第52話「結・プロ意識」
総監督の星明幸と製作総指揮の湘南桃花は、今後どうやって作品を世に送り出すかの作戦会議をしていた。
「プロ意識ね~……しばらく忘れてたな~……」
星明幸が気持ちを切り替え、改めて持ち直す。
湘南桃花が同意して、その上でどう行動するか考える。
「とはいえ出来ることは変わらないから、今後は〈プロならこうする〉とか〈プロならこんなことはしない〉とかの線引の意識かな? この場合〈プロ小説家ならこうする〉〈プロ漫画家ならこうする〉〈プロアニメーターならこうする〉みたいな意識改革、まあ全部やろうとするのは違うし、プロならこんなことしない、てのを一個ずつ潰して行けば良い」
「だな、昔みたいに一人で意識高い系を気取って、ブラック企業や本当に犠牲者が出るのは違うもんな……。出来ることと出来ないこと、神様と人間、プロとアマチュアの意識の齟齬を埋める……、まあそんな所だろう」
幸は原因と結果の洗い出しをした後。
「とはいえ、何度も言うが元ネタが解っているのならこっちの物だ。ちゃんと読者を意識して書けばデバイスという媒体はどれであれ、作品の質は下げちゃダメだ」
それを踏まえた上で、幸は桃花に今の現状を尋ねる。
「毎日のWEB投稿ってどうなんだろうな……?」
「まあ公募の10万文字の件や、実際にお金が貰えるかは置いておいて、毎日2000文字投稿したら偉いかと言われれば偉くはないし、それで起こる影響力や責任感を持って世に出してるか? とか考えると、やっぱ冷静になってない。という一点はどうしても拭えないかな……。個人的な意識改革だけで事態が済むのであれば、2000文字や10000文字でどうネットにあげるかより、まず冷静になる時間が1日と、本当に自己責任が取れるかっていう個人的なハンコを押す作業。とかだったら今出来る範囲かな」
WEB小説のプロ意識としてはそんな所だろう。政治家がウダウダと決断しないのは政治家の責任だ、自分達ではないしジャンルが違う。どの世界も同じだったとしても、時間の流れ・タイミングが違う以上、相手の時間の流れに合わせなければならない義務感は、ここはあえて、思想のゴミと言うべきだろう。
作家には作家の時間の流れとタイミングが有るし、その優先度を下げてまで世の中の優先度を上げたら、合わせたら本末転倒になる。つまり、他人の締切や期限に合わせるのは逆効果である。悪循環にしかならない。
そこは今までの失敗談から学んだ1つの理だった。
「まあ元が締め切り決めてない以上、責任なんて発生しないんだけどね」
「そもそも責任がキャラ設定なんだよなあ~……」
2人はため息をつく、どこで思想がそうネジ曲がったのか……?
桃花が他のジャンルのプロ意識を羅列する。
「まず、毎日小説WEB投稿はプロ意識として別に偉くない。スケジュール管理はしたほうが良いけど他人が喜ぶ都合がいいもの、紙と鉛筆は消える消えないの問題だけで、別に作品の質やセンス、本編に影響はない。完成動画は今後ダビングしましょう! こんな所かな?」
幸は一応補足する。
「読者にとって良い作品を。というより、プロとして最低限の礼儀作法の意識。みたいな感じだなそれは」
お金が貰えるか、ご飯が食べれるか、とは言及しない。別にそれは意識の問題で解決できたからだ。ゴミにもご飯にも成らないものをかくな。この意識の流れだけ持っていれば、今のところは食べていける。
桃花は代弁するように言う。
「まあ咲ちゃんがエンジョイエンジョイ言っちゃったからプロ意識から遠のいたってのはあるんだけど」
幸はフォローするように言う。
「それは咲の責任じゃないだろ。実際ゲームは遊ぶものだ、本当の責任感やリスクでゲームはやるものじゃないぞ」
まあそれはそれとして、ミステリーの法則について桃花が言及する。
「でもさ、コピー機やPC本体が難解な科学装置に入っちゃったら、今の時代何も作れない事になるよ?」
確かに紙や鉛筆やGペンやインクは難解な科学装置には入らない。
しかし、今はプロの漫画家さん達もだいたいデジタル作画だし、編集者もデジタル作画で問題ないと言っていた。エレメンタルワールドの時間が流れるように動いてたとしても、アレに問題はない。
となるとPCやタブレットに変わる流れは別に問題ないことになる。
ここまではミステリーの定義として話したが。エレメンタルワールドの法則としての定義はまだ決めていない。
「なので、EWの法則として入れなきゃいけないルールは。PCやコピー機とかは難解な科学装置に入らない、とかになるんだが……実際PCの中身については難しいよね
……?」
一番PCを触っていた桃花が、同意を得るように幸に聞いた。
「本人確認とか免許証とか資格とかのがわかりやすいんだけどな……、なのでPCは難解な科学装置に入らない、という文言は入れられない。実際難しいしな」
ダメとは言わないがちょっと厳しいと幸は言う。
「なので、難解な科学装置を扱える人物かどうかの事前提示はいる。という文言なら入れられる。運転免許の資格とは違うのが、スマホやPCの難しい所じゃが……」
ノックス第4条。未知の薬物、及び、難解な科学装置の使用を禁ず。
にはどうしても引っかかってしまうが、これは古典ミステリーの話でハイファンタジーでは難しい。だが。
ノックス第8条。提示されない手掛かりでの解決を禁ず。
は、守れる所は守りたいところではある。
今の時代、タブレット端末でもお絵かきが可能なので、境界線が微妙で曖昧な所ではある。
「なので、難解な科学装置を扱える人物なのかどうかの事前提示はいる。とかかな、メインがファンタジー作品だから年齢制限入れてもあんま意味ない」
前世の記憶を持つ大人の転生者が赤ちゃんだったら、何なら0歳児でPCを扱える事になってしまう、だから身体の年齢制限は意味を成さない。
というわけで、EWの法則として新たに組み込めて良いよと許可が降りたのは。
EWの法則。
【難解な科学装置を扱える人物なのかどうかの事前提示はいる】
「これでいい?」
製作総指揮の湘南桃花が最終確認を総監督の星明幸に聞く。
「うん、これなら下に回していいよ。このルールで作業を進めてちょうだい」
全体の作業がアニメのチーム制作ばりに動き出した。
EW法則まとめ
第19話
【99%真実】
・姫が〈おわるせかい〉の魔法に対して咲に説明した法則。
【EWの法則はEWの物理法則と特殊法則を合わせた意味となる。更に、EWの法則は隅付き括弧で表現される。】
【EWの法則は、地球上では観測や応用の対象となりうるが、地球の法体系や道徳的責任をEWの住人に適用することはできない。】
第28話
【ザ・ユニティ戦で眠りについているのは秘十席群であり、湘南桃花は目覚めている】
第41話
【零時迷子の法則性はキャラクターの感情や物語内の倫理を無視して強制的に行うと都合の良い設定が世界の歪みを引き起こす】
第52話
【難解な科学装置を扱える人物なのかどうかの事前提示はいる】




