。

 まああれはあれでもだいぶ省略したからの。あの講演の半分は、実は魔族のおかしな風習やら、魔族から見て人間の奇妙な所とか、魔族の特産品の紹介とか、ゲラゲラ笑わせるような話や宣伝が多かったんじゃ。大切なのは友好と相互理解、それに商売じゃからの。

 わしが一番笑ったのは「味噌が魔物のウンコというのはデマですぞ」という話じゃな。醤油は売れておるのに味噌が売れない理由の一つじゃ。ちゃんと豆から発酵させて作っておるところを順を追って説明しとった。

 全文が見たかったら、たぶん学園に速記録が残っておると思うがの。


 二学期からは社会が学科に加わるのじゃ。

 この国のしくみ、法、行政のありかたを学ぶのじゃ。


 魔界でも法整備は進んでおる。今まで魔王が全部その場その場で決めとったことが、文章化されて法になって、母上の仕事は半減したの。

 父上の仕事は激増したがの。いつも書類に囲まれておる。気の毒じゃ。


 だが、法整備というのは確かに有効じゃ。

 なにより臣民に対して公平じゃ。それがきっちりできておるこの国は行政に関してはなかなかの進み具合と見ていいのう。

 じゃがの、法というやつは厳格な分、情けが無い。

 温情をもって事に当たることが難しくなる。かといって、最初からゆるくしては法で定める意味がない。長所もあれば短所もあるのじゃ。

 まあ人間の世界はとにかく人が多いからの。こうでもせんとやっていくのは難しいかもしれないのう。

 わしもこの国の、人間としての、「常識」を身に付けねば対等にやっていけぬ。

 これも、学園で学ぶ意義の一つかのう。


 久々に会う学園の友達と話をするのが楽しいのう。

 面白い話をいろいろ聞けたぞ。

 わしは宿題ばかりやっておったと、言っておいたがの。


「不思議の国のイリス」の感想文、先生に呼び出されたわ。

 物語の矛盾点の指摘、わかりにくい表現の改善要望、事実と違う魔物の生態、登場人物の理不尽な行動への理由付けの不備、ボリュームのアンバランス、時系列の食い違い、安易な夢オチに対する批判などをまとめたのだがのう。


「こういうことを書けと言っているのではありません!!」とキレられたわ。

 書き直しじゃ。


   1028年9月3日   ナーリン



次回「ダンス教室なのじゃ」

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