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Alive In World Online  作者: 一狼
第13章 Death
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68.無曜創造神の遺産と不老不死の秘法と秘法の欠片

「死神の(かいな)・ソウルテイカー」


 死神の姿をしたDeath・『死を撒く王』の腕が親父の体を貫く。

 だが不思議な事にDeath・『死を撒く王』の腕は肘まで貫いているにも拘らず貫通せず、親父の体の中に埋め込まれたままだ。


「ほほほっ、どこかのぅ・・・おお、あったあった、これじゃ」


 Death・『死を撒く王』が腕を抜くとその手には光の球が握られていた。

 体を貫かれたはずの親父の体には傷跡すらなく、貫いた痕跡すら見当たらなかった。


「何を・・・した」


「ほほほっ、さぁて、何じゃろうなぁ~? それよりも自分の体の事を心配した方がよかろう」


 Death・『死を撒く王』の言う通り、親父の様子が明らかに違っていた。

 先程までの精細な動きではなく、僅かながら体が震えている。どうも立っているのもやっとの様だ。


 明らかにDeath・『死を撒く王』がさっき使った技の影響だろう。

 名前からして(いのち)を奪うような技だが、それにしては親父は立っているのもつらそうだが命には別状が無いようだ。


「その光の球が目的かしら・・・? 何にしても返してもらうわ!」


 親父は目の前のDeath・『死を撒く王』に刀を振るうもその攻撃には力が無く、あっさりと躱される。


「ほほほっ、申し訳ないがお主の相手は儂の用事が終わってからにしてもらかのう。その間まではこやつらに相手してもらうがよかろう」


 そう言ってDeath・『死を撒く王』は親父に兵士スケルトンロードを差し向け再び影に溶けるようにして消えた。

 そして次の瞬間、現れたのは疾風の背後だった。


「っ!! おじさん、後ろ!!」


「お父さん!」


「ちぃっ!!」


 おじさんは俺達の声に反応する前にDeath・『死を撒く王』の出現に気が付いていたのだが、兵士スケルトンロードと連携した巫女スケルトンロードに阻まれ一瞬だが(またたき)を封じられた。

 その隙を突かれてDeath・『死を撒く王』が再びその腕を掲げる。


「死神の(かいな)・ソウルテイカー」


 そしておじさんの体からも光の球が奪われる。


「てめぇ! てめぇの相手は俺達じゃなかったのかよ!」


『あら、主の命令に従うのは従者として当然の事。貴方達こそ私1体とだけ戦っているのと勘違いしていないかしら?

 ここは戦場よ。多対多が当たり前の場なのよ』


 くっ、確かにお行儀良い戦いなんてあるわけじゃないが、それにしたってお前は俺に執着してたじゃないか。

 それともその執着はこの時の様に隙を誘うものだったのか?


「ほほほっ、時空神から奪えたのは僥倖じゃの。何せ動きを捉えるのが難儀じゃからのぅ」


 それはつまり、おじさん1人じゃ対抗できたかもしれないって事で、俺達がおじさんの足を引っ張ってたかもしれない。


「いや、それは違う。フェンリルやヴァイとは違い、久々の戦いで勘が鈍っていたんだよ」


「お父さん、でも・・・」


「それよりも今は目の前の敵に集中しなさい。まだ戦いは終わっていないんだ」


 唯姫が体に力が入らなくて倒れそうになっているおじさんを支えようとするも、おじさんは自分の事には構わず巫女スケルトンロードに集中しろと言う。


 その間にもDeath・『死を撒く王』は今度はお袋を狙って背後に現れた。


「そう何度も簡単に背後を取れると思わない事ね! アイン! ツヴァイ!」


 お袋は防御重視の召喚モンスターのアインでDeath・『死を撒く王』の攻撃を防ぎつつ、兵士スケルトンロードを相手していたツヴァイを呼び戻し対抗しようとする。


「死神の鎌・ソウルリッパー」


 だが、Death・『死を撒く王』の一振りした死神の鎌がするりとアインの盾の防御をすり抜ける。

 そして傷跡すら付いていないのにアインはあっさりとその場に崩れ落ち光の粒子となって消え去る。

 同じように駆けつけたツヴァイも死神の鎌であっさりと消え去った。

 おそらくだがこれが親父達が警戒していた即死攻撃なんだろう。


 だがアインとツヴァイは無駄ではなく、その間にヴァイが駆けつけDeath・『死を撒く王』に殴りかかる。


「ベルザ下がれ! こいつの相手は俺がする!」


 お袋はヴァイに言わるままに下がり、ローズマリーとアッシュと連携して武器スケルトンロード達と兵士スケルトンロード達を相手にする。


「ほほほっ、順番的には大賢神が良いのじゃが・・・仕方ないのぅ、次はお主からにするかの」


「出来るものならやってみな!」


 ヴァイの接近戦に対抗する為、Death・『死を撒く王』は『不死者の王』に変化して死神の鎌を大剣に変えてヴァイの攻撃を捌く。

 少なくともDeath・『不死者の王』の間はあの死神の腕を使えないはずだ。

 多分それを見越しての接近戦だろう。ヴァイは常に間合いを開けずにその拳を振るっている。


 とは言え、敵も然ることながら、『死を撒く王』と『不死者の王』を巧みに使い分けヴァイを翻弄する。


「ちぃ、前とは違い『不死者の王』にもダメージが入るが、あんまり効いた気がしねぇな!」


「はっ、無敵特性は消えたが、不死者の特性が消えたわけじゃないからな。俺を倒すとしたら聖属性特化の奴でも連れて来るんだな!」


 聖属性特化と言えば・・・親父の巫女神の特性じゃねぇか。

 肝心の親父はDeath・『死を撒く王』から光の球を抜かれた所為で体調が芳しくない。

 辛うじてだが兵士スケルトンロードを退けている状態だ。


 くそ、親父やヴァイの方にも助っ人に行きたいが、目の前の巫女スケルトンロードを何とかしなきゃどうしようもない。

 複数の祝福(ギフト)を使う事の出来る唯姫の手助けがあってこそ均衡を保っていられたが、唯姫は親父と同じように光の球を抜かれたおじさんに寄り添って兵士スケルトンロードを相手していた。


『どうやら以前の様に力を振るえないみたいね。でも容赦はしないわ。

 確かに七王神が集まっている中では貴方はそれ程強くは無い。でも私は貴方が一番脅威に感じているわ。だから私が貴方をこの場に釘付けにする」


 さっきと言っていることが違うじゃねぇか。

 戦場は常に変化しているんじゃなかったのか? 多対多が当たり前当たり前なんだろ?

 そう言って俺を自分に集中させておいて、隙を見ては他の奴を相手にするつもりなんだろ。


 とは言え、使徒の証の力を使えない今の俺には巫女スケルトンロードを抑える力は無い。

 トリニティも牽制はしているが焼け石に水状態だ。


 くそ、どうやって状況を――戦いの流れを変える?


 そうこうしているうちに、Death・『死を撒く王』は三度七王神に手を掛ける。


 ヴァイの攻撃をDeath・『死を撒く王』の死神の衣・シャドウクロスによって躱し、お袋の背後へと現れその腕を突き立てる。


「死神の腕・ソウルテイカー」


「くっ、しまっ・・・!」


 護衛代わりの召喚モンスターが居なくなったお袋はあえなくDeath・『死を撒く王』から光の球を抜き取られ、その場に膝をつく。

 ローズマリーが慌ててカバーに入り、お袋に群がる兵士スケルトンロードを退けるもジリ貧だ。


「アッシュさん、何とかしてくださいまし!」


「分かっている! 分かってはいるんだが・・・!」


 アッシュの放つ魔法は威力が高いが、ほぼ単発で終わっている。

 広範囲に放つことも出来るが、それだと俺達を巻き込む恐れがあるから放てないんだろう。


「ふふ、これでこの場に残っているのは後2つ。Death、抜かりなく取れよ」


「ほほほっ、仰せのままに」


 後2つ・・・光の球が七王神から取られることを考えれば、残りはローズマリーとヴァイか?

 アッシュはおそらく捕まった時に抜かれているだろうからな。


 水無月がそこまで執着する光の球は何なんだ?

 七王神から取れることを考えれば何か強力な力を秘めた物だと思うんだが・・・

 ふむ、ここは水無月に探りを入れつつ時間稼ぎをしてみるか。

 その間に親父達が持ち直せば良し、そうでなくとも親父達が何かその間に打開策を思いつくだろう。


「その光の球・・・まさかフェンリル達の(いのち)とか言わないよな」


「ほう、これに興味があるか」


 いつの間にか渡されたのか、水無月の手には親父達から抜き取られた光の球が4つあった。

 やはり・・・そこにあるのはアッシュから抜かれた分も含まれているのだろう。


「残念だがこれを貴様たちが知る必要はない。知ったところで貴様らはこのままあの世行きだからな」


「だったら尚更、冥途の土産くらいくれてもいいんじゃねぇか?」


「ふん、戯言を。端から死ぬつもりなどないくせに。この場をどうにか抜け出そうと足掻くに決まっているだろう。貴様らはそう言う人種だ。

 ・・・まぁ良い。貴様らにこれが何なのか教えてやらんでもない。これが何なのかを知って必死になる姿でも見せて見ろ」


 水無月は手で合図をしてDeathを始め、スケルトンロード達に一時戦闘停止を命ずる。


「ほほほっ。主よ、戯れが過ぎますぞ。ここはこやつ等の言う事を無視して・・・」


「『死を撒く王』よ。主の命令は絶対だ。ここは大人しく主の言う事を聞くべきだ。

 それに・・・こやつらが己を奮い立たせ、力の限りを尽くすのを倒すのもまた一興だろ」


「ほほほっ、『不死者の王』は武人気質じゃのう。戦いはどんな手を使っても勝てばよいのじゃ。互いに死力を尽くした戦いなぞ邪魔でしかないわい。

 ・・・まぁ良かろう。主の命令じゃ。お主の言う通り大人しく待っていよう」


 Deathは『死を撒く王』と『不死者の王』にそれぞれ切り替わりながら会話し、大人しく水無月の言う事を聞いていた。

 武器スケルトンロードや兵士スケルトンロードもその場に膝をつき頭を垂れている。


 そして完全に自我を持ち、他のスケルトンロードと一線を画した巫女スケルトンロードは・・・


『また、お預けね。でも、直ぐに戦いは再開されるわ。その時こそ本当に命の限り戦い抜きましょう』


 この巫女スケルトンロードは親父を模したと言われているが、それ以外にも召喚主の『不死者の王』の気質を持っているみたいだな。

 決して悪い気分ではないが、だからと言って相容れるものでもない。

 おそらくだが、この後の戦いで本当に決着が着くだろう。


「さて、それではこれが何なのか・・・だが、その前に貴様らはわたし達の目的を知っているだろう」


「・・・不老不死。それが貴女達八天創造神の目的でしょう。まぁ中には本来の目的よりも目先の欲に捕らわれている人も居るみたいだけど」


 周囲を警戒しながらその場に膝をついて体調を整えている親父がそれに答える。

 まぁ親父はAlive In World OnlineやArcadia社を調べていたから俺達よりも内情に詳しいから、ここは親父に任せるか。


「ああ、小金井鉄也や堂本白土か。あいつらは俗物だからな。この計画に参加したのも己の欲を満たすだけで、目の前に餌があればそれに貪り尽くすハイエナだ。

 まぁだからこそ利用し甲斐があった」


 つまり金曜創造神・小金井鉄也や土曜創造神・堂本白土はこいつらの目的――不老不死の為の駒でしかなかったって事か?


「話が逸れたな。それで私達の目的が不老不死と言うのは間違いない。

 その為に計画したのがAngel In OnlineでAlive In World Onlineだ。

 人の死を観測することでソウルゲノムを調べ解析する。そしてその先にあるのが人類の永遠の夢、不老不死だ。

 だが、我々は膨大なデータを解析したにも拘らず、未だソウルゲノムの解析は9割しか出来ていない。残りの1割――不老不死の部分についてだけはどうしても解析することが出来ないでいた」


 悔しそうに顔を滲ませながら水無月は語るが、おまえそれ他人を大勢犠牲にしてまで言う事じゃねぇぞ。

 てめぇらの実験に付き合わされた犠牲者にはいい迷惑だ。

 彼らはただ単純にゲームを楽しみたかっただけなのに。


「だが、我々とは別のアプローチで不老不死の法を手にしたものが居た。それがこの世界では裏切りの神と呼ばれている無曜創造神・榊原源次郎だ。

 それも信じられない事に23年も前にだ」


 榊原源次郎の名前に、親父達七王神の顔に動揺や戸惑いが浮かんでいた。

 そしてそれは俺もだ。


 確か榊原源次郎はアイさんの生みの親で、AIプログラムの第一人者でもあったはず。

 それが何故不老不死と関係があるのか。


「本来であれば奴はAngel In Online時のソウルゲノム観測に生じる死者に対する責任を負わせるための生贄(スケープゴート)でしかなかった。

 だが奴は自分の娘とも言えるAIをAngel In Onlineに潜り込ませ、娘のAIプログラムの完成を試みた。

 そして奴は――正確には奴のコピー人格だが、偶然にもそのAIから不老不死の法を見つけ出したのだ」


「待って、アイちゃんはAIなのよ。何でそこからソウルゲノムの最秘奥とも言える不老不死の法が見つかるのよ」


「そこが榊原源次郎の執念とも言える成果だな。奴とてまさか自分の生み出したAIから我々の目的である不老不死の法が見つかるとは思ってもいなかっただろう。

 それだけ奴の生み出したAIは優秀だって事だ。

 そう、そのAIの構造は人と変わらないくらい進化を遂げていた。そしてその構造がプログラムの分、人の死の観測データよりもソウルゲノムが解析しやすかったのだよ」


 いや、それだけじゃ説明が付かないぞ。

 幾らプログラムとは言え、おそらくだがアイさんのAIは人の精神並みに複雑なプログラムと化していたはず。

 多分だが、榊原源次郎はソウルゲノムの構造にも通じていたんじゃ・・・親父の話だと榊原源次郎は自分が生贄(スケープゴート)になるのを分かっていたらしいから、自分を嵌めた奴の計画を探っていた可能性もある。


「偶然見つけた不老不死の法は我々には喉から手が出るほど欲しく、榊原源次郎にとっては無用のものでしかなかったはず。

 だが彼はどういう訳か不老不死の法を処分せず、7つに分けてある物の中に隠した」


「まさか・・・」


 ここまでくれば榊原源次郎がどうしたのか想像がつく。

 親父もその事に思い至り声を涸らす。


「そう、貴様ら七王神の中に隠したのだ。正確にはAngel In Onlineのユニーク職の中にだがな。

 そして不老不死の法の7つの欠片を取り込んだことにより、ユニーク職は貴様らの魂と深く結びついた。

 貴様らは不思議に思わなかったか? Alive In World Onlineにログインしたにも拘らず身体(アバター)製作が出来ずにAngel In Online時のままだったと言う事に。

 それは貴様らの魂にユニーク職と共に7つの欠片――秘宝の欠片が刻み込まれたからだ」


 そう言えば確か親父はAngel In事件後、どのVRにダイブしても女性アバターでしかログインが出来なかったって言ってたな。

 つまり親父の魂にはフェンリルのデータが刻み込まれている為、VR空間ではどうやっても女性になってしまうと言う事だ。

 その為親父はVRにはほとんどダイブすることが無かったらしい。


「それで貴女はDeathを使ってわたし達の中にあるその秘宝の欠片を集めていたわけね」


「そうだ。7つ全て集まることにより、不老不死の法が手に入るのだ。

 ああ、因みに貴様らの今の脱力状態は魂に刻み込まれていた秘宝の欠片を抜き取ったことが原因だ。心配することは無い、暫く養生すれば回復する」


 そりゃあ強引に魂から引っぺがせば影響はあるよな。

 だが親父達がこの戦闘時にはほぼ戦力外になったのは否めない。

 戦えないわけではないが、七王神としての強力な戦力としては見ることは出来ないだろう。


「さて、説明も終わったところで残りの秘宝の欠片を頂くとしよう。

 精々足掻くがいい。その為にわざわざ貴様らの時間稼ぎに付き合ったのだ。良い策が浮かんでいると良いな」


 げ、こっちの思惑がバレてやがる。


 Deathが1体、巫女スケルトンロードが1体、武器スケルトンロードが5体、兵士スケルトンロードが残り14体。加えて水無月が控えている。

 対してこっちの戦力が俺、唯姫、トリニティ、ローズマリー、ヴァイ、スノウの4人と1匹に、親父、お袋、おじさん、の3人はほぼ戦力外。

 向こうの狙いが秘宝の欠片なのでローズマリーとヴァイにはDeathの相手は危険だ。

 ・・・一番厄介なのはDeathと巫女スケルトンロード。この2体さえなんとかすれば他はどうとでもなる・・・はず。

 とは言え、主戦力の親父が躓いている今は打開策が思い浮かばない。


「ほほほっ、次はどちらから行こうかのう」


 そう言ってDeath・『死を撒く王』は滑るようにしてヴァイの方へと向かって行く。


 ちぃ、防御主体のローズマリーよりも攻撃主体のヴァイを狙うか。今ヴァイが落ちればヤバいぞ。


「マリーさんはこっちで巫女スケルトンロードを抑えて! 防御に専念するだけでいいわ! 鈴鹿! ユキ! 2人は全力でDeathを倒すのよ!!」


 どうするか行動を決めかねていると、トリニティが指示を出してきた。


「ヴァイさんは下がってフェンリルさんとベルザさんと疾風さんを守って下さい。3人は無理しない程度で兵士スケルトンロードの排除をお願いします。

 アッシュさんとスノウは武器スケルトンロード達の相手を!」


 厄介な相手の1人、巫女スケルトンロードを倒す方向ではなく、ローズマリーでどこにも動かせない状況に持っていくわけか。

 戦力ダウンの親父達を兵士スケルトンロードへ当てて、アッシュを武器スケルトンロードへ、そして俺と唯姫をもう1人の厄介なDeathへと当てると。

 それはつまり俺と唯姫ならDeathを倒せると思っているんだな。トリニティは。

 だが悪い戦略じゃない。ちょっと過度の期待が込められた戦略だが現状を突破できる可能性があるのも確かだ。


 俺はすぐさま踵を返し、ヴァイに向かおうとしているDeathを追う。

 背後から迫る巫女スケルトンロードは完全に無視だ。それはローズマリーに任せる事にする。

 ローズマリーが巫女スケルトンロードを抑える前に追いつかれそうになるが、そこはトリニティと唯姫が僅かばかり抑える。


 ヴァイは蹲っている親父達を引きずって1箇所に纏める。

 尤も親父達も黙っているわけではなく、力の入らない体ながらも兵士スケルトンロードへ攻撃を仕掛ける。


「神降し、ヒノカグヅチ!」


 親父の体が炎に包まれその振るう左右の刀から炎の斬撃が飛び兵士スケルトンロードを切り裂いて行く。


「ファイヤージャベリンガトリングエアバーストブリッツスパークフリージングバーストゲヘナストーンシャイニングフェザーアッシドクラウドデモントライデントグラスブレイザーセイクリッドブラスト」


 お袋も威力は抑えられているものの、相変わらずの魔法の連射で親父が攻撃しやすいように牽制していた。


「スロウ。

 ――アクセレートノヴァ!」


 おじさんも時空神の二つ名らしく、時空魔法で相手の動きを遅くしつつ、自分に掛けた加速と思われる魔法で瞬間的に現れては消えて兵士スケルトンロードを攻撃していた。


 そしてヴァイに迫ろうとしていたDeath・『死を撒く王』に俺は(またたき)で間合いを詰めユニコハルコンを振るった。


 ギィンッ!!


 (またたき)で近づいたにも拘らず、勘の良さなのかDeathは『不死者の王』に切り替わって大剣で俺の斬撃を受け止めていた。


「お前さんが相手か。だがちぃっとばかり役不足じゃねぇか? まぁ俺が戦力を減らしておいて言うセリフじゃないが」


「確かに俺だけじゃ役不足だが、もう1人の相手・・・唯姫が来ればそうも言ってられないぜ」


 何せ唯姫は14個もの祝福(ギフト)を操るからな。中には飛び切りヤバい奴も含まれている。

 唯姫にはなるべく使うなと言い含めているが、場合が場合だ。ここは思う存分その効力を発揮してもらおう。


 俺は唯姫が来る間もDeath・『不死者の王』にユニコハルコンを振るう。が、大剣を振るう隙を突いて斬撃はDeath・『不死者の王』の体に入っているにも拘らずダメージが入っているようには見えない。まるで本当の不死者のようだ。


 いやいやいや、そんな訳あるまい。もし本当にそうだとしたら、八天創造神はとっくに不老不死の法を手に入れていることになるはずだ。

 つまり『不死者の王』の不死身にはカラクリがあるはず。


【主よ。こやつダメージが無いように見えるが、傷が入ったその瞬間に完全に治癒しているぞ。それもほぼタイムラグなしの超高速で】


 なるほど。確かにそれなら不死身にも見えるな。

 しかも骨の身であるDeathには痛覚ない為、この方法の唯一の弱点である痛みを気にする必要が無い。


 不死身の秘密が分かれば後は答えは簡単だ。

 要はその治癒力と治癒速度を上回る攻撃を連続で叩き付ければいいわけだ。

 尤もその方法が一番難しいわけだが。


「フリーズバインド!

 スネークボルト!

 グランドプレス!!」


 俺の攻撃の隙間を縫って唯姫の魔法がDeath・『不死者の王』に炸裂する。

 氷属性魔法でその場で身動きを封じ、雷属性魔法で痺れを誘い、土属性魔法の空間一点発動型で圧殺する。


 まぁそれでも治癒力を上回るダメージを与えることが出来ず、Death・『不死者の王』は瞬時に全快してしまうが。


「鈴くんお待たせ。ここからは一気に行くわよ」


「ああ、例のアレの使用を許可する。だがなるべく周囲に影響ない程度に抑えろよ」


 俺と唯姫が同時にDeath・『不死者の王』に向かう。

 どちらかと言うと俺は牽制での役割となる。

 攻撃のメインは唯姫のS級祝福(ギフト)だ。


 唯姫の左足の自動義肢(オートピュレーター)である祝福の刻印(ギフトライブラリ)の銘は祈りの聖光。

 内蔵されている祝福(ギフト)はB級自動治癒(オートリカバリー)、E級興奮(ファナテシズム)、そしてS級腐食(クロージョン)


 この腐食(クロージョン)、その名の通りその手に触れた物を腐らせる祝福(ギフト)だ。

 それは物だけに止まらず魔法や形ある物全てに影響する危険度もS級だったりする。

 使い方を誤れば敵どころか味方までも傷つけてしまう為、俺達は唯姫に使用を禁止していたのだ。


 唯姫は怪力(ストレングス)瞬歩(クイックムーブ)天駆(スカイウォーク)を駆使して接近戦を挑み、左手の杖の先から魔法を放ち牽制しながら腐食(クロージョン)を纏った右手でDeath・『不死者の王』に触れる。


 唯姫が触れたのは肋骨の一部だったが、効果はてき面だった。

 触れた部分が骨が脆くなったかのように粉となって崩れたのだ。


「なんだとっ!?」


 流石にこれには驚いたのか、Death・『不死者の王』には動揺が見えた。

 その隙を突いてユニコハルコンを振るうもやはりダメージは与えられない。腐食(クロージョン)でないと駄目みたいだな。

 ならば唯姫の攻撃しやすいようにDeath・『不死者の王』の動きを封じるように攻撃だ。


 その間にも親父達が武器スケルトンロードや兵士スケルトンロードを攻撃して遂にはその数を0にする。

 特にスノウが大活躍だ。光属性魔法やその巨体から繰り出される爪や尻尾の攻撃が兵士スケルトンロードを蹴散らしていた。


 これで後はDeathと巫女スケルトンロードの2体だけだ。

 と思っていたのだが・・・


「これで形勢は逆転したかと思ったか? 甘いな。俺の手下どもはアンデットだぜ。

 ――冥界召喚(ネクロロード)

 ――冥界軍召喚(ネクロズロード)!」


 Death・『不死者の王』の召喚により、再び闘技広場はスケルトンロードの群れで埋め尽くされた。


「くそっ、振り出しに戻るかよ!」


「鈴くん! 今は何よりDeathに集中よ! 臭いものは元を叩かないと!」


 唯姫が魔法を繰り出しながら腐食(クロージョン)の手をDeath・『不死者の王』に突き出す。


 確かに唯姫の言う通りだ。一番の元はDeath(こいつ)だ。こいつさえ仕留めちまえば後はどうとでもなる。


 だがそれすらもDeathの思惑だったのか、Death達は意味ありげにニヤリと笑う。


「S級祝福(ギフト)腐食(クロージョン)は予想外だったが――」


「――戦力を儂に集中し巫女姫にローズマリーを当てるのは予想済みじゃ」


 Deathが『不死者の王』から『死を撒く王』に切り替わり、その姿が影に覆われ黒い骸骨と化そうとする。


 影を渡る死神の衣・シャドウクロスか!


「させるかぁっ!!

 ――シャイニングレイ! 剣姫一刀流・烈光瞬刃!!」


 影に溶けるように消えようとしていたDeath・『死を撒く王』を俺の光属性魔法を纏った魔法剣が瞬刃で斬り裂かれる。


 よし! 思った通りだ。


 死神の衣・シャドウクロスはその特性上、一度影に溶け込めば攻撃はすり抜けるが、光属性魔法なら影を切り裂く事が出来るのではと思っていたのだ。

 思った通り、シャドウクロスを切り裂かれたDeath・『死を撒く王』は影を渡ることが出来ずに引きずり出された。


 そこへ唯姫の腐食(クロージョン)の手が繰り出される。


「ぬおっ!?」


 唯姫の一撃が決まり、Death・『死を撒く王』の左腕が砕け落ちた。


「止め!」


 続けざまに唯姫が再び腐食(クロージョン)の手を繰り出す。

 しかも『八翼』でDeath・『死を撒く王』の足下をバインドで動きを封じたうえでだ。


「ほほほっ、残念、惜しかったのぅ。

 死神の骸・キャスリング」


 次の瞬間には目の前に巫女スケルトンロードが居た。

 巫女スケルトンロードの放った二刀が唯姫の腐食(クロージョン)を纏った右手を斬り落とす。


「唯姫っ!!」


 巫女スケルトンロードを相手していたローズマリーを見れば、Death・『死を撒く王』が背後から生やした腕でローズマリーの体を死神の腕・ソウルテイカーで貫いていた。


『やはり少年とは運命の糸で結ばれているのだな。どんなに離れ離れになろうともわたし達は戦う運命にあるみたいだ』


 ええい、くそっ!

 巫女スケルトンロードの言う通りどうあってもこいつを倒さなきゃ前に進めないのかよ!


 巫女スケルトンロードが俺達の相手をしている間にもDeath・『死を撒く王』はローズマリーから秘宝の欠片を抜き取りそのままヴァイの方へと向かって行く。

 Death・『死を撒く王』の方に向かおうにも巫女スケルトンロードが邪魔をして向かえない。


 Death・『死を撒く王』は武器スケルトンロードと兵士スケルトンロードを巧みに指示を出しながらヴァイの隙を狙い、遂にはヴァイにも死神の腕・ソウルテイカーが突き刺さる。


「ほほほっ、これで終いじゃ」


 勝利を確信したDeath・『死を撒く王』は余裕の表情でヴァイの体に突き刺さったその手をまさぐる。

 壁際にて様子を伺っていた水無月も自分の勝利を疑わずに悠然と佇んでいた。

 だが次第にその余裕の表情が崩れ出す。


「・・・ぬ? 何処じゃ・・・秘宝の欠片は何処じゃ? ば、馬鹿な・・・秘宝の欠片が無いじゃと!?」


 その言葉に戸惑いを顕わにしたのは水無月だった。


「馬鹿なっ、あり得ない! 七王神の力を宿した(いのち)を特定して神秘界(アルカディア)に引きずり込んだ時には間違いなく(いのち)に秘宝の欠片を有していたはずだ!」


「残念だがお前らの企みなんざとっくにお見通しなんだよ。何時までも厄介な物が混じった七王神の力を持っていると思うか?」


 そう言って大胆不敵にも笑うのはヴァイだ。

 その体には死神の腕・ソウルテイカーが突き刺さったままで、Death・『死を撒く王』を逃がさない様にその腕を両手でがっちりと抑え込んでいた。


「唯姫! 俺が抑え込んでいる今のうちに! 鈴鹿は死んでもそいつを抑え込んでおけ!!」


 唯姫はヴァイの言葉に反応してすぐさま踵を返して瞬歩(クイックムーブ)で一気にDeath・『死を撒く王』に迫る。

 右手は巫女スケルトンロードに切り落とされていたが、自動義肢(オートピュレーター)で創られた腕なので、再び右腕を生やし腐食(クロージョン)を纏いDeath・『死を撒く王』を狙う。


「ほほほっ!? ええい離さんか! 秘宝の欠片が無いお主にはもう用は無いのじゃ!」


「言われて離す馬鹿が居るかよ!」


「いい加減に、これでお終いよ!!」


「ほほほっ、ならば纏めて始末するまでよ!

 死神の鎌・ソウルリッパー!」


 唯姫がDeath・『死を撒く王』に迫り、腕を離さないヴァイに業を煮やしたDeath・『死を撒く王』がヴァイごと唯姫を死神の鎌で迎え撃った。


 死神の鎌・ソウルリッパーがヴァイに届く直前に割り込んだ唯姫の右腕が死神の鎌を押し返す。


 てか、おい、待てよ。

 死神の鎌・ソウルリッパーは即死攻撃だろ。幾ら腐食(クロージョン)を纏っているとは言え触れて影響がないはずがない。


 案の定、死神の鎌を押し返されDeath・『死を撒く王』はヴァイから離れたが、残された唯姫はその場にぐらりと崩れ落ちた。


「唯姫っ!!!」


 おい、嘘だろ、こんな簡単に・・・・・・・・・ふざけんな!!! こんなの認められるわけがねぇだろ!!


 次の瞬間、そこにはキレた鬼獣――()が居た。


「ガァァァァァァァァァァァァァァァァッッ!!!!」


 (またたき)で一気に詰め寄り、ユニコハルコンでDeath・『死を撒く王』の体を打ち砕く。


「ほほほっ!?」


 一振り二振り三振り、ユニコハルコンを振るうたびにDeath・『死を撒く王』の体は細切れと化していく。


「ガァァァッ!!」


 完全にDeath・『死を撒く王』の体が無くなったかと思いきや、砕けた骨が集まったかと思うとDeath・『不死者の王』がそこに居た。


「ぶはぁっ! マジか、こいつ『死を撒く王』を殺しきりやがった!!」


 ああ、まだこいつが居たか。

 いい加減これで終わりにしてやる。

 こいつの攻略法も今の俺なら出来るからな。


「ユニコハルコン、力を貸せ。限界以上の力を引き出す。その上であの感覚を呼び戻す」


【言われずとも。我の力は全て主の思うが儘に】


 使徒の証のスキル・Zoneはプロのスポーツ選手が経験すると言われている超感覚(ゾーン)の事だ。

 それは即ち使徒の証が無くとも人間には起こりうるという事だ。

 そして俺はその感覚を既に知っている。


 鬼獣の力で強引に筋力を引き上げStartやPowerの倍化した状態を起こす。

 その際無理やり力を引き上げたことにより筋肉が断絶していくが、ユニコハルコンの治癒で強引に治していく。

 そしてその上でZoneの感覚を呼び出し剣姫流一刀流奥義・百花繚乱を放てる状態を生み出す。


「剣姫一刀流・百花繚乱!!」


 Death・『不死者の王』は超高速の治癒状態にある。

 なので生半可な攻撃は効かず、ダメージを与えるには治癒を上回る攻撃と速度が必要になる。

 そう、複合属性魔法である自然魔法の魔法剣を纏った天衣無縫を超高速で放つ連続居合――百花繚乱ならDeath・『不死者の王』にダメージを与えられるのだ。


「なにっ!? 俺の高速治癒を上回る攻撃だとっ!?」


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!!」


 俺の百花繚乱がDeath・『不死者の王』を一瞬で斬り裂いて行く。

 が、流石に使徒の証を用いない奥義は維持が難しく、殆んど一瞬で終わってしまった。

 その所為でDeath・『不死者の王』を仕留めることが出来なかった。


「くそっ、後もう一歩だったのに・・・!」


 俺は力を使い果たしユニコハルコンを支えにして膝をつく。

 力を限界上に使い果たしたせいで、鬼獣化も解けてしまった。


「Death! そいつだ、そいつを捕らえろ! そいつが秘宝の欠片を持っている!!」


 水無月が必死になってDeathに向かって叫んでいた。


 どういう事だ? 秘宝の欠片は七王神じゃなきゃ持っていないはずだが。

 だが、あの水無月が必死になる姿は嘘のようには見えない。


「いや、主よ。俺にはこいつから秘宝の欠片を抜き取る術は無いぜ」


「何とかしろ! 『死を撒く王』と同じ体を使っているじゃないか! 力を使い果たしている今がチャンスなんだ! 私の野望の為に―――!?」


 魂に干渉する術がない『不死者の王』にどうにかしろと喚いている水無月だったが、不意にその言葉が途切れる。


 何故なら、水無月の体から腕が生えていたからだ。

 いや、背後から手刀で腹を貫かれていた。


「――ごほっ・・・きさ、ま、は・・・」


「いい感じで油断してくれましたね。お蔭で隙を付きこれを奪う事が出来ました」


 水無月の背後は壁しかないのだが、その壁からすり抜けて1人の男が現れた。

 タキシードを着た青年だった。その洗礼された動きはどことなく執事を連想させる。

 そしてその手には水無月から奪ったと思われる4つの秘宝の欠片があった。


「これを狙っていたのは貴女だけじゃないのですよ。我が主も貴女と同じように七王神に隠された秘宝の欠片を狙っていたのです。

 貴女が秘宝の欠片を狙っていると分かると我が主は私に隙を見て奪い去るように指示なさいました」


 タキシードの男は水無月を貫いている手刀を払い、力任せに水無月の体から抜き取る。

 払われた衝撃で水無月は地面に叩きつけられ血反吐を吐き散らす。


「ま・・・て・・・それは、私、の・・・」


「何を言っているのです? 貴女から奪い取ったんだからこれは私の、我が主の物ですよ」


 そう言ってタキシードの男はそのまま水無月の心臓を踏み抜いて命を絶つ。


 おい、待てよ。そいつは俺の獲物だ。そいつを殺すのは俺だ。なに人の獲物に手を出してんだよ!


「さて、残りの2つも手に入れましょう」


 離れていたにも拘らず、タキシードの男は瞬動並みの速度でDeath・『不死者の王』に迫り、持っていた秘宝の欠片を奪い去る。


「ま、待て!」


「使える主を失った貴方には必要のないもの。これは我が主が有効に活用しますよ」


「だからと言って素直に奪われるわけにはいかん。それこそ利用されていた主が浮かばれない」


「だったら貴方も主の後を追うがいいでしょう」


 タキシードの男が手刀を一振りすると、Death・『不死者の王』はあっけなく真っ二つに割られ、その場に力尽きた。


『マスター!!』


 Death・『不死者の王』が倒されたことにより、召喚されていたスケルトンロード達が崩れ去る。

 だがただ1体、巫女スケルトンロードだけが残り、主の最後を嘆いていた。


 幾ら俺の百花繚乱が効いていたとは言え、あのDeath・『不死者の王』を一瞬で倒すだと?

 こいつ一体何者だ?


 俺は片膝を付きながらもユニコハルコンを構え、タキシードの男を警戒する。

 水無月やこいつの話しを総合すれば、次に狙うのは俺の中にある秘宝の欠片だ。


「この場にあるのは残り1つ。渡してもらいましょうか」


 タキシードの男が悠然とこちらへと歩を進める。

 だがその前に立ち塞がる者がいた。


「これ以上主人公君に近づくのなら私も容赦はしないわよ」


 ラヴィだ。

 彼女はこれまでの傍観者としての立場とは違い、自らの意思でタキシードの男の前に立ち塞がる。


「おやおや、どういうつもりですか? 『恋愛の女王』。貴女は物語の聞き手のはず。登場人物になるとは貴女らしくも無い」


「それは貴方が出てくるのなら話は別よ。神秘界の騎士(アルカナナイト)・The Devil。いいえ、『婚約の王・Engage』・ケイジ」


 その言葉に親父達が動揺していた。

 こいつもAngel In時のボスの1人かよ。そんでもって現神秘界の騎士(アルカナナイト)ときたもんだ。


「ふむ、そうですね。貴女が立ち塞がるというのならここは素直に引きましょう。

 そこの少年、命拾いをしましたね。私はDeathとは違い、器用に秘宝の欠片だけを抜き取ることは出来ません。秘宝の欠片を奪えばその者は死にます。良かったですね。

 いずれは少年の中の秘宝の欠片を奪いに来ますのでそれまでその命を大切にしてください」


「んだとっ!? てめぇこそ人の獲物を横取りしておいて黙って見逃すと思っているのかよ! 必ず落とし前を付けさせてやる」


「獲物・・・? ああ、水曜創造神・水無月芙美の事ですか。そうですか、それは悪い事をしました。

 ・・・ふむ、もしかして狙いは八天創造神ですか? ならば我が主の藤見様もターゲットでは?

 ならば私と『契約』をしましょう。近いうちに貴方は私と藤見様を殺しに来ると。私は月曜都市の月夜城にて迎え撃ちます。貴方は私と藤見様の命を、私は貴方を返り討ちにし、貴方の中の秘宝の欠片を頂きます」


「いいだろう、その『契約』に乗ってやるよ。月夜城で首を洗って待ってな。俺に狙われたことを後悔させてやるよ」


「あ、バカッ!」


 ラヴィが慌てているが、お構いなしに俺はThe Devil――ケイジに啖呵を切る。

 その瞬間に俺とケイジの間に光の線で結ばれ、眩い光を放って消える。


 なんだ、今のは?


「『契約』成立ですね。それでは我が主の月曜都市ムーンカグヤにてお待ちしています。

 あ、そうそう。もう1つおまけです。最後の七王神である剣聖神・月牙美刃も月曜都市でお待ちしてますよ」


 ケイジは来た時と同じように壁を通り抜けてこの場から立ち去って行った。

 そしてとんでもない爆弾も落としていった。

 美刃さんが月曜都市に居るだと? 確かデュオの話しだと神秘界(アルカディア)に来る時の転送ではぐれてしまったって言ってたはず。

 それが月曜都市に・・・何でケイジの奴がそれを知っている? そして何故それをわざわざ教える? 何か裏がありそうな気がするな・・・


 それはそうと、ラヴィが消えたケイジと俺を見て頭を抱えていた。


「あちゃ~、やられたわ・・・主人公君、貴方これでどうあっても月曜都市に行かなければならなくなったわ」


「どういう事だよ?」


「説明は後ね。取り敢えずこの場を収めてからにしましょう」


 ・・・って、そうだ! 唯姫は!?


 慌てて唯姫の方を見ればトリニティが唯姫を抱えていた。


「ユキは大丈夫よ。即死攻撃が強すぎて腐食(クロージョン)の方が衝撃が大きかったみたいね」


「鈴くん、ゴメン。また心配かけちゃった・・・」


「いや、唯姫が無事ならそれで十分だよ」


 俺が唯姫の容体に安堵していると、それに茶々を入れる奴らが居た。


「あらあら、親の心配よりも唯姫ちゃんの心配の方が大事なのねぇ~?」


「お母さんとしては嬉しいやら哀しいやら」


「うむむ・・・いいか、唯姫。鈴鹿くんとは付き合うなとは言わない。だが節度ある付き合いを・・・」


「ははっ、鈴鹿の奴、見せつけてくれるじゃねぇか」


「はぁ・・・皆さん、ここで気を抜いてはなりませんわ。まだ完全に事が終わった訳じゃないのですから」


「と言うか、いい加減に誰か説明して欲しいなぁ・・・」


 おおぅ・・・流石に親父達の前じゃちょっと恥ずいな・・・

 それとローズマリーやアッシュの言う通りまだ完全に片が付いたわけじゃないしまだ分からんこともある。

 とは言え、今は一息ついていいだろう。


 そして次の目的は月曜都市・ムーンカグヤに居る月曜創造神・藤見月夜(ふじみかぐや)神秘界の騎士(アルカナナイト)・The Devilことケイジだ。










ストックが切れました。

暫く充電期間に入ります。


                          ・・・now saving


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