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Alive In World Online  作者: 一狼
第15章 Judgement
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76.敵対と戸惑いと太陽神

 唯姫と親父が行った方向に向かう俺達だが、トリニティの拾った会話によれば親父達は家で話をしようと言ったそうだ。

 記憶改竄でそう思い込まされているのか、記憶改竄者用に予め用意されている家に向かっているのか。

 まぁ後者だと思うが。もし思い込まされているだけだと向かっている家が無いので矛盾が生じるからな。

 だが家があるという事は最悪見失っても足取りを追えるという事になる。


 けど最善はその前に唯姫達を捕まえて事情を説明して確保しておくことだ。


「鈴鹿、居た!」


 先頭を走っていたトリニティが唯姫と親父を見つける。

 2人は楽しそうに会話をしていたが俺達を見つけると警戒を顕わにし、親父は唯姫を背後へと庇う。


「あのね、あまりしつこいと本当に容赦しないわよ」


「待て待て、争うつもりはない。まずは俺の話を聞いてくれ」


「悪いけど、ナンパ男の話しなんて聞く必要は無いわ。最後の警告よ。今すぐこの場から立ち去って」


 親父は左右の刀を抜きさり俺達に突き付ける。


「だから話を聞けって! お前らは忘れているかもしれないけど、俺達は知り合いなんだよ」


「戯言を。警告はしたわ。排除させてもらうわよ!」


 そう言って親父は左右の刀で俺を斬りつけてくる。

 しかも刀戦技――親父のオリジナルでもあり最強と名高い流派・剣姫二天流を使ってまで。


「桜花十字閃!」


「くっ!」


 俺は咄嗟にユニコハルコンを抜き親父の刀を受ける。


 ――マジで斬ってきやがった。


 そのまま返す刀でトリニティにも刀を振るう。

 トリニティは警戒していたので親父の刀を受けずに直ぐに距離を取って躱す。


「貴女、さっきも話しかけてきたわよね。そのナンパ男に頼まれでもしたのかしら。少しは男を見る目を養った方がいいわよ」


「そっちも真実を見る目を養った方がいいんじゃない?」


 ナンパ男ナンパ男って違うって言ってんだろうが!

 ああ、どうしてこう、話を聞こうとすらしないんだか。俺の記憶が無いだけでこうも対応が変わるのか?

 つーか、親父って結構頑固だったんだな。


「――っ、トリニティ!」


 親父の刀を躱したトリニティに無数の水の矢が迫っていた。

 唯姫が親父の背後から援護で魔法を放っていたのだ。


 トリニティもステップ戦技で避けようとするも親父の攻撃を避けた直後だったので動きが一瞬遅れてしまう。

 そこへ俺が(またたき)で割り込み襲い掛かる水の矢を斬り落とす。


「鈴鹿、助かったわ」


「・・・まさか唯姫まで攻撃してくるとは」


 何とも言えない気持ちで唯姫を見る。

 その唯姫は親父に貰ったアドバイスを実践できるようにと意気込んでいた。


「ブルーちゃん、その調子。いい、こういう時は毅然とした態度で臨むのよ。場合によっては武力を以って相手をねじ伏せるの」


「はいっ!」


 こんな状況じゃなきゃ先達者が若者にアドバイスをするといういい光景なのだが・・・


「だから話を聞けって! 俺はお前らの敵じゃない! ついでにナンパ男でもないんだよ!」


 返事の代わりに飛んできたのは親父の剣姫流の攻撃と唯姫の魔法だった。

 俺は辛うじて2人の攻撃を凌ぐ。

 こうして親父と直にやりあってみたが、流石に強い。伊達に七王神最強と呼ばれてない。


「鈴鹿、一度引こう! 話を聞いてもらえないんじゃどうしようも無いよ!」


 話を聞こうとすらしない拒絶にトリニティはこれ以上は状況が悪化すると撤退を提案してくる。

 流石にここまで大事になっていれば街の住人達も何事かと騒ぎ始めてきた。

 そりゃあ街中で戦闘行為をすれば騒ぎにならない方がおかしい。衛兵が来るのも時間の問題だ。

 このまま事情聴取で拘束されれば親父達も一緒にだろうが、果たしてそれが俺達の不利にならないとは言いきれない。ここは敵の膝元でもある。

 記憶改竄の効いてない俺達だけと言う事もあり得る。


「――っ、クソッ!!

 いいか、これだけは言っておく。必ず、必ず元に戻してやるからな! 絶対だ!」


 俺は情けない捨て台詞を吐きながら衛兵が来る前にこの場を立ち去る。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 トリニティが周囲を警戒しながら先導し、俺達は建物の間を縫って騒動の場から離れていく。


「これからどうする・・・?」


 一先ず現場から離れたところで一息を付き、今後の対策を練ることにした。

 やるべきことは分かっている。唯姫を救う事と日輪陽菜をぶっ殺すことだ。


「鈴鹿の言いたいことは分かるよ。だけどそれをどうやって実現するか、でしょ?

 少なくとも今のユキ達は話しすら聞いてくれないからどうやってその段取りを付けるか。もし力づくになったとしても今みたいに街中じゃなく、どっか都合のいい場所に誘い込むとかしないと」


「・・・力づくは最終手段だ。フェンリル相手にその手は難易度が高い。唯姫がサポートに付くから尚更だ」


 親父だけでも手に余るのに唯姫の後方支援の魔法はかなり厄介だ。

 それに力づくだと余計に話が拗れるような気がする。


「うーん、だとすると話し合いだけど・・・既に拗れている気がするのよねぇ」


「フェンリルがああも頑固だとは思わなかったよ。こっちの言い分すら聞きやしねぇ。

 そういやトリニティは先に潜入した時に調べた情報とかは無いのか?」


「あたし達もそんなに大して調べられなかったわよ。住人は普通に見えるけど日曜創造神の信者だからね。それも盲目的な。

 一応この都市にも盗賊ギルドっぽいのはあるみたいだけど、その前にお爺ちゃんがおかしくなっちゃって・・・」


 日曜都市は他の都市と違い普通の住民と言う事でいい住民もいれば悪い住民も居るらしい。

 つまりこの都市には裏の世界も存在すると言う事だ。

 だがトリニティはその盗賊ギルドっぽいのにあたることはしないみたいだ。

 理由は先ほど述べた住人が日曜創造神の信者にあるらしい。


「大人も子供も衛兵も犯罪者も全員が日曜創造神を無条件に崇めているのよ。当然盗賊(シーフ)もね。

 もしかしたら魔都に掛けられた記憶改竄で日曜創造神に不利になる情報は制限されているかもしれないわ」


「人づてに情報を集めようとしても日輪陽菜の手の上って訳か」


「その代わりって訳じゃないけど、ルナムーン様から言われていたことを思い出したわ。

 鈴鹿、サンフレア神殿に行きましょう。何かあったらルナムーン様からサンフレア様を頼るように言われていたのを思い出したの」


「ここは魔都だぜ。サンフレアもその影響を受けてないって言えるのか?」


「それは行ってみないと分からないわね」


 だが今の俺達に出来る手段は限られている。ならばまずはサンフレア神殿に行ってみるのも一つの手ではないかと判断し、向かってみることにした。




◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 日が落ちてから数時間が経ち、流石に周囲に人気が殆んど無くなっていた。

 俺達は出来るだけ人目に付かないようにサンフレア神殿に入る為、行きかう人々が居なくなるのを待っていたのだ。

 先程の騒動で俺達がお尋ね者になっている可能性や、監視されている可能性のある人の目を逃れる意味合いもあった。


 周囲を警戒しながらサンフレア神殿の入り口に足を運ぶが、中から薄暗い光が灯っていても人の気配はまるっきり感じられなかった。

 と言うか、人が生活している雰囲気は感じられない。


「誰も居ないのか・・・?」


「少なくともサンフレア様は居ると思うけど・・・」


 慎重に神殿の中を歩いて行き1つ1つ部屋を覗いてみるも、やはり人が居た様子は感じられなかった。

 ここがルナムーン神殿と同じ作りになっているのなら、残る1つの最奥にある大部屋は神の間と言う事になる。

 おそらくそこに太陽神サンフレアが居るのだろう。


 ゆっくりと扉を開けると、部屋の奥に1人の女性が佇んでいた。

 真っ赤な燃える様なストレートの髪に、整った美しい顔をしている。ただやや釣り目なところが気が強い印象を与えていた。

 体つきも出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいる、所謂ボンキュボンの艶めかしい体型だ。

 そして雰囲気はそこに居るだけで存在感に圧倒されながらも、その存在感故に目が離せないくらい引き付けられる。


「おや、こんな夜更けに来訪者とは珍しいですね。いえ、ここはようこそおいで下さいましたと言うべきですか。

 本当に彼女の言う通り訪れるとは、余程貴方方を信頼されているのでしょう。しかも日曜創造神の影響を受けていないとは・・・これは予想外です」


 ん? 彼女って誰だ? 何か俺達が来るのを知っていたようだな。

 いや、まずは自己紹介からだ。少なくとも今の俺達はサンフレアにとって赤の他人であり、見方を変えれば不法侵入者だからな。

 サンフレアの言う彼女が誰かはその後だ。


「あんたが太陽神サンフレアか。俺は鈴鹿。こっちはトリニティ。こんな夜更けに悪いと思うけど、色々都合があってな。そこは勘弁してもらいたい」


「ちょっとちょっと! 鈴鹿、相手はサンフレア様だよ! その態度はマズイって!」


 トリニティは俺の態度に流石にマズイと思ったのか慌てて謝罪するように言ってくるが、ルナムーンの時と同じような態度だぞ。

 と言うか、ルナムーンの時もあまり敬った態度じゃなかったな。やっぱり拙かったか?

 だが当のサンフレアはそんな俺の態度を咎めることも無くそのままで構わないと言ってきた。


「いいえ、構いませんよ。上辺だけ敬われても意味のない事ですから。本当に心の中にある想いこそがその者の信心となり、私の加護を受ける器となるのですから。

 そう言った意味ではこの都市の住人には私の加護が届いてませんね」


「あんたは・・・この都市に何が起きているか知っているのか?」


 サンフレアの言葉は日曜都市が誰に支配されているかを指しており、それによって引き起こされている記憶改竄の事を言っているのではないかと思い思い切って聞いてみた。

 これでサンフレアも日輪陽菜の手先だったら笑えないな。自ら敵の懐に潜り込んだことになる。


「ええ、知ってますよ。日曜都市サンライトハートを覆っている日曜創造神の力が人々の記憶を書き換えていることを。

 そして当神殿はその力を退ける唯一の反抗勢力圏とであることも」


 その言葉に俺とトリニティは思わず顔を合わせる。

 つまりサンフレアは日輪陽菜と敵対していると言う事だ。まぁ、サンフレアが味方のふりをした敵勢力の可能性もあるが。


 一応警戒をしながら俺達はサンフレアから日曜都市の状況や日輪陽菜やお付のJudgementとブルブレイヴの事を聞いた。


 記憶改竄は定期的に一定時間ごと効果が発揮され、改竄後は日曜都市の住人の記憶を植え付けられるらしい。

 トリニティ達が日曜都市に潜入しても最初の頃は定期転落が取れていたのはその為だ。


 この記憶改竄の能力は日輪陽菜の創造神としての能力であり、日曜都市全体を覆っていて都市内部に居れば確実に影響を受けるのだが・・・

 どういう訳か俺とトリニティにはその効果が効いていない。これはサンフレアも予想外だったらしく、俺達がこのサンフレア神殿を訪れたのには驚いたらしい。


「記憶改竄の影響を受ける前にサンフレア神殿に居ればその効果を受け付けないのですが、最初から影響がない者が居るのには驚きました」


「サンフレア神殿はルナムーン神殿みたいに何かしらの特殊効果が発揮されているってことか?」


「どちらかと言うと、私の太陽神としての、そして神秘界の騎士(アルカナナイト)Sunとしての能力によるところが大きいですね。

 同じ太陽と言う属性であるため、日曜創造神の能力の効果を相殺していると言ったところですか」


 つまりサンフレアの威光までは日輪陽菜の能力は及ばないという事か。そして神殿もその効果を受け記憶改竄から守る結界みたいな役割を果たしていると。


 因みにサンフレア神殿にサンフレア以外誰も居ないのは、同じ太陽属性である日輪陽菜を太陽神として崇めている事と、サンフレア神殿が日輪陽菜の能力が届かない事が影響しているらしい。

 信者の記憶を改竄してサンフレア神殿に近づけない様にしたり、神殿その物を記憶から消しているとか。


 しかしこうなるとサンフレアがこの神殿から動けないのが痛いな。

 彼女が居れば記憶改竄の影響を受けずに行動が可能になるのだが。

 だが、少なくとも唯姫達をサンフレア神殿に連れて来れば記憶が戻る可能性があることが分かっただけでもサンフレアに会った甲斐がある。


 ただサンフレアが日輪陽菜の能力を打ち消した時の感触によれば記憶改竄は能力の副次的効果であり、本当の能力の効果は別にあるという。

 サンフレアでも日輪陽菜の能力の正体は正確には分からないという事だ。


「だから期待している所申し訳ないですが、お連れの方を神殿に連れてきても記憶を戻すことが出来るのかは分かりません」


「いや、それでも可能性は無いわけじゃないから。それにここに居ればこれ以上記憶改竄は避けられるからな」


 俺とトリニティに記憶改竄が効いていない事を知れば、日輪陽菜が俺達の関係者である唯姫達の記憶を操作して完全に敵対させるか、又は人質にされる可能性もある。

 それを考慮すればサンフレア神殿で唯姫達の安全を確保するのに十分役に立つ。

 まぁ、肝心の唯姫達を説得するのに苦労はしそうだが。


 一番の解決策は日輪陽菜を倒す事なのだが。

 その為の障害がJudgementとブルブレイヴの2人だ。


 Judgementの能力である『審判』は、日輪陽菜に敵意悪意を持つ者に裁きを下すと言うものだ。

 捌きと言っても『天界の使徒・Heaven』のように裁きの炎(ジャッジメント)で裁きを下すわけでもなく、敵意悪意を持つ者の前に唐突にJudgementが現れると言う。

 そしてその者に対し武力で捌きを下す。


 それ故にJudgementはありとあらゆる武器に通じ、武器を持たずに素手でも敵と渡り合え、魔法を使っても全ての属性に通じている最強の神秘界の騎士(アルカナナイト)と言う噂でもある。

 確かにこういった基本的な能力を極限まで鍛え上げた奴の方が地味に強かったりする。

 寧ろ能力に頼っている神秘界の騎士(アルカナナイト)の方がまだやりやすいぞ。


 しかもJudgementは倒されても復活するらしい。

 実は当初、俺達の他にも日輪陽菜の能力が完全に効かず、不信感や反逆心を持つ冒険者やアルカディア人が居たのだと言う。

 今ではそんな不穏分子が排除され、完全に日曜都市は日輪陽菜に支配されているが。

 その中で2度程『審判』を受けた冒険者が奇跡的にJudgementを倒した事があったらしいが、その数時間後に再び現れたJudgementに裁きを下されたと言う。


 その事からJudgementは不死身と言われ、日曜都市に裁きを下す『審判』として君臨して日輪陽菜に逆らう者は居なくなってしまったと。


 だが俺はJudgementは不死身ではないと確信している。

 もし本当に不死身だとしたら八天創造神が不老不死の法を狙っているのに矛盾しているからだ。

 まぁ日輪陽菜が不老不死の法を手に入れJudgementにそれを施したとも言えないが、それだと時期的にずれが生じてしまうからだ。


 少なくともJudgementは倒すことは可能だ。問題はその復活をどう阻止するかだな。

 そこにJudgementの攻略法があるのだろう。


 そしてもう1人の日輪陽菜のお付の神秘界の騎士(アルカナナイト)のブルブレイヴだが、Judgementに劣らず歴戦の強者だと言う。

 まぁ勇猛神の元になったの日本神話の素戔嗚尊だった事から分かっていたが。

 ブルブレイヴは魔法戦闘は苦手らしいが、極限まで期待上げた肉体は何に於いても勝るらしい。

 純粋に期待上げた筋肉は爆発的な力を発揮する。

 所謂脳筋らしいが、ただの脳筋じゃなく戦闘センスを兼ね備えたれっきとした強者だ。


 サンフレアはブルブレイヴが日輪陽菜に付いた事を聞いて呆れながらにブルブレイヴの情報を教えてくれた。


「全く、あの弟は何時になったら落ち着くと言う事を覚えるのですか。

 鈴鹿さん、トリニティさん、遠慮はいりません。弟が泣いて謝るまで徹底的に叩きのめしてください」


「お、おう・・・」


 サンフレアの怒りとも殺気とも言えない迫力に俺は思わず慄きながらも答える。

 神話でも素戔嗚尊は天照大神サンフレアに色々迷惑を掛けているからなぁ。サンフレアが怒るのは無理もない。

 現に今だってブルブレイヴが勝手に動き回っている事でサンフレアとルナムーンは己の神殿から離れることが出来ないのだから。


 最後にサンフレアは粗方日輪陽菜たちの情報を俺達に伝えると、一振りの剣を持ってきてトリニティに差し出す。


「トリニティさん、これを」


 その剣を見て俺達は驚いた。

 何故ならその剣はトリニティがホイルフォー山で無くしていた特殊ギミックが組み込まれた蛇腹剣だったからだ。

 それが何故サンフレア神殿にあるのか。


「これは貴女の姉・デュオさんが持ってきたものです」


「えっ!? お姉ちゃんが神殿に来ていたのですか!?」


 サンフレアの話によれば俺達よりも前日にデュオがサンフレア神殿を訪れていたのだと言う。

 デュオも魔都の洗礼を受け記憶を改竄されていたらしい。

 デュオの他にもウィル、ベルザ、ソロ、フレンダも日曜都市に来ているらしいが、やはり記憶改竄され目的を忘れ都市の住人として生活を満喫していたそうだ。


 だがデュオは日曜都市の生活に疑問を感じ、何かに導かれるかのようにサンフレア神殿に辿り着き奇跡的に記憶を取り戻したのだ。

 そして全てを思い出したデュオは改めて日曜都市の攻略に動き出し、その内の1つとしていつか来るであろうトリニティにThe Hermitから取り戻した蛇腹剣をサンフレアに預けたという事だ。

 トリニティなら日曜都市攻略の為サンフレア神殿を訪れるだろうと。


「お姉ちゃん・・・」


「それで、デュオは?」


「デュオさんは先行して日曜創造神達を倒すための手掛かりを見つける為、日曜都市を探っています。

 同じく記憶を取り戻したウィルさんも一緒に行動しています」


 そうか、ウィルも一緒か。この魔都で1人で先行していると聞いた時は心配したが、ウィルと一緒なら多分大丈夫だろう。

 あの2人のコンビならS級冒険者に引けを取らないだろう。


 残念ながら記憶を取り戻したのはデュオとウィルの2人だけで、他の者達は未だ魔都の呪縛に捉われたままだと言う。


 俺の目的は唯姫を取り戻す事と日輪陽菜を殺す事。

 サンフレアが言うには記憶を取り戻すのはほぼ不可能だと言う。デュオが記憶を取り戻したのは奇跡らしい。

 一番確実なのは日輪陽菜を倒すことで記憶を取り戻す事。なので今は日輪陽菜を倒すことに専念した方がいいと。


「唯姫達が日輪陽菜に人質にされる可能性がある。ここに匿わせてもらいたいが頼めるか?」


「はい、構いませんよ。ですが先ほども申しあげたとおり、あくまで当神殿は日曜創造神の能力が及ばないだけで記憶を取り戻す効果はありません。

 今のその者達の説得が必要不可欠になりますが」


「ああ、それは分かっている。何としても連れて来るからその時は頼む」


 サンフレアは快く引き受けてくれたので後は唯姫達を連れて来るだけだ。

 その為にも俺達より情報を持っているであろうデュオ達に合流した方がいいだろう。

 多分デュオもサンフレア神殿を拠点として見ているだろうからまたここに来るだろうからその事もサンフレアに伝えておく。


 そうして俺達は深夜に差し掛かろうとしているにも拘らず行動を起こそうとしたところ、サンフレア神殿の外に既に敵――Judgementが待ち構えていた。


「これまで散々私に見向きもしなかったのに今更脅威を覚えたのでしょうか・・・?

 それともまったく日曜創造神の能力を受け付けなかった鈴鹿さん達を見逃せなかったのでしょうか」


 サンフレアは神殿内に居ながら外に待ち構えていたJudgementの存在を感じ取っていた。

 外に出ようとした俺達に警告をしてくれる。


「おそらくだが後者だろうな。デュオと違って俺達は全く記憶改竄が効かなかった不穏分子(イレギュラー)だ。

 お付の神秘界の騎士(アルカナナイト)としても軽視できないだろう。そして今居る場所が同じく日輪陽菜の能力が及ばないサンフレア神殿とくれば尚更だ」


 相手に取って2つの脅威が重なっているんだ。流石に無視は出来ないだろう。

 と言うか、その辺りの警戒がまるっきり抜けてたな。

 さてどうしたものか・・・


「で、どうする? このまま戦う? サンフレア様によればJudgementは戦うべき相手じゃないって言うけど」


 トリニティも出来ればJudgementは相手せずにどうにかして切り抜けたいらしい。

 そりゃあ倒しても復活するかもしれないともなれば相手するだけ時間の無駄だ。


「適当にあしらって隙を見て抜け出すか。まぁ最悪倒すのも1つの手だな。どれくらいで復活するか分からないが、その間は時間稼ぎになるだろう」


「・・・簡単に倒すって言ってるけど、相手は日曜創造神付きの神秘界の騎士(アルカナナイト)なんだよ。相変わらず無茶を言うわね」


 何かトリニティを呆れさせたらしい。

 ただ障害物が邪魔だから倒そうって言っただけなのに。解せぬ。











次回更新は3/9になります。

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