73.月曜創造神と遅れてきた勇者と死兆星
ケイジ曰く、月夜神軍に加入する際に『契約』を結んでいたそうだ。
天と地を支える世界から来た冒険者たちはかなりの優遇された内容に自ら進んで『契約』を結ぶ。それがある種の罠であるとも知らずに。
彼らからすれば雇用に関する感覚での契約だったんだろうが、その実、ケイジにとっての死兵となるための『契約』だったのだ。
まして、現代社会でもまともに契約内容を読む者は少ない上、冒険者の殆んどは10代後半~20代前半の若者だ。契約内容なんかはお座なりだろう。
その結果がこれだ。
「敗北を条件に、私が『契約』を発動すれば彼らは魂を燃やして死を恐れぬ兵と化します。
痛みも感じず、死を恐れず、手足を失おうが、ただひたすら敵を貪る。
さぁ、何処まで彼らに対抗できますかな?」
と、まぁ、ケイジはドヤ顔で月夜神軍をけしかけて来たんだが、実際の所相手が悪かった。
親父達は一時は倒れたはずの月夜神軍が不気味な風貌となって襲い掛かって来たので戸惑いはしたが、伊達に世界を救った七王神の称号を掲げてはいない。
先程までは相手を無力化するのを優先していたが、助からない死兵と化したことで親父達は容赦なく最後の燃え尽きる魂を狩っていった。
親父の二刀流はその首を刈り、ヴァイさんの拳は容赦なく心臓を突き抜ける。アッシュの魔法は大容量のシャイニングフェザーでミンチにしていく。
仕方なしとは言え、魂を奪うと決めたその切り替えの良さは流石は歴戦の強者と言えた。
リーダー格の男もケイジの『契約』により死兵と化したが、やはりこれも唯姫とトリニティに退かされていた。
唯姫は複数の祝福を受けし者だ。所持している祝福の数がハンパない。
ゾンビのように迫りくるリーダー格の男に対し、唯姫は炎纏装を纏い、怪力で殴り、天駆・瞬歩で戦場を駆け、魔力増幅・魔力蓄積で魔法を強化し命中で全弾命中させていく。
そして止めの取って置きの1つ、S級祝福・腐食でリーダー格の男の右腕を奪い取り攻撃力を下げさせる。
唯姫は親父達と違い、相手の魂を奪う事に躊躇ったのか、これ以上の攻撃は出来ないでいた。この辺は覚悟や経験の差だろう。
その点、トリニティは当初俺達を騙した盗賊らしく容赦なくリーダー格の男の魂を奪う。
ルフ=グランド縄剣流で剣とロープを駆使して次々と傷をこしらえ、リーダー格の男は大量の血を流し次第に動きが鈍くなり最後には地に伏せた。
まぁ、幾ら死や痛みを感じない死兵とは言え、まだ生きている人間だ。
大量の血が流れれば動けなくなるのは道理だ。
そして次々と死兵があっさりと倒されてさぞ苦い思いをしていると思われたケイジだったが、俺の思惑とは違いそれでも尚平然とした様子で俺とラヴィを相手にしていた。
いや、寧ろ薄ら笑いすら浮かべていた。
「何が可笑しい?」
「いえいえ、死兵が思ったよりも役に立たなかったのは予想外でしたが、まぁ予定通りと言えば予定通りだと思っただけですよ」
そう言いながらケイジは俺の刀を避け、ラヴィの錫杖を掌で受け止められそのまま握り込まれてしまう。
「なっ!?」
まさか受け止められるとは思わなかったラヴィは思わず錫杖から手を放し距離を取った。
どういう事だ? さっきまでと動きが違う。僅かずつだが動きや力が強くなった気がする。
・・・まさか。
「その様子だと気が付いたようですね。そう、何も彼らと交わした『契約』は死兵を作る事だけじゃないんですよ。
彼らが力を振るう為に魂を消費すればするほどその消費された魂は私に流れ込むようになっています。
つまり、彼らが倒れれば倒れるほど私が強くなっていくんですよ」
黙っていても魂が消費され、その分ケイジに流れる。
倒しても残った魂がケイジに分け与えられる。
どっちにしてもケイジが強くなるのは止められないと言う事か。
「なるほどな。確かにそれは厄介だな」
「・・・ふむ、とても厄介だと思っているようには見えませんが」
まぁ、そりゃあな。
確かにケイジが強くなっていくのは厄介なのは間違いない。
だが、急激に10人もの魂を吸収して処理しきれるものだろうか?
ケイジが契約の悪魔――魂を扱う事に長けた悪魔だろうが、ここまで急激な魂の増加は危ういものじゃないだろうか。
仮に全てを受け入れる器があったとしても、急激に増加した力を制御できるか?
俺も経験があるから分かる。
急に目覚めた鬼獣の力に俺は自我を失った。
大きすぎる力に溺れてしまったのだ。
何度か鬼獣化を繰り返し、時にはトリニティの協力を得て今は辛うじて制御することが出来ている。
だから間違いなく言える。今のケイジにはその力を上手く扱う事は出来ないと。
つけ入る隙があるとすればそこだ。
「はぁっ!」
ケイジの鋭い手刀が俺を襲う。
が、思った通り威力はありそうなものの、力を制御できない所為かやや大振りで軌道を読みやすい。
俺は半歩ずれることによりケイジの手刀を躱し、すれ違いざまにユニコハルコンで脇腹を斬りつける。
「くっ、今の私に傷をつけるとは大したものですね」
「ははっ、寧ろ今のお前の方がやりやすいぜ? 違法ドーピングで勝とうなんざ虫が良すぎるんだよ」
「ほざきなさい。彼らが倒れれば倒れるほど私は強くなります。そのような口を利いていられるのも今のうちですよ」
ケイジは自分が勝つことを疑ってなさそうだが、ありゃあどう見ても力を使いこなせてないな。
ラヴィもそんなケイジの様子を見ては攻撃をしっかり見極め、素手のままでも確実にダメージを与えていった。
「ラヴィ、少しばかり引き付けておいてくれないか? あの不遜な勘違い野郎から目を覚ます一撃を与えてやる」
「了解よ。流石主人公君ね。決め所も正に主人公」
どうやら唯姫たちや親父達の方も決着が着きそうだからな。
こっちも一発決めて終わらせてやる。
ラヴィがケイジが捨てた錫杖を拾い上げ、杖戦技でケイジを翻弄する。
ケイジの力は確実に強まってはいるが、ラヴィの動きは捉えきれないでいた。
俺はその間、7種の属性魔法を唱え鞘の内側に掛けていき、ユニコハルコンを鞘に納め鞘の内側にため込んだ融合魔法をユニコハルコンに魔法剣として纏わせる。
俺の準備が整ったのを確認したラヴィは一撃を足下に放ち一時的にケイジの動きを封じる。
俺はその隙を狙い一気に間合いを詰めて止めの一撃を放つ。
「剣姫一刀流奥義・天衣無縫!」
俺の振り抜いた居合の一撃がケイジの体に右脇腹から左肩にかけての大きな傷跡を付ける。
その様子にケイジは信じられない表情で自分の体を見ていた。
まぁ、絶対に勝てると思っていたのに敗北が決定したんだからな。
とは言え、俺もケイジのその頑丈さに驚いていた。
本来なら天衣無縫の威力ならケイジの体を上下に分断できるのだが、大勢の魂を吸収したことにより頑丈になった所為か、ケイジに傷を付けるだけに止まったみたいだ。
だが、この傷は致命傷だ。このまま放っておいてもケイジの命が尽きるのは間違いない。
「がはっ・・・これで、勝ったとお思いですか? 残念ですが私はこれでも忠義者でして。全ては我が主の為に」
最早打つ手はないと思っていたのだが、ケイジはニヤリと笑い、右手の手刀を自らの心臓に突きたてた。
「なっ!?」
「ちょっと!? 何しているのよ!」
「ごぼ・・・これで・・・『契約』不履行・・・となります」
ラヴィが慌ててケイジに駆け寄るが、ケイジは既にこと切れていた。
ケイジを揺り動かすラヴィの表情は複雑そうだった。
この2人の間にどんなことがあったのかは聞いてないから何とも言えないが、元は夫婦だ。互いに憎みあうだけの関係でもないのだろう。
だが俺はそんなラヴィの様子を黙って見ていることが出来なかった。
ここに来てケイジが何故自らの命を断ったのか、判明したからだ。
俺は全身が引き裂かれるような痛みに堪えきれずその場に蹲る。
「鈴くん!?」
「鈴鹿!?」
リーダー格の男を倒した唯姫とトリニティは、俺の様子がおかしい事に気が付いて慌てて駆け寄ってくる。
その間にも俺の体に走る痛みは治まることは無く、次第に一点に集中する。
最後には俺の中から何かが抜けるように出て行った後、全身に気怠さが襲う。
「あははっ! よくやったわ、ケイジ! 貴方は僕の最高の鑑よ!
貴方ほどの神秘界の騎士を失うのは勿体無かったけど、これで・・・これで私は不老不死になれるわ!」
重い体を無理やり起こして藤見を見てみれば、彼女の手元には光の球――秘宝の欠片があった。
どうやら俺から抜き取られた最後の秘宝の欠片らしい。
そう、ケイジが自ら命を断ったことにより、俺がケイジと藤見を殺すことが出来なかったと言う『契約』の不履行となったのだ。
それにより『契約』不履行に従い俺の中の秘宝の欠片が抜き取られたのだ。
くそっ、まさか俺に殺されないことで『契約』不履行にするそんな裏ワザがあったとは。
いや、ケイジは最終手段として巧みに『契約』にその事を盛り込んでいたのだ。
だが幾ら最終手段とは言え、自らの命を断つだなんてどんだけ藤見に忠義を払っているんだよ。
「これで全ての、7つの秘宝の欠片が揃ったわ。
後は秘宝の欠片が1つの秘宝に纏まれば不老不死の法が手に入る・・・くふふ、あはは、笑いが止まらないわ。
さぁ! 不老不死の秘宝よ、私に永遠の命を与えるのよ!」
何処から取り出したのか、親父達七王神から抜き取った6つの秘宝の欠片が藤見の周囲に浮かび上がる。
そして俺から奪い取った最後の秘宝の欠片も同時に浮かび上がり、7つの欠片が円を描くようにクルクル回る。
クルクル、クルクルと。
クルクルと回り続け、一向に1つの秘宝になる気配が無い。
「何で!? どうして1つの不老不死の秘宝にならないのよ! これじゃあ不老不死になれないじゃないの!」
不老不死になりさえすればそれで決まる。
そう思っていた藤見だったが予定外な事態にただただ動揺を見せていた。
これはチャンス、か?
俺は秘宝の欠片が奪われ前の親父達の様に脱力状態になってしまったので動けないが、親父達や唯姫達が居る。
動揺している藤見に今のうちに襲い掛かれば反撃されないまま倒せるのでは?
そう考えていたのだが、それは1人の闖入者によって事態はまた変化する。
「残念じゃが秘宝の欠片はまだ全部は揃ってはおらんよ。ついでに言えばお主は永遠に全ての秘宝の欠片を集めることは出来やせんよ」
動揺している藤見にそう話しかけたのは地下広場への入り口に悠然と立つ大柄な老人――謎のジジイだった。
左右にはリュナウディアとアイリスが控えていた。
「お爺ちゃん!」
トリニティは謎のジジイとの久々の再会に喜びを顕わにする。
「うそ・・・本当にGGだわ・・・生きてた・・・」
「・・・マジか。マジで生きてやがる。すんげー老けているけどGGじゃねぇか」
「実際にこの目で見るまでは信じられなかったけど、本当にGGだ・・・」
親父、ヴァイさん、アッシュの3人は謎のジジイを見るなり動揺を隠せないでいた。
美刃さんだけは平然としていたが、ここに来て登場した謎のジジイにどう対処すべきか動けないでいた。
ジージー? 謎のジジイじゃないのか? やっぱりと言うか、謎のジジイって親父達の知り合いみたいだな。
知り合いだとすれば、だとすれば色々と辻褄が合う気がする。
謎のジジイは天地人なんかじゃなく異世界人なのかもしれない。それも親父達の知り合い――それも動揺するほどの人物ともなれば、Angel Inプレイヤーの可能性も高い。
他にも異世界人なのに何故天地人とかAIWOnの裏事情に詳しすぎる事とか問い質したい事が多々あるが、今は不老不死にならんとしている藤見の事だろう。
まぁ、秘宝の欠片集めに失敗したっぽいが。
「みんな久しぶりじゃの。まぁ積もる話は後にして・・・月曜創造神・藤見月夜よ、そこまでじゃな。
お主の忠実な僕はもうどこにも居らん。お主を守ってくれる塔と悪魔の騎士は居らんのじゃ。ここらで大人しく縄に付いた方が身のためじゃと思うんじゃが?」
「ふざけないで!
20年よ。20年以上も時間をかけてやっとここまで来たのよ。それを諦めろと? あと1歩で望みが叶おうとしていて諦められるわけないじゃない!
そう・・・あと1歩なのよ。クソジジイ、あんた言ったわよね? 秘宝の欠片は全て揃ってないと。あんたは知っているのね、残りの秘宝の欠片を」
「さぁ、それはどうじゃろうな。もし知っていても教えるとでも?」
「知っているのね! 教えなさい! 私に、不老不死の秘宝を与えるのよ!」
謎のジジイは恍けていたが、誰がどう見ても知っているとしか思えないよな。
藤見は食って掛かるが、実際には口だけで何も行動には移さない。
「どうした? 掛かってこんのか? まぁそうじゃろうな。お主が創造神として司るのは【心】。より正確に言うのならAIを司る開発者じゃ。お主には他の八天創造神と違ってなんの力も持たない創造神じゃ。
じゃから塔や悪魔と言った強力な神秘界の騎士を従えておったんじゃがな」
「・・・そうよ。私はAIWOnの創造で携わったのはAIよ。AIの権威者である榊原源次郎には及ばないけど、それでも自然な対話が可能なほどの実力があると自負しているわ。
その甲斐あってAIWOnの天地人やアルカディア人は人間と変わらないくらい優秀なAIに育ったわ。まぁ榊原源次郎の研究データも活用させてもらったけどね。
そして一度AIが完成されてしまえば私が干渉できる部分は殆んど無い。そう言った点では他の八天創造神よりは組みやすいでしょうね」
そうか、藤見には他の八天創造神に備わっていた特殊能力的なものは無いのか。
だから謎のジジイが堂々とその身を藤見の前に晒して居るわけだ。
だが藤見も目の前に迫った不老不死を諦めるわけがない。
最後の最後まで悪足掻きをし始めた。
先程まで必死の形相だった藤見は途端に落ち着きにやりと笑う。
「悔しいけど今は引いてあげる。そして必ず残りの秘宝の欠片を探し出して見せるわ!」
「む? 逃がすと思うのか? これだけ居るメンツの中で逃げおおせるとでも?」
「ふふ・・・確かに私はあんた方には敵わない。けどね、逃げる事なら可能なのよ!
A・○・フィールド!」
高らかと叫ぶ藤見の前に某新世紀アニメのロボットが放つようなバリアが展開した。
「某新世紀アニメ同様、このバリアは私が司る【心】が作りだした世界を拒絶するバリアよ! 何人たりとも破ることは敵わない!
あははっ! 余裕ぶっこいて目前で逃がす間抜けさを後悔しなさい!」
そう言って藤見は俺達の背後にある地下広場の入口へ向かおうとする。
勿論それを見逃すほど親父達も甘くは無い。
絶対拒絶と言っているバリアに向かって攻撃を仕掛ける。
が、藤見の宣言通り親父達の攻撃は届いていなかった。
精々藤見の歩みを鈍らせるくらいにとどまっていた。
「ちっ、悪足掻きをしおってからに」
謎のジジイは呪文を唱え、影から巨大な黄金のハンマーを取り出す。
如何にも何でも壊しそうなハンマーだが、俺はそれに待ったをかける。
「待て。あいつは俺の獲物だ。あいつを殺すために俺はここに居る」
「ちょっと、鈴鹿、無茶したら駄目よ」
「そうよ、秘宝の欠片を抜かれて力が入らないんでしょ?」
トリニティと唯姫が必死になって立とうとしている俺を横から支えようとする。
「お主がフェンリルの息子の鈴鹿、じゃったか。前にも一度会っておるな。あの時よりも勇ましくなっておるのぅ。若者の成長は年寄りの予想をはるかに上回る」
ああ、以前に獣人王国で会った時の事か。
だが眩い目で見ていた謎のジジイは一転して半眼で俺を見定める。
「とは言え、今のお主に纏わりつく暗い気はあまりいいものとは言えぬのぅ。
お主のやろうとしている事は決していい結果にはならんぞ? お主にとっても周りにとっても」
「関係ねぇよ。俺はあんなことをしでかしたこいつらにきっちりケジメを取らせるつもりだよ。その手段がぶっ殺す事だってだけだ」
「鈴くん・・・」
俺の復讐に思うところがあるのか、唯姫が悲痛な表情を見せる。
おそらく復讐を止めろとでも言いたいのだろうが、唯姫も自分の身に起きたことを思い起こせば俺を止めることは出来ない。
唯姫だって負の感情を持つ人間だ。恨みや憎しみを抱いてもおかしくは無いのだ。
そしてそれは謎のジジイも同様らしい。
「・・・まぁ儂もお主を責めれるほど清い訳じゃないからのぅ。儂だって世の中の理不尽に憤ってやらかしたことがあるし、この歳まで生きていると人には言えないやましいことだって1つや2はあるからの。
いいじゃろう。お主が決めてこい。藤見月夜の生死は問わぬ。お主の思う通りにするがよい」
「へっ、感謝するぜ。謎のジジイ」
俺は唯姫とトリニティを下がらせ、俺の中の鬼獣を呼び起こす。
怒りを起点とし、内側に沸き起こる激しい炎が全身を駆け巡る。
全身に広がった炎が次第に俺の体を人の物から鬼と獣の物へと変化する。
「ガ・・・グルァァァァァァァァァァァァアァァッァ!!!」
鬼獣化したことで全てを壊したい衝動に駆られるが、最初の頃ならいざ知らず、今は何度か鬼獣化したことで自我を保っていることが出来るようになった。
まぁトリニティの叱咤や、俺の心に直接話しかけるユニコハルコンも居る事だしな。
【主よ、今回は最初から自我を保っているようだな】
「ああ、目の前に標的が居て我を忘れたままぶっ殺すほど腑抜けちゃいないさ」
【それは頼もしいな。さて、相手は【心】のバリアを張って堅牢な守りを持つ者だ。あれを破ることは可能なのか?】
「誰にものを言っている。今の俺は怒りに満ちた鬼獣だぜ。向こうが拒絶してもこっちの怒りを強引にでも届けるぜ」
それに某新世紀アニメでもA・○・フィールドにA・○・フィールドをぶつけ干渉できたからな。
【心】で拒絶するなら【心】をぶつけて干渉するまでだ。
俺はユニコハルコンを握りしめ、大地をしっかり踏みしめる。
さっきまで脱力状態だったのを微塵も感じさせず、鬼獣の力が体中に溢れかえっていた。
俺の攻撃を察した親父達は藤見から距離を取った。
それを確認してから俺はありったけの力を込めて一気に藤見のバリアを目指して突進する。
「剣姫一刀流・瞬刃閃牙!」
瞬刃の突き技・瞬刃閃牙が藤見のバリアに突き刺さる。
いや、突き刺さろうとするも某新世紀アニメのようにユニコハルコンを拒絶していた。
ちっ、鬼獣化の瞬刃でも駄目かよ!
「はははっ、無駄よ! A・○・フィールドは拒絶の絶対防御壁よ! ・・・って、えええっ!?」
俺の攻撃を防いで高笑いしていた藤見が目の前でユニコハルコンがじわじわとバリアを侵食していく様を見て驚きの声を上げる。
「残念だけどそのバリアは絶対防御壁にはなりえない。何故なら私は『恋愛の女王・Lovers』。心を操作できるのが貴女だけじゃないのよ!」
そうか、ラヴィが藤見のバリアに干渉して中和してくれているんだな。
俺が持てる力を振り絞ってユニコハルコンを押し込むたびに少しずつバリアの中に剣先がのめり込んでいく。
「い、いや・・・! 来ないで! いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ・・・!
私はこんなところで死ぬべきじゃないのよ!」
ズンッ!
遂に根元までユニコハルコンが入り込み、バリアに完全に亀裂が入った。
俺はユニコハルコンを手放しその亀裂に両手を突っ込み思いっきり左右に引き裂く。
バリアは音を立てて崩れ去り、俺は障害が無くなった藤見目がけて手刀による一撃を放つ。
「てめぇのしたことをあの世で悔いな」
俺の手刀は藤見の心臓を貫いた。
「・・・う・・・そ」
そして藤見は自分の身に何が起きたか信じられないまま・・・死んだ。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「あまり誉められたものじゃないけど、鈴鹿の恨みは大分晴れたのかしら?」
俺が止めを刺した藤見の亡骸を見て親父はそう問いかけてくる。
「・・・どうだろうな。実際の所、俺が直接手を下した八天創造神はこれで2人目だ。
他は・・・余計な邪魔が入ったりして不完全燃焼だしな」
まぁ邪魔が入らずに全員の八天創造神を手に掛けたとしても俺の気持ちは晴れることは無いだろうな。
よく復讐は何も生まないと言うが、まぁその通りだ。
思い通りの結果になってもならなくても復讐者はどっか壊れたままだ。
とは言え、後悔はしていない。
それにまだ終わった後の事を考えるのは早い。まだ今回の事件――神プロジェクトの本当の首謀者である日曜創造神・日輪陽菜が残っている。
「さぁて、詳しい事を話してもらいましょうか? GG?」
「出来ればお手柔らかに頼みたいところじゃが・・・こりゃあ簡単には見逃してもらえんか・・・」
取り敢えず俺の事は置いといて、親父はこの場に現れた謎のジジイに問い詰めていた。
まぁ、探していた人物が向こうから来たんだ。逃がす訳ないよな。
って、そう言えば謎のジジイを捜しに行ったデュオ達はどうしたんだろう?
「ねぇ、お爺ちゃん。お姉ちゃんと会わなかったの?」
トリニティも同じことを気にしたらしく、謎のジジイに問いかける。
「ああ、デュオとなら会ったぞ。儂がここに来たのもデュオから話を聞いたからじゃ。
デュオがここに居ないのは別の用件を頼んでおるからじゃな」
ああ、デュオに言われて俺達に会いに来たのか。
デュオ達に頼んだ別件と言うのが少し気になるが、取り敢えずはこの場を撤収して謎のジジイに詳しい事を聞かないとな。
後は、月夜城に潜んでいる月夜神軍の残存兵とかの諸々の後処理は・・・まぁ何時もの如く『AliveOut』に任せることになるだろう。
「ん、この秘宝の欠片はどうするの?」
地下広場を撤収しようとしたところ、美刃さんが今だ藤見の周辺を漂っている7つの秘宝の欠片を指して言う。
「一度抜かれた秘宝の欠片は体内に戻すことは出来ないが、七王神がそれぞれ持っておいた方がよかろう」
謎のジジイが秘宝の欠片を手に取り親父・美刃さん・アッシュに投げてよこす。
そして俺にも秘宝の欠片が寄越される。
「って、俺が持つのか? ヴァイさんじゃなく?」
「今はお主の中にユニーク職の力が備わっておる。よって今はお主が七王神・闘鬼神じゃよ」
あ、あ~~。そう言えばそんな事を言ってたな。
ヴァイさんの血を飲むことによって俺の中に闘鬼神の力と一緒に秘宝の欠片を譲渡したって。
何かヴァイさんを差し置いて申し訳ない気がするが、当の本人はそんな事は気にしちゃいない様子だった。
そしてこの場に居ない七王神の分を謎のジジイが預かることになったのだが、謎のジジイが残りの秘宝の欠片を手にする前に、別の人物が横取りをした。
「悪いがお前らには残りの欠片はやれねぇな。もしかすると全部揃えちまう気がするからな」
「・・・何のつもり? ブルブレイヴ」
邪魔をしたのは一応味方のはずの勇猛神ブルブレイヴだった。
特に親父は神降しでスサノオの力を借りているからブルブレイヴの行動に眉を潜め鋭い視線で問いかける。
「何のつもりも今言った通りだよ。
お前らが秘宝の欠片を持ってたら全部揃えちまうかもしれないだろ? だから全部そろわないように俺が残りを持っててやるって言ってんだよ」
「何故わたし達が全部欠片をそろえちゃ駄目なのかしら? そこん所が詳しく説明されてないんだけど」
「何か勘違いしているみたいだが、俺はお前たちの味方じゃないぜ?
確かにフェンリルには神秘界の騎士・The Chariotとしてカードキーは渡したさ。けどな、残念ながら全部のカードキーを渡した訳じゃない」
そう言ってブルブレイヴはもう1枚の緊急脱出口のカードキーを取り出した。
「・・・っな!?」
俺達の驚きが面白かったのか、ブルブレイヴはニヤリと笑いながら種明かしをする。
「実は俺には名前が3つあるんだよ。
1つはお前らも知っての通り三柱神としての勇猛神ブルブレイヴ。
もう1つは神秘界の騎士・The Chariot。
そして最後の1つは神秘界の騎士・The Star―――日曜創造神・日輪陽菜の手先だよ」
ストックが切れました。
暫く充電期間に入ります。
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