第13話「起・湘南桃花はウブすぎる」
アセンブラくんの件は。投資してたら体調悪化するし、お金を漬けて置くというこういが出来ないから「ならやる意味無いね、昼寝も出来ないし」ってことでFX計画事態がぽしゃった。
よって体調は無理をしなくなったので良くなった。
「おっはー」
凜としてやってきたのはオーバーリミッツだ。
湘南桃花は現れた彼女にオロオロしている。
咲はフレンドリーな友達として「おっはー」と返す。咲とリミッツは仲が良い。
「今日は、桃花さんとリミッツさんはふたりっきりの方が良い?」
今居るのは、咲、姫、アセンブラ、桃花、リミッツと、女子4人と機械1人だ。
「うん! お願い」
じゃあ、ということで天上院姉妹は空気を読んでアセンブラくんと一緒に別の場所へと歩いて行った。
「やっほ~! あんま話しかけて来ないから話しかけに来たよ!」
「う……うん……///」
恋心が丸見えで顔を赤らめ目をそらしている桃花。そして定期的に聞きたくなる魔法の言葉。
「そんなに私のこと嫌い? なんか避けてない?」
「いや、そりゃどっちかというと好きだけど。てか、あれだけ盛大にラブってたらそりゃ意識もしますよ……」
いつも通りの百合の花である。心も思惑もリミッツには全てお見通しである。
「はて、思い当たる節が在りすぎますな……」
リミッツはとぼける。
「まあ神経が似たもの同士ってことでそこは許してあげよう」
「何て言うか、意識しすぎてまともに話しかけられない……」
やれることは全部やってるオーバーリミッツ、与えられるものは全部あたえるし、聞けることはちゃんと耳を傾ける。叶えられることも全部叶えるし、寂しくなったら寄り添ってくれる。
そんな大切なパートナーとは、最近では舞台裏でこそこそたまに話すだけになっていた。リミッツは手料理が少ないな、と感じたようである。
「でも、心は全部お見通しだし、ちゃんと聞いているんですけどね」
「いや、だからこそ今さら何話せばいいか困るって言うか……」
イチャラブからの、困惑と焦りと照れ隠しをしても、隠しきれない愛がある。
「いやまあ、確かにリミッツのことは愛してるよ? でもだからって〈こんなこと〉になるとは夢にも思っていなかったワケでして……」
「出来る事は全部やったと思うんだけどなあ? まだ不満?」
「不満なんて全然……、ただ、皆には助けられてばっかりな気がする。友達の件もそうだし、父親の件もそうだし、皆も件もそうだし……助けられてばっかりだな」
「放っておいて助けないと死んじゃうもんね、桃花は」
グウの音も出ない正論、やりたかった事は〈守ること〉、できなかったことは〈守られたこと〉……。
そして何より、愛を舐めていたことを彼女は痛感している……。
そう、身に染みて侮っていた。
力も神も愛も皆の事も何もかも軽視していた。
ただの紙の上の絵空事だと思っていた。
彼女は、その祝福のされ具合に目一杯の驕りをみせていた。
桃花は自称ドMだが、同時に愛され返されるのにも慣れていない、恋愛に関しては、大真面目に不器用だった。
代償も大きかったが。
全てを与え全てを委ねられている。
事の大きさも正直解っていないし、半信半疑である。
でもやはり、彼女は、良かれと思って今日も進むのだ。
桃花は、ああだこうだとイチャモンをつけた気がする、それでも彼女はできる限り対応してくれた。
桃花は、彼女の事が好きなことにに嘘はない。
だけど、こうなることは予想していなかったので頭の中でどう整理すれば良いのか解らない……。
まさに残酷だけれど美しい、彼岸花の世界へようこそ……って感じだった。
心から言いたいことや感謝の言葉は一杯ある。でもただそこに居てくれるだけで嬉しかった。だからこその一言……。
「ありがとう」
「……うん」
2人は、ただ寄り添う、同じ視線を重ねて先を見る……。無償の感謝の言葉。
まあ、それはそれとして。
「ネーム描けそう?」
何事も未来設計図が無ければ、何も始まらないのも事実である。
「いきなりロマンティックムードから現実に引き戻してくるわね……」
いきなり現実に引き戻されたので熱がスン……と冷める……。
「だって小説ばっかりで肝心要のネームが疎かっていうか、だいぶかけ離れてるからさ、私としてはそっちの方が心配かな。無理してない? そっちが心配」
無理というか。どちらかというと、軽くギアを回転させるには小説の方がお手頃で、労力も少なく良く人に伝わり、手が速い、という利点が先行して【焦りすぎている】という結果を招いているのだろう。
「もっと心に余裕を持たなきゃ……」
「そうは言っても……まあ色々わかったあとだから言える事だけど。皆が見てるって意識してる中で、キャラに感情移入しろってのも中々ねえ~……」
湘南桃花は完全に自己投影型なので、キャラを作っていない。つまり〈素のまま〉で喋っているのである。
簡単に言うと、計算型が描けなくなったのである。
「皆が見てる中で〈独りよがりになれ〉ってのも中々難しいわけですよ」
今更、独善的で大嘘つきに無茶な夢を語って、偽善的な舞台演技は難しいワケである。キャラに入り込むというのは、そういう雑念を取っ払って集中して、良い意味でも悪い意味でも〈自分の世界〉に入り込まなければならない。
そのキャラの心情を理解し、〈成りきる役〉に徹しなければならない。それが持続出来ないから仕方なく、自己投影型で甘んじているわけだ。
計算型だと社会的にも〈嘘をついている詐欺師〉呼ばわりされるので、それも作品にとってはマイナス要因である。
簡単に言うと今の作業環境では〈キャラに入り込めない〉苦い状態なわけだ。
別に小説や漫画、作品にダメ出しをしたことはリミッツは一度も無い。
全て受け入れられ、受け止めている。
作業環境が前と同じではない事も深く関係しているが、世界を観て廻って、悪い意味で視野が広がってしまったのである。
その結果、自分だけで無く、隣人にも影響を及ぼすのが。この〈ネーム〉という作業だ……。
「待ってる」
短く、解りやすく、一言でリミッツは言う。
「うん、がんばる」
こちらも短く、解りやすく一言で桃花は帰す。
2人は、抱きつくとか、くっ付くとか、そういうニュアンスでは無く。ただ今のあるありのままをお互いに受け入れて。暖かく、優しく、心穏やかに。
――寄り添った――。




